4,運命のデート

【竜司SIDE】


 時計を見ると朝七時を指していた。楓とのデート当日、準備を完璧に終わらせた俺はもう一度、洋服の確認をしていた。ブラウンのような色をベースにズボンはグレーのチェックだ。前もって髪は整えておいた。俺は勇気を持って扉を開けて走った。まだ空は太陽がガンガン火照ってはいない。段々暑くなって来る中、俺が待ち合わせ場所に着いたときにはもう楓は待っていた。白日のワンピース姿で……

 俺は言葉が詰まりながらも何とか言葉を発した。「す、すまん。待ったか?」その言葉に楓は凄まじい笑顔で「いいえ! 今来た所です!」と答えてくれた。 本当に可愛い…… 楓のことをうるさいと思っていた昔の俺に叱責したい。こんなに可愛いのになんでうるさいなんて思っていたんだ。 


 ずっと鳴り続けている胸の鼓動を隠すように俺は楓の手を繋ぎ引いた。「今回は俺にエスコートさせてくれ」その言葉に楓はうなずきながら俺の手を握ってくれた。その行為に胸中が幸せな気持ちで埋まりつつ、俺は予定通りに映画館へと向かった。


 『俺はお前が好きだ』

『やっと夢が叶うなんて、私は幸せです……』

 「先輩…… 感動しましたねって号泣じゃないですか?!」映画を見終わった俺と楓だが今の俺は人生のすべての涙を枯らしたぐらいに号泣していた。幼い頃に事故で体が不自由になってしまった少女璃菜。璃菜が願ったことは足が治ることでも自由になることでもない。幼い頃から思い続けていた幼馴染と結ばれることだったのだ……


 あぁ、思い出すだけでまた泣けてくる。俺はぐしょぐしょに濡れた顔を楓に見せないようにして次の場所、ショッピングモールへと向かっていった。

 ショッピングモールは見たことのないぐらい広い構造をしていた。俺は楓の手を取り

 ショッピングモールの一角、アクセサリーショップへと歩いた。楓は不思議そうに見ながら着いてくる。

 

 「楓、俺が楓にアクセサリーをプレゼントするよ」楓が欲しいアクセサリーを2つ買い二人のおそろいにするのだ。その言葉を聞いて楓は気まずそうに答えた。

「わ、私、あまりアクセサリーをつけたことが無くて……せ、先輩に選んでほしいです……」そう言った楓の姿はまるで天使のように見えた……


 楓がそう言葉を発してから俺が楓にあう

 アクセサリーを見つけるのに時間は掛からなかった。俺が見つけた蝶の形を催した髪留め。説明書によるにはこの髪留めには離れても無くならない。そんな思いが込められてるらしい。


 俺は楓にこの髪留めを渡し試着してもらう。「せ、先輩…どうですか?」おどおどとしたようなその言葉に俺は無意識に可愛いと言ってしまった。それ程までに楓の姿は魅力的で破壊力があったのだ。俺はこの髪留めと髪留めと同じ蝶柄のアクセサリーを一つ取り会計をした。

 「せ、先輩…本当に良かったんですか?」楓のその言葉に俺は笑って言う。  

 「当たり前だ。だって俺らは恋人だろ?」

 少しカッコつけてしまっただろうか? 


 俺は再び楓の手を取ると最後の場所であり俺が楓に自分から好きと伝える場所、学校の屋上へと向かうのであった……

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