ウマ女 ダーティーダービー

藤田大腸

ウマ女 ダーティーダービー

 幼い頃にお父さんお母さんと一緒にお馬さんごっこをやったことがある方は多いでしょう。しかしいい年をした二人がお馬さんごっこをやると何かのプレイかと見紛うぐらい危険な絵面になってしまいます。


 ここ名門、正親町おおぎまち家のお屋敷で行われる廊下150mの一戦。出走する馬はメイドチョウサンただ一頭、いや一人ではありますが、鞍上に正親町友梨佳お嬢様をお迎えし電撃の150mを駆け抜けようとしています。


 友梨佳お嬢様は外面が良く、名家の令嬢として礼儀正しく振る舞っておりますがやはりストレスが溜まるのでしょう。お屋敷ではメイドたちに対してサディスティックに振る舞い鬱憤を晴らす毎日。お馬さんごっこもお嬢様の鬱憤晴らしの一つです。


 さて馬役のメイドチョウサンですが、名前の通り正親町家のメイドたちを取り仕切るメイド長を務めており、友梨佳お嬢様のサディズムを真正面から受け止められる百戦錬磨の強者です。お馬さんごっこも慣れたものでまさに人馬一体。しかし今日のお嬢様は少々ご機嫌が悪い様子。果たしてお嬢様の乱暴な騎乗に応えられることができるでしょうか。


 今、ゆっくりとメイドチョウサンがスタート地点であるランドリールーム前に向いました。本物の競馬であればゲートイン完了といったところ。


 さあスタートしました!


「ほら、とっとと走りなさい!!」


 おおっと友梨佳お嬢様がいきなり出ムチをお尻に三発食らわせた!


「ひぃんんん!!!!💕」


 メイドチョウサンが気持ちよさそうに嘶きます。ビットギャグを噛まされてレース前からヨダレをぼとぼと垂れ流していましたが、ムチで叩かれて感じたのか滝のようにヨダレが溢れ出てきました。掃除したばかりのカーペット敷きの床が台無しです。


「もっとお鳴き!」

「あひぃん!!💕💕」


 お嬢様が右手左手と器用にムチを持ち替えてビシバシ連打します。ムチには動物愛護の観点から衝撃吸収パッドがつけられていますが、本気で叩かれたらやはり痛いでしょう。


 さあメイドチョウサンは友梨佳お嬢様を乗せて、他のメイドたちの冷たい視線を浴びながらトコトコとコーナーに向かいます。


 おおっとここでロボット掃除機が飛び出してきたがメイドチョウサン踏み切ってジャンプゥ! 見事な飛越でかわしました。オジ○ウチョウサンをもじった名前が功を奏したのでしょうか。


「きゃははは!」


 お嬢様もこれにはご満悦で子どもっぽく無邪気に笑います。子どもっぽくとは言いましたが、本当はとっくの昔にお馬さんごっこは卒業していなければならない年齢です。


 あっと今度はティーワゴンを押しているメイドが接近! メイドはよそ見してお馬さんごっこをしている危ない二人に気づいていません!


「きゃあっ!」


 メイドチョウサンが大きく左に回避してティーワゴンを避けましたが、お嬢様は危うく落馬しそうでした。相手のメイドはお嬢様の悲鳴を聞いてようやく二人に気づきましたが、メイドチョウサンが避けていなければ正面衝突していたかもしれません。


「このおバカ! どこ見てんのよ!」

「ひいい! お許しをー!」


 ああっと、お嬢様がすれ違いざまに相手の尻にムチを入れました。お嬢様の怒りは馬にも向けられます。


「お前ももう少し丁寧に動きなさいよ!」


 衝突を避けてくれたにも関わらず理不尽です。パァンパァンという小気味いい音と喘ぎ声が廊下に響きます。メイドチョウサンの顔はすっかり蕩けています。


 さあ最後の直線に差し掛かりました。ゴールのお嬢様の部屋まであと30mもありません。お嬢様の風車ムチがうなります。競馬の世界ではムチ使用ルールの厳格化でもはや見ることが少なくなった技です。メイドチョウサンが通った後はくっきりとシミができておりますが果たしてヨダレによるものだけでしょうか。


 メイドチョウサンはぐんぐん加速。これはレコードタイム更新間違いないでしょう。実際タイムを測ったことがないので知りませんが。


 今ゴールしました!


「きゃははは! まだ足りないわ! もっと! もっといい声を聞かせてちょうだい!」


 おおっとお嬢様、レースが終わったにも関わらずまだムチを入れ続けています。


「ひひぃーーん!!💕💕💕💕」


 あーっとメイドチョウサン急に立ち上がった! お嬢様落馬!


「いったあ……何すんのよ!!」

「お嬢様……」


 メイドチョウサン、ビットギャグを外しています。目つきはなにかイケないお薬をキメているかのようです。これは非常に嫌な予感がします。


「残念ながら最後の直線でのムチの過剰な使用、レース中に他のメイドへのムチの不適切な使用、レース終了後にも関わらずムチを使用したことによりお嬢様は10日間の騎乗停止処分となります。制裁点に換算すると30点。再教育が必要ですわ」

「再教育って何を……んぐっ!?」


 なんとメイドチョウサン、お嬢様にビットギャグを噛ませた! お嬢様は後ろから抱きかかえられて身動きを取れません! メイドチョウサン、本物の馬までとはいきませんが相当な力があります!


「それはもう身を以ていろいろ教えて差し上げますわ……💕💕💕💕💕💕」

「んぐぐーっ!!」


 お嬢様の部屋の分厚い扉が開かれました! お嬢様はずるずると中に引っ張られていき、扉が閉じられました!


 どうやらこの先は詳しく実況しようにも規約に引っかかるでしょう! 残念ながらお伝えすることができません! 大変恐縮ではございますがこの辺で失礼させていただきます!

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