第6話

 その後、私は共学の四年制大学に、とこちゃんは川村モード学院に進学した。とこちゃんはびっくりするほどおしゃれになり、私にも流行りのデザインを教えてくれた。とこちゃんは分厚いファッション雑誌をひろげる。

「きっこちゃん、これが、今のうちの教科書や。おしゃれいうのはな、苦手なとこを出すことやで。足、太いからて、かくしてばかりやったらあかんで。」

とこちゃんはしりごみする私にミニスカートにチャレンジするようにすすめてくれた。

「とこちゃん、スカート丈、そんなに、短うするの?」

「そやで。きっこちゃん、うちがついてるで。おばちゃんが若い時にはいてたスカート、きっこちゃんにそのままはかせて、外を歩かさへんで。」

「ありがとう。なんせ、お母ちゃんのお古やろ。うちでも、なんや、かっこ悪いと思うわ。」

「うちにまかせとき。かっこようしたるさかい。」

とこちゃんは、手際よく、スカート丈を短くして、上着も私の体に合わせて、身幅を細くしてくれた。

「うわっ!すごい!かっこようなった。ありがとう、とこちゃん。」

「きっこちゃん、おばちゃんのお古の洋服、なんぼでも、うち、なおしたるで。」

「おおきに。でも、そのうち、バイト代入るし。新しいのも買うわ。」

「よっしゃ。ついて行ったげる。」

学校の授業、バイトの合間に、とこちゃんとおしゃべりをして、買い物をしたり、ケーキを食べたり‥‥‥あのころが、一番楽しかったように思う。


 四年後。

「ようやく、就職、決まったわ。うち、クラスの中で一番最後や。うちのデザイン画、ほんまに受けが悪かったわ。」

「なんでやろ。うち、とこちゃんのデザイン画、すごく好きやけど。ふんわりして、やわらかい感じで。とこちゃんそのものって思うわ。」

「きっこちゃんがそう言うてくれへんかったら、うち、くじけるところやった。でも、きっこちゃんも大変やったな。」

「まあ、うちの苦労も知らんと、親には色々言われたさかいな。そんな小さい会社、知らんて言われても、年回りが悪いわ、これといったコネはないんやからしゃあない。まあ、ビルのワンフロアだけの会社の事務職やけど、オフィス街、ヒールはいて歩いたるわ。」

「きっこちゃん、新世界は甘うないな。」

「せやで。うちら、もう大人や。わかってるわ。なあ、とこちゃん。」


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