亡くなった父から怪盗稼業を継ぎ、『硝子の蜃気楼』と呼ばれる贋作を狙う怪盗エリザベス。様々な人々と関わりながら追い続ける、彼女の真の目的と正体とは?
それが明かされる後半、わたしの情緒はグラグラ揺れまくりでした。これはレビューを書かねば!
血の繋がりは無くとも大切に育ててくれたパパへの思いに溢れるエリザベス。家族もの大好きなわたしは義父娘の親子愛にめちゃくちゃ悶えました。
パパのために一生懸命で、それゆえに道を誤りかねない危うさも。そんな彼女を取りまく人物たちもまた魅力的です。
怪盗を追い続ける警察官、監禁状態から救い出した子供、パパの友人でもある食えない情報屋。彼らの働きが素晴らしい。どう素晴らしいかはネタバレになるので言えませんが、見事なラストに着地させてくれるのです。また彼らが醸してくれるほんのりラブも楽しめます。このほんのり具合がこのお話にはぴったり。
文章の体裁などはweb小説っぽさは薄いかもしれませんが、この書き方やテンポ、言葉選びがとても好きな作家さんのお一人です。おすすめ!
きらびやかな屋敷やのどかな公園の広がるエレクトレイを騒がす人がいた――その名も怪盗エリザベス、怪盗星蜥蜴の娘と名乗るものだ。顔も見せずに華麗に駆ける彼女が狙うは『硝子の蜃気楼』――贋作だった。
世間的には悪いことをしているのですが、真っ直ぐな志を持つ主人公エリザベスが素敵でしてね、痛快な言葉を吐く彼女が素敵でしてね。私は惚れ込んでいるわけです。
主人公と警察官の攻防戦、許せない社会の非情、協力者との新たな盗み、主人公の過去、すべてにはらはらしてます。
彼女が進む先は何処なのか。痛快なアクションを楽しみながら追いかけてください!
平和な街エレクトイで颯爽と活躍するのは、贋作ばかりを狙う怪盗エリザベス。彼女の目的は「魔法の泉」から生み出された「硝子の蜃気楼」という贋作を探し当て、それらを無に還すことです。
まず何よりも読者を惹きつけるのは、主人公であるエリザベスの爽快さとカッコよさ。彼女は父と違って魔法を使うことはできませんが、小道具や身のこなしを活かしてターゲットに近づきます。迫りくる警察の手を華麗に交わし、目的を果たす彼女の行動は読んでいてとてもワクワクします。
もちろん怪盗にとって大事なライバルの存在も顕在。エリザベスを追う警察官の青年、ニックは真面目で職務に忠実な男ですが、すんでのところでいつもエリザベスに逃げられてしまいます。
怪盗ものの作品としてはかなり王道で、多くの読者が想定するであろう要素がギュッと詰まっているのが嬉しいポイント。華麗に活躍する怪盗にライバルの警察官。彼女の協力者である贋作職人の少年コリンと変装の達人である情報屋のダニエルの存在も物語に彩りとスパイスを与えてくれます。
おまけにエリザベスとニックはプライベートでは知り合いで、ニックはエリザベスに気がある様子。(もちろんニックはエリザベスの正体が怪盗だとは知りません)
だけど王道だからこそそこに作者の腕が光ります。
エリザベスが「硝子の蜃気楼」を狙うのは父の無念を晴らすため。だけども怪盗行為は世間やニックにとっては犯罪行為であることは間違いありません。贋作とわかっていながらもその作品を大事にしていた持ち主から作品を奪ってしまったことへの罪悪感、エリザベスを追うことによって怪我を負ってしまったニックに心を痛めるなど、次第に彼女は自身の行いに疑問を持つようになっていきます。
はたして彼女は正体を隠したまま父の無念を晴らすことができるのか?それともニックに捕まってしまうのか?
そして先が気になる見どころで読者を惹きつけつつ、物語は終盤で一気に転機を見せます。
タイトルにもある「贋作怪盗」――その真の意味を知った時、もうあなたはこの物語の結末を見届けずにはいられなくなるでしょう。
心優しく健気で頑張り屋。華麗に活躍するカッコいい少女怪盗の活躍を見届けてください。
月の光は心許ない。街路灯も、ランプの中に灯る小さな炎は頼りない。
つんざくようなホイッスルの音と、ランタンによって影を大きくされた怪盗の姿が一つ――。
「我が名は怪盗エリザベス、怪盗星蜥蜴の娘なり! 父の名にかけて、偽りを砕きに参上!」
彼女の前で、虚偽は割れる。
まるで、ガラスの破片のように輝きながら――。
『硝子の蜃気楼』と呼ばれる贋作のみを盗むエリザベス。
怪盗エリザベスを追いかける熱血刑事ニック。
情報収集のためなら、身分も経歴も作り変える情報屋ダニエル。
念写が使えるが故に、囚われの身となってしまったコリン。
エレクトレイを照らすのは、太陽の光か、ランタンか。