第3話 終章

「ー皆-? たくさん? その人達マレーンのこと好き?」

「ええ」


 


 ああ、そうか。それでもマレーンには還る場所があったんだな(ぼくと違って)。


レストムには友人も恋人もいる。マレーンしかいないのはぼくだ。ぼくにはマレーンしかいない。

マレーンは故郷を欲している。昔捨てられた星を…。




 ーマレーン…。




 (おぼろげなマレーンの母の幻影。彼女を待つ祖父母。そしてすべてのレストム(異世界の人々)。)


 (金の髪のメティラムには教授の夫。サジェス副長には愛らしい恋人。そして、

ああボルグートの娘は、死んだ。)


 


  皆、誰かを守りたくて、守られたくて、そしてぼくは、マレーンなしでは独りぼっち。

(誰もいない。)

(皆、死んだ。)




ーいいよ。ぼくの命、あげる。


 


 一瞬、皆が沈黙した。安堵と嘆息。マレーンはすみでそっと胸をなでおろしていた。




 それがマレーンの過ちだったとしても、ぼくは知らない。

でも、その一刹那がぼくをつらぬいたのは確かだ。


 


 ぼくの命。ぼくの心。誰でも自分が大事なんだよね。


ぼくは少し柳眉を寄せて哀しく微笑った。

 


 ぼくの身体は小刻みに震えた。




ーふふ、さあ、マレーン。レストムと共に行くがいい。

 

ぼくの銀の角はラーム・ブルーの輝きを増し、ラフェルの炎が吹き荒れた。


 


素晴らしい輝き。

 すさまじいエナジィ。


ぼくは彼等を消滅させた。彼等の望むラフェルの炎で。



マレーンとの十四年間は、そう長い間ではない。ぼくはまた、

…今度は一人で…星々と交わり、語らい、彼等の〃音〃を、聞くだろう。

生命の煩わしさから抜け出て、時の狭間をさまようだろう。


 


けれど……あのマレーンは、もういない。




<fin>

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銀の角 ゆり呼 @mizunoart_yuriko

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