第13話
――コンコン――
「はい」
「ごめん、本当は退院後に会うつもりだったけど、心配で来ちゃったよ」
「隆志」
「手術は無事成功したみたいだね、おめでとう。これ……お見舞い」彼は片手に大きな花束を携えていた。
「初めて花束なんか買ったから、すごく恥ずかしかったよ。『プレゼントですか?』なんて聞かれて、どうしようかと思った。あとはまた海洋深層水、これ飲んで元気になって」
「ありがとう、でもそのお水のおかげですごい夢見ちゃったんだよ」
「へえ、どんな夢?」
「エウロパって知ってる?」
「たしか……木星の衛星だよね」
「そう、そこで隆志に会うの」
「俺に? 宇宙で? それは思いもよらない夢だね」ぷっと笑う隆志。
「おじさんの隆志に。それでね、エウロパの地下に大きな海があって、潜水艇で連れていってもらうの」
「エウロパに海がある? 興味深いな、それでどうなるの?」
海のこととなると、急に真剣な表情になって私を見つめる隆志。
「ものすごい大きなクジラみたいな生き物がいて、潜水艇を横切っていったの。そしたら正面に見えてきたのは……あっ! 見て」
窓の外に白い軌跡を描きながら、ゆっくりと天上を昇っていくロケットが見えた。
もう少し先の未来、あのロケットに乗って
6億2800キロメートル彼方のエウロパの海を
旅することを私は夢みた
fin.
あのロケットに乗ってエウロパの海へ NEURAL OVERLAP @NEURAL_OVERLAP
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