第11話

 基地の横には大型のレーザー地下掘削機がそびえ立っている。氷の地表を削って大きな穴を開け、そこから潜水艇を沈めてエウロパの海を探索する。


「ユリナ、君が今ここにいるのは偶然じゃないかもしれない。氷層を貫通したのは、つい最近なんだ。潜水艇での探査は初めての試みだよ」

「うん、夢が叶った。強い想いさえあれば、なんでも実現しちゃうんだね」

「君の現実はおじさんの俺がいる場所だけどね。それでもいいのかい?」


「この世界を描いたのはたぶん私、自分の理想の世界がここにある。今はそう思える」

「たしかにそうでもない限り、こんな奇跡は起こらないだろうな……夢の世界へようこそ」俺は潜水艇のハッチを指し示した。


 手をつなぎながら潜水艇に乗り込む。ハッチを閉めると二人で並んでシートに座った。

「どのくらい潜るの?」

「驚くなかれ、たったの4000メートル、すぐに到着するよ。心配しなくても無人調査はすでに進んでいる、危険はない。どんな世界かは行ってからのお楽しみだ」


 潜水ファンを起動し、船首を下に向けると急潜航を始めた。氷のトンネルを進んでいくとライトが反射して、光のシャワーが眼前を囲む。

 間もなくすると急に視界が広がった、群青色の海原が一面を覆ったからだ。


 ――エウロパの海――


 潜水艇を水平に針路変更すると、頭上に氷柱つららの回廊が望めた。

「すごい幻想的、氷のお城に来たみたい」強化ガラスに手を当て、驚きの表情で海中を眺めるユリナ。

「シンデレラさん、驚くのはまだ早いよ。ほら見えてきた」

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