毎日好きと言ってくる後輩に『俺もだよ』と言ってみた

俺は弟(二代目)

第一章

1,後輩に俺も好きと言ってみた

『先輩! 今日もかっこよくて好きです!』

 彼女のその声で俺の周りは『またやってるよ』という声で溢れかえった。そう、こいつがこの高校に入学してから今日で約半年、

 毎日欠かさず言う俺に対しての愛の言葉に俺はもうメンタルがやられていた……


 俺、黒羽竜司は称えられる程の美貌は持っておらず、それに加えて成績だって中の上くらいのパッとしないそんな人間だ。

 だからこそこいつ、城風じょうふう楓が俺のことを好きと毎日大声で言ってるのが理解できない。楓が言葉を発する度に周りのギャラリーは騒いだり嫉妬の視線を向けたりする。

 

 どうにかして楓に復讐出来ないだろうか…… いや、待てよ? そこで俺は思い付く。楓の好きという言葉に対して『俺もだよ』と言ってみたらそれこそ俺をからかわせた復讐になるのではないか? 俺はそう考えこれからのことを頭に浮かべた。


 そして一時間目から4時間目までの授業が滞りなく終わり俺は楓が居るであろう食堂に行くのであった……


 食堂には生徒の約8割が集まっていた。

 その集まりには楓も例外なく入っている。楓は俺のことを目線で見つけるとこれでもかというぐらい笑顔になりながら俺の方へ近づいてきて言った。

 『先輩! 好きです!』後輩である楓のその言葉……もう俺はいつもの俺じゃない。俺は今までで一番のイケボで楓に言った。

 「俺もだよ…」


 「キャー!」そんな声とともに何処からかカメラの音が聞こえた。なんでそんな音がしたかは分からないが俺はもう一度楓を見た。

 楓は顔全体を真っ赤に赤らめ動揺しながら再度口を開いた。

 「せ、先輩? それって本当ですか?」耳まで真っ赤な楓を見て少し可愛いなと思いつつ俺は頷いた。

 「し、失礼しますぅ!!」楓は大きな声でそう叫ぶと一目散に場を去っていった……



 楓SIDE

「はぁ…先輩に顔が赤くなってるとこバレてなきゃいいけど……」リズムだつ足と口元を抑えて私はそう呟く。た、多分これは両思いだ。私も先輩の事が好きで先輩も私のことが好き…… そう考えると私の顔は火照ったように熱くなる。それ程までに私は嬉しかったのだ。 

 

 ずっと前、私がまだこの地域に来て間がなかった頃、お母さんとはぐれて泣きそうになってた時に先輩、いや竜司くんは私より一つ上なだけなのに暖かくお母さんと会うまで付き合ってくれた。彼と別れる時に言ってくれた言葉『君には笑顔が似合ってるよ』

 彼は何気なく言った言葉だと思うが私はその言葉に救われた。知り合いも誰もいないけど笑おう。そう思いながら私は生活し、彼、黒羽先輩が居る高校へ入学することに成功した。


 「ふぅ……先輩と両思いということはもう付き合ったも同然だよね。よし、明日からご飯作ってこよ!」回想が終わり私はそう言葉に出して校門を踏み出した。


【竜司SIDE】

 楓の一件の後、俺は沢山の人、主に新聞部だがインタビューのようなものを受けていた。その行為を受けて楓の毎日のその言葉が高校全体に影響を及ぼしていることを改めて知った。 そしてインタビューが終わると俺は直ぐ様帰りの準備をして学校を出るのであった……


 学校からの帰り道、俺はこれからのことについて考える。正直、俺にだって人並みの性欲って言うのはあるから彼女はいるか要らないか聞かれたらいると答えるだろう。


 けど、楓を本当に好きになることってあるのだろうか? 楓に対する復讐のために俺も好きだと口に出したが本当に良かったのだろうか? だが悩んでも仕方がない。一応だが俺と楓は恋人になったのだ。これから楓のことを知っていけば良い。


 俺がそう考えていると家が見えてきた。俺は家の扉を開け自分の部屋へと直行するのであった……

 

 自分の部屋に入った俺は登録してるが連絡を取ってない楓のLONE のページを開き、

 文字を入力する。はて? 何を送れば良いんだ? 『こんにちは』か 、それとも『よろしく』か…… どんなメッセージが楓が喜ぶか……悩みながらなんとか打てたのは

 『竜司だ。よろしく』という何も変哲もない言葉だった。しかし、時計を見るとその針は午前の2時を指している。 きちんと起きれるだろうか…… 俺はそう不安を呟きながら目を瞑った……




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