第2話 親友

 駅での一幕があった後、親切な駅員さんが幸い学校に連絡してくれたということなので遅刻はつかない。

というわけで、喫茶店に行きのんびり読書してから昼休み頃に重役出勤である。


◆ ◆ ◆


 教室に入ると、さっそくにやにやと近づいてくる男が一人。


「よっ、八雲。重役出勤とはいい御身分で」


「うるせーヨッシー」


 話しかけてきたのは、茶髪にネックレスという軽い感じのイケメンである。

名を吉田よしだ 健太けんたと言い、小学校からの知り合いである。

余談だがうちの高校は校則は緩いが頭は良いので人気の高校で、髪を染めていても問題はない。

 夏休み明けは、変な髪色が増えるが、こいつもそのうちの一人で緑の髪色になっていたのと名前が似ていたため、敬意を込めて配管工さんが登場するゲームのキャラクターで呼んでいる。


「お!そのあだ名で呼ぶとは喧嘩をご所望か?せっかく、朝に駅員さんを呼んであげたというのに。」


「ん?あれ、お前が呼んだのか?」


「そうだぜ!時間がなかったから、待てなかったんだが感謝しやがれってんだ!」


「それは本当に助かった。あのままだと、らちが明かなかったかもしれないから。

感謝、感謝」


「いいってもんよ。それはそうとも!あの女の人えらく美人だったなぁ。なんかお礼とかあったのか」ニヤニヤ


「いや、お礼は断ったよ。名刺みたいなのを去り際に渡されて。後で連絡くださいみたいなのはもらったけれど」


「おいおい、マジかよ。そいつは良かったじゃないか。連絡してみたらどうだ?

さすがに少しは何か送ったほうが印象がいいぞ」


「それもそうだな。昼休みはもうそろそろ終わっちゃうから、放課後にでもメールしてみるか。」


「そうしてみようぜ!俺も一緒に文面考えるからさ!」


「って、なんでお前も考えるんだよ。お前の場合は完全に興味あるからだろうが。てか、授業がそろそろ始まるから着席しろよ」


「ジュース一本おごるから!放課後またな!」


慌ただしく自席に戻っていく、腐れ縁の様子を見送りつつ、一方で、どんな文面を送ろうかと考えるのだった。


◆ ◆ ◆


「よっしゃー!待ちに待った放課後だぜい!八雲!文面を考えるぞ!」


「なんでお前はそんなハイテンションなんだよ。お前に言われたからなんとなく考えたんだが。とりあえず、連絡くださいって言われたので連絡しましたって、あたりが無難だと思ってるんだがどう思う?」


「俺もそれでいいと思うぞ!こういうのはがつがつせず控えめにいかないとな!ちなみに八雲がもらった名刺ってのはこれか?」


 さりげなく、ひょいっと机に置いていた名刺を手に取る健太。


「えーっと。名前は平川ひらかわ 雪乃ゆきのさんでいいのかな。

、、というより、この名前どこかで、、、、、」


「だと思うぞ。てか、なんでお前が見てるんだよ。」


なにやら考え出したバカから名刺を取り返して、それを見つつ宛先やらを打ち込んでいく。そして、連絡をとりあえず送りましたといった旨を打ち込み送信完了である。


「健太。俺は今からバイトだけど健太はどうする?」


「ん?そうだな。俺も愛しの彼女に会いにバイト先についていこうかな!」


 ちなみに、健太の彼女さん。清川きよかわ 明美あけみさんは大学1年で健太の所謂、幼馴染(珍しい年上の)というやつである。ショートカットのワイルド系美人で、バイト先はその明美さんから紹介してもらった個人経営のレストランで二人のシフトが被ったときは健太がついてくるという訳である。

 余談だが積極的な健太の押しにボーイッシュな姉御肌の明美さんは、意外にもいつも赤面しているらしい(健太ののろけによるとそこもまた魅力の一つであるようだ)


◆ ◆ ◆


「ふぃー、食った食った。美味しかったです!マスター!」


「はいよ!健太。お粗末様!」


 場所は移り、レストラン熊のキッチンへ。

安直な名前通り、熊のように大柄でひげもじゃなシェフが店長のお店である。

 そこで、俺は調理補助+ウェイトレス。明美さんはウェイトレスで働いている。

健太がついてくるときは何かしらを晩御飯代わりにカウンターで食べるのが恒例である。

 大体、週に3,4日の割合で互いに入っており、ピーク時が過ぎた後、二人で来月のシフトについて話していると健太が話しかけてきた。


「なぁなぁ。明美姉さんに聞きたいことがあるんだけど」


「なんだい、健太」


「明美姉さんの知り合いに平川 雪乃って人いなかったっけ?」


「雪乃はあたしの高校からの親友だよ。なにか聞きたいことでもあるのかい?」


 と、ここでまさかの。平川さんが明美さんの知り合いであるという事実が発覚したので、健太に代わり当人である自分の口で朝の出来事を説明する。


「へぇ、そんなことがあったのかい。それについては、あたしからもお礼を言うよ。あたしの親友を痴漢から助けてくれてありがとうね」


「いえ、自分も成り行きでそうなっただけですから」


「いやいや、そうはいってもさ。しかし、そうかい。あの子が連絡先を渡すとはねぇ、、、。」


なにやらぶつぶつ言っている明美さんを尻目に

バイト終了時間のため店長に一声かけてからロッカールームで着替え帰路に就く。


ロッカールームで見たとき、まだ返信は来ていなかった。

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痴漢されていた巨乳美人を助けたら癒される話(仮) てんちゃん @magimagi

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