第12話

 透明で丸い物体がふわりふわりと船体を取り囲む。

「あれは何?」

「エウロパの生命、無脊椎むせきつい生物だ。名称はまだ決まっていない」

「プリンみたいだから、プリンスでいいんじゃない?」

「王子様か、なるほどますます舞踏会に来たようなムードになってきたね。それでは大広間に向かいましょうか」


「うわ、すごい、シャンデリア!」

 目の前に高さ1000メートルはあるであろう巨大な氷柱つららの集合体が現れた。ライトの照明が当たるとキラキラと虹色の光を放っていた。

「氷の中に鉱物を含まれているようで、それが光を反射して七色に発色するんだ。そして……主賓がやってきたぞ」


 潜水艇のすぐ横を青白く光るヒレのついた巨大な物体がゆっくりと通り過ぎていく。

「全長200メートル以上にも及ぶ軟体生物、光に寄ってくるんだ。ギリシャ神話の海獣にちなんで、『ケートス』と名付けたよ。見ててみな、面白い反応を示すから」

 スポットライトをチカチカと点滅させると、ケートスはそれに合わせて体を発光させた。


「挨拶している?」

「そう地球のホタルイカみたいに光ることができて、コミュニケーションの手段になっている。つまり……知性を持っている」

「宇宙人!」

「人ではないけど初めての地球外知性との接触だね、君はその第一号さ。どんな能力を持っているのかは、まだわかっていない……ひょっとしたら、彼らに招待されたのかな」


「こんな経験ができるなんて信じられない。でも私がここにいるということは、地球の私は今頃どうしているのかな……」

「運命は繋がっている。地球にいる君もきっと幸せを掴んでいるはずだよ」


「あ、あの銀色の洞窟は何?」

「ゲートと呼んでいる、あの先はまだ探査していない。少し冒険してみようか?」

「どこに繋がっているのかな? 楽しみね」

 潜水艇はスクリューから白い泡を吹き出しながら、冷たく光る洞窟に吸い込まれていった。


 エウロパの神秘が叶えてくれた、

 ユリナと二人で氷城の海を旅する物語が始まる。

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