2, お弁当と名前呼び

【楓SIDE】


 先輩のお弁当を作るため、早く起きた私は夜中の2時に送られた先輩からのメッセージを見てニヤけていた。あの先輩がきっと長いこと試行錯誤して送ってきてくれたメッセージ。『竜司だ。よろしく』という簡潔なメッセージだったけどそのメッセージは私の心をギュッと温めた。

 「よし! 先輩に美味しいって言ってもらえるような弁当を作るぞ!」お母さんもまだ寝てる朝早くに私はそう声に出して弁当を作り始めた。


 今回の献立は私が調べた先輩ノートの3

 ページ目にある先輩の好きなものからピックアップした先輩専用のメニューだ。まずは

 ほうれん草を鍋に入れ茹でる。そうしたら

 ざく切りだ。切ったら胡麻と塩コショウで味をつけ弁当箱に盛り付ける。

 先輩が喜んでくれたらいいなぁ……

 私はそう思いながら弁当箱を包み手提げに

 入れ込んだ……


 学校に着いて、私はいつも通りに先輩の教室へ向かう。いつもなら何も持ってないが

 今日は弁当を持っている。私の分と先輩の分、一緒に渡して一緒に昼ごはんを食べるのだ。

 「せーんぱい! 一緒にご飯食べましょう」その時の私は少し顔が赤かったと思う…… 

 

【竜司SIDE】


 「はぁ、眠い……」楓にLONEを送ってから俺は全く眠れなかった。毎日6時に起きている俺だ。2時からの4時間しか眠れてない。そんな気持ちのまま教室へと行くといつも通りに楓が俺の教室へと来た。よく考えると凄いな……だって1年と2年の教室は階層が違うのだから…… 

 そんな風に思ってると楓はみたこともない袋を掲げていった。

「せーんぱい! 一緒にご飯食べましょう?」そう言った楓の笑顔はなんか魅力的でなぜだか分からないが胸がきゅっと締め付けられる気がしたのであった……


 いつも通りに授業が終わると俺は楓にもらった弁当を手に普段は入らない秘境中の秘境である屋上へと足を踏み出した。

 屋上へと着くと楓が笑顔で俺を呼んだ。その言葉を聞くとまた俺の胸がきゅっと締め付けられる。 どうなってしまったんだろうか、俺の胸は…… 


 俺は楓の隣のベンチに腰を掛け楓からもらった弁当を開封した。

  そこには理想郷が存在していた……

 俺が好きなほうれん草のおひたしに弁当の醍醐味であるタコさんウインナー。更には卵焼きまで全てが俺の好みにあっていた。俺は楓に思わず『楓! 美味かった。ありがとう」と言ってしまう。楓の目の前では楓とは言ってなかったのに……


 その言葉を聞いた楓は「ふぇ? い、今先輩私のこと、か、楓って言いましたよねぇ?」はぁ……やってしまった。なんとなくだがこのときの楓は止められないだろう。

 ならば利用させてもらう。「だって俺達って恋人だろ? 名前呼びは当たり前だ」その言葉に楓は真っ赤に顔を染めながら「そ、そうですよね!! わ、分かってますよ! 

 りゅ、りゅ、竜司さん!」楓のその姿を見て俺は素直に可愛いと思った。「な、何笑ってるんですか! りゅ、竜司さん」楓のその 言葉で俺が今笑っていることに気付く。

 

 そうか、俺は今楽しんでるのか。楓と形式的に付き合うことになってLONEをしたり

 一緒に弁当を食べたり……それらのすべてが俺の思い出になっていたということか。


 付き合ってから一日でこれって俺はちょろいな。いや、もしかしたら本当に楓に惚れていたのかもしれないな……よし、決めた。

 来週、デートをするときにもう一度俺から

 告白する……

 決意を固めた俺は楓に言った。『来週、

 デートしないか?』


 『デ、デートですか?』戸惑ったようなその言葉に俺はあぁと答える。「場所は帰ってからLONEで決めよう」俺はそう言って教室へと戻っていった……

 

 最後のコマが終わり放課後、俺は直ぐ様家へと帰り、自分の部屋からすべての服を出してデート当日に来てく服を探していた。姉さんや母さんも不思議なように見ている。自分自身だって不思議だ。最初は復讐なんて言って楓と付き合ったのに、今は彼女のことを考えると胸が一杯になるのだから……  

 

 楓はどんな服が好きだろうか、そんな考えが俺の頭の中を行き来する。

 そんなことを考えてから一週間が経ち、遂に運命の日、デート当日がやってきた……


 


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