病弱少女は夢の世界で魔王と戦う

ホリカ

第一話 誰か助けて!

「今日も誰も来てくれなかった……。」私は小さいころから体が弱く、入退院を繰り返していた。最初のころは毎日誰かがお見舞いに来てくれていたが、いつしか誰も来なくなった。だからいつも独りぼっち。外で走り回ったのもいつだったかわからない。6年前?7年前?とにかくそれくらい前だ。

「あと一度でいいから、普通の人達みたいに外で走り回りたかったなぁ。こんな体じゃもう一生だめだろうけど……はぁ……。」またため息がこぼれる。こんなことを考えていたって仕方がない。そして私は眠りについた。


――おーい、大丈夫かー?あっ、やべっ魔王が起きた!――

誰だろう。誰かに呼びかけられている気がする。それよりも、早く起きないと。身の危険を感じる。

「……ここは?」頭がふわふわする。だけど、目の前にいる少年が何を指さしているかはわかる。この世にいるはずのない魔王だ。

「っ!?魔王!?……いや、漫画みたいなこと、あるわけないし、何かのコスプレかな……?」

「いや、何言ってる!逃げるぞ!」少年がそう叫び、私のほうに手を伸ばす。その瞬間ふわっと体が浮いた。

(お姫様抱っこ⁉こんなの初めて!いやいや、いつも病院にいたしそれくらい当たり前か……それよりもこれ、何かのドッキリ!?でも、眠ったのは確かだし。もう、わけわかんない!)

少年は軽々と私を持ち上げ、走り出した。するとまてぇぇぇ、と魔王が叫びながら追いかけてくるのが見えた。それにしても、少年の走る速さが早い!こんなの車を追い越せるのでは?と思いながらも意識を失っていった。


目を開けて最初に認識したのがさっきの少年だ。なにかを考え込んでいた。

「あの……さっきは助けて下さりありがとうございました。」声をかけると、やっと起きた、というようにこっちを見てきた。

「あぁ。それより、何で空から降ってきたんだ?」は?私、空から降ってきたの?

「わかりません。それより、ここ。どこですか?」

「は?知らないのか?ここはイセカーイ国だ。」勉強好きの私でもそんな国の名前聞いたことがない。そもそも、地球に存在しないのでは?そう考えたとたん、急に怖くなって、お守りのペンダントを握りこんだ。すると、視界が真っ白になった。最後に、少年の

「なっ、姿が消えていく……。ちょっとまっ」という声が聞こえた後またもや、気を失った。


「おーい新井さん。起きて―。」あぁ。いつもの看護師さんの声だ。そして、目を開ける。

「あ、美来さん。……よかった。現実世界に戻れたんだ。」

「ん?じゃあ、いつもの検査始めるねー。」そして、不思議な出来事を忘れていつもの日常に戻ったはずだった。

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