3,楓のデート準備作戦

『デートしないか?』先輩、いや竜司さんにそう言われてから私は何も手につかなくなってしまっていた。 あの先輩から出たデートという言葉。その時を思い出す度に私は口のニヤケが止まらない。先輩はどんな服装で来るんだろう? そうだ、服はあるかな? 


 そう思いながら急いで服を漁るとそこには地味っぽい洋服が参列していた。このままじゃ駄目だ……私は直ぐ様、財布とかばんを持つと扉を開け、洋服屋へと向かった。


 洋服屋へ行った私がまず初めに目をつけたのはワンピースコーナだった。白いふわふわとした生地に所々に散りばめられている淡い水溜り。私に本当に似合うのか……そんな不安よりも先輩に見せたいという思いが勝り、私は試着室に入った。


 試着室は周り一面に鏡が貼られており、

 何処からでも姿を確認できるようになっていた。私って可愛いのかな…… 鏡に映る自分の姿を見て私はそう呟いた。 今の私は可愛いのだろうか? この私の洋服で先輩をドキッとさせられるだろうか?  


 少し、服を伸ばしながらクルンと1回転してみる。やっぱり可愛い。着る前の私と比べたらとてつもない差だ。だからこそ私はこの魔法とも呼べる衣服を持って会計の場所へと向かった。 


 会計が終わると私は袋にその洋服を詰め店を出た。家へと帰る途中で私はふと止まってしまった。そこに写っていたのはウェディングドレスだった。女の子なら誰だって憧れる純白のドレス…… 何分立ってしまったんだろう。私は周りの人の奇妙な視線で長いこと止まっていた事に気付いた。自分もいつか、先輩の隣でドレスを着て結婚式を迎えたい…… そう思うと体中が熱が出たように

 熱くなった。私はこの事を人に悟られないよう速やかに家へと帰宅した……


 「あら、お帰り楓」私が家に帰ったとき、もうお母さんは家へと帰っていた。私は不思議に思い問う。「お母さん仕事は大丈夫なの?」お父さんと離婚したお母さんは女手一つで私を育ててくれた。それは今も変わってないし今もなお毎日遅い時間まで働いてくれてる。なのに…… 


 私がそう思ってるとお母さんが言葉を発した。「だって、私の一人娘が恋してるんですもの。仕事よりもそっちのほうが大事よ」お母さんのその言葉に私は恥ずかしくなり

 「も、もう行くね!」と言って自分の部屋に戻っていった……


【楓ママSIDE】


 私の一人娘である楓が変わったなと思ったのは今から2日前だった。いつもならご飯を呼んだら一目散に駆けつける楓が来なかった。バレないようにドアを覗くと楓はスマホを見ながらニヤけていた。


 今日だって楓は普段は行かない筈なのに洋服を買ってきていた。その行為は私が楓が恋していると理解するには十分すぎた。私は

仕事をいつもより早めに切り上げ家で楓の帰りを待っていた。

 楓が家に帰ると楓は一目散に私に言葉を言った。「お母さん。仕事大丈夫なの?」そう言った楓の顔は不安を煽るような表情だった。それもそうだ。私は寝る間も削って仕事をしてたのだから……


 私は楓をあやすように言葉を発した。

「だって、私の一人娘が恋してるんですもの。仕事よりもそっちのほうが大事よ」その言葉を聞いた楓は恥ずかしそうに自分の部屋に戻った。やっぱり楓は私の娘だと再び感じる。からかわれたら信じられない程顔を赤く染める所も昔の私にそっくりだ。


 私は楓の、一人娘の恋愛成就を願って赤飯を炊くのであった……

 

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