第10話
格闘家の彼は、剣士とは違い体一つでチュラットにタックルをしに行く。
グルルとうめきながら彼を離そうとチュラットはもがくが、ガッチリホールドしてるからか、ピクトも動かない
「彼すごい!このまま一人でやれちゃったりするかも!」
興奮して騒いだ私に対して微妙な反応をしたのは、ガタイのいい女性だった。
「いやぁ……どうかな……今はいいけど......」
「どう言うことですか?」
「あの手のタイプは、自分の限界値知らないから……最初に全力出し切って、力尽きちゃうんじゃないかな……」
そういえば、私も剣の稽古でよく怒られたっけ。
肩の力抜けとか、力任せに剣を振るなとか。
体力は温存して使えとか。
あれってこういうことだったのね。
戦闘にも闘技大会にも出してもらえなかったから、詳しく教えてもらえなかったのよね。
実戦で初めて知る事実
「彼が一体でも倒せれば御の字かな。今日も体力回復魔法いっぱい使わなきゃいけないかもなぁ」
そういうと、ガタイのいい女性は回復魔法を格闘家にかけるべく、その場から離れた。
その様子を見た肩にいるうさぎが小声で言う。
「って言うかさ、ジュリ……じゃない、ジェニスも見てないで戦闘に加わったら?」
私はその言葉にハッとする。
そういえばまだ、口動かしてるだけで何もしてないわ。
これではいけない、と思ったのだけど...
「どう参戦して、なんの魔法使えばいいかわかんないのよ。
頼りの女性は今治療魔法と体力回復魔法で指示どころじゃなさそうだし」
「偉そうなこと言ってた割に、人のこと言えないじゃん」
たしかに、返す言葉もない。
剣だったら参戦するイメージも湧くんだけど、やる予定のなかった魔法だと役回りが微妙にイメージが湧かない。
なるほど、実力はあっても経験値がないと冒険家としては認められないってこう言うことだったのね。
「少しは想像力働かせなよ、剣士あんな状態で直接攻撃できるのは今戦ってる格闘家だけ、
ならジェニスは魔法でチュラットの体力消耗させて彼の負担を減らせばいいんじゃない?」
「なるほど……と言いたいところだけど、どうやって?
炎の魔法は使えないのよ」
「生肉がいるって言ってたっけ……水は?」
「時間かかるし、生肉の品質落ちそう」
「風で突風起こして衝撃で気絶とか……」
「ピンポイントで風を当てるのは無理よ、全員巻き込むわ」
「雷は?」
「火事になったらどうするの?炎と一緒よ」
「そうなると……後使えるのは……」
「そうか!!アレなら動きを封じられるかも!!妖精の力借りるわよ!!」
「仕方ないなぁ」
ウサギはそういうと、突然白く光だす。
するとぬいぐるみはステッキへと形を変え、私はそれを掴んだ。
「ちょっと退いて」
そして、一歩前に踏み出して、格闘家に声をかけると、私は呪文を唱えた。
「森羅万象、の植物よ、我に力を!」
元皇太子妃候補、冒険へ…!〜転生してきた悪役令嬢に助けを求む〜 つきがし ちの @snowoman
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