番外編~その後~
第6話・わたくし、卍華と池煮江のその後ですわ
数年後──小学校の下校時刻。
帰宅する児童たちは、廊下ですれ違う男性教諭に下校の挨拶をする。
「池煮江先生、さようなら……また明日」
「はい、さようなら。車に気をつけて帰ってね」
五年生の教室を受け持つ、池煮江も職員室で帰り支度をすると、教員住宅に帰宅した。
部屋の中には、悪魔の姿でエプロンをした悪之宮卍華が台所に立っていた。
夫婦別姓で、通い妻の卍華が池煮江に言った。
「お風呂沸いていますわ熱湯風呂ですわ、夕食は激辛の地獄カレーですわ……おほほほっ」
エプロンを外した卍華は、池煮江に近づくと池煮江の首に腕を回して抱きついて、愛を確かめ合う夫婦のキスをする。
「んっ……ん、愛してますわ、池煮江」
「ボクも愛している」
「勝手に死んで、異世界転生したら承知しませんわよ……おほほほ」
その時、部屋のドアが開いて。ヒトデ型の一つ目悪魔を馬代わりにして乗ってきた、保育園児の男の子が帰ってきた。
「ただいま、母」
「おかえり、
保育園から卍太を乗せてきた、一つ目悪魔は玄関でへたって愚痴る。
「いったい、子供にどんな教育しているクマ……迎えに行った保育園で頭引っ張られて少し伸びたクマ」
卍華は悪魔の愚痴を無視して言った。
「お夕食の激辛カレー、悪魔も一緒に食べていけばいいですわ……わたくしと卍太は一緒に、悪之宮の屋敷の方に帰りますわ……卍太、池煮江に捨てセリフを残しなさい」
父親に毒づく卍太。
「親父、勝手に死んで異世界転生するんじゃねぇぞ……また来るからな」
通い妻の卍華と、その息子の卍太は、仲良く手をつないで帰っていった。
ヒトデ型悪魔は、食卓の椅子に座ると冷蔵庫から発泡酒を取り出して言った。
「池煮江も、この先、苦労するクマ」
悪魔が発泡酒のプルトップを開けると、勢いよく噴出した発泡酒がヒトデ型悪魔の一つ目を直撃する。
「ぐわぁぁ! 目が、目がぁ! クマァァ」
一つ目を押さえて、床でのたうち回る悪魔を無視して、窓ガラスに映る夕焼けを見ていた池煮江は心の中で。
(また死んで異世界転生する日が、いつか来るのかな)
感傷的にそう呟いた。
悪魔冷嬢その後~完~
悪魔冷嬢 楠本恵士 @67853-_-
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