最終話,この場所で君に好きを伝えたい

 学校の屋上を好きと伝える場所にしたのには理由がある。初めて楓と付き合って弁当を食べたあの屋上、いつも購買で買ったものだった日々の弁当に少し彩りが増えた。それからだって毎日、楓は弁当を作ってくれ、一緒にご飯を食べた。学校の屋上は先生に理由を伝えて開けてもらった。本当に甘い……が今回はそれが役に立った。ふと楓の顔を見ると何処に行くかわからないような顔をしている。


 その顔も目的地にだんだん近づいてくると変わっていった。「せ、先輩? ここ、学校ですよ?」楓のその言葉に俺は一言、『あぁ』と答え、夜の学校へと侵入していった。

 夜の学校はいつもとは違う静けさがあった。俺は昇降口から入り屋上へと楓を連れて歩く。そして屋上への扉の前についた時、俺は「着いたぞ、楓」そう言って扉を開けた。


 「なぁ、一週間前だけど覚えてるか? お前が俺のことを好きっていってさ…… 最初は煩いと思ってたんだぜ? けどさ……楓と一緒に食べる昼食は美味しかった」楓がなにか言いたそうだったが俺は気にせず言葉を続けた。「俺が『俺もだよ』って言ったときのさ、楓の顔を紅く染めてる姿は、めちゃめちゃ可愛かったんだ……」言いたいことは信じられない程出て来てうまく言葉に出来ない。

けど俺は思ったままに楓に伝えた。

 「楓、好きだ。 これからも俺とずっと一緒に居てくれ……」その言葉に楓は涙を流しながら言った。

 

 「初めて…先輩から好きって言ってもらいました……私、今とっても幸せです……」楓のその言葉と同時に河川敷の向こうから花火が上がった。俺は花火を背に楓を抱きしめた。楓の温もり…… 自分のしたことにけじめをつけられたからこそ感じる幸せ。俺は

 改めて楓を絶対に幸せにすると決意するのであった……


 【楓SIDE】

 私は嬉しさで溢れ出る涙をタオルで拭きながら先輩のぬくもりに身体を預けていた。先輩にデートをエスコートされた私は学校の屋上での先輩の好きという言葉に思わず涙を出してしまった。いつも、私は先輩の事を好きと言っているが先輩は一回も好きという言葉を発してなかったのだ。私は気にしてなかったが、それでも私の深層心理では、気にしてしまっていたのだろう。

 

 先輩のその言葉を聞いた瞬間、涙が溢れてきて思わず言葉を発してしまった。

 「初めて…先輩から好きって言ってもらいました…」そう口に出すと私の胸が幸せでいっぱいになる。

「私、今とっても幸せです……」先輩に伝えるように言葉を発する。すると先輩の手が私の体に伸び、ハグされたのだ。先輩の、竜司さんの温もり…… 好きな人に抱きしめてもらうことがこんなにも幸せなことだなんて……私は幸せな温もりの中で目を瞑った……


【竜司SIDE】


 俺が楓に告白してから一ヶ月、俺は遂に楓の家に挨拶をしに楓の家へとは入ろうとしていた。インターホンを押して楓が来るのを待つ。少し経って扉から出てきたのは楓の面影を強く残している女性だった……

 「あら? 貴方、楓のお友達? 私は楓の母の涼華といいます。 楓と仲良くしてあげてね」俺は楓のお母様のその言葉を遮るように言った。「あ、あの…」きちんと自分が

 義母さんに認められるのかそんな不安が胸を埋め尽くす中俺は言う。

 「僕は、黒羽竜司と言います。この度、貴方の娘である楓さんと付き合うことになったのでご報告したいと思ってきました。楓さんの人の為に一生懸命に慣れるところ、所々初心な反応を見せてくれる所も全てが大好きです。だから…娘さんを僕にください!」


 俺の言葉の後、義母さんは俺に言ってくれた。「あら? じゃあ、貴方が楓が言っていた先輩なのね? 娘が報われてよかったわ……竜司くん。娘は周りには強く見せてるけど本当はとってもか弱いの。だから娘のこと頼んだわよ……」


 義母さんの言葉を受け俺はただ一言、

「絶対に幸せにします」そう言って楓の家を出ていった。俺が楓の家から出ると楓が一目散に駆けつけてきた。

 「せ、先輩? 私の家に行ってたんですか? お、お母さんにはなんて?……」

 楓のその言葉に俺は思わず彼女の身体を抱き寄せて言った。「『楓をよろしく』だって……」考えれば考える程心臓の音がドクンドクン鳴り響き周りの騒音も聞こえなくなる。


 「楓、ずっと好きだ……」


「私も先輩の事がずっと好きです……」


 楓にそう言って俺は楓の赤く火照った唇にキスをした。甘さ、そして酸っぱさを合わせ持ったこのキスは俺と楓の時間を少しばかり忘れさせた。幸せそうな楓の横顔を見て俺は宣言する。


 絶対に彼女を幸せにすると……


……………………………………………………


 


 



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毎日好きと言ってくる後輩に『俺もだよ』と言ってみた 俺は弟(二代目) @2026336

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