コンビニの車止め
【5/27(月)】
キーロ:今腕だけ殺人事件の街BBSであがってる写真、くまにゃんさんの腕じゃない? 11:30 既読3
キーロ:ブレスレットがくまにゃんさんのだった気がする 11:31 既読3
サニー:やっぱりそう? 私も見た。 間違いないと思う。向日葵の柄の布に包まれてた 11:32
サニー:どうしよう、さっきでりあさんとみちとしさんに電話したけどでない。最初と2番目の腕だけ殺人事件は2人じゃないかな 11:33
キーロ:まさか、そんなことないよね、でも。私もくまにゃんさんに電話したけど全然繋がらない 11:42 既読3
サニー:やぱいって、キモオフ行った人が狙われてるんじゃない!? 11:43
キーロ:まさか 11:43 既読3
サニー:警戒したほうがいいかも 11:44
よっち:ないない。気のせいっしょ 12:25
サニー:絶対くまにゃんさんのだって 12:26
よっち:心配しすぎ 12:32
サニー:だりあさんの彼氏とも連絡とれないんだよ!? 12:34
よっち:なんで彼氏さんの携番しってるの 12:38
サニー:ストラップ渡したときにきいたもん 12:40
よっち:仕事中じゃない? 12:42
サニー:絶対おかしいって 12:43
ペッカー:おはよ~サニーちゃん俺にも電話頂戴♪ 14:10
キーロ:私もブレスレットはくまにゃんさんのだと思う 16:12 既読3
サニー:やっぱそうだよね? それに既読も3しかつかない 16:17
【5/28(火)】
ペッカー:サニーちゃんから連絡なくて俺さみしいです 05:10
よっち:ペッカーさんしつこいと嫌われますよ 12:17
【5/30(木)】
ペッカー:助けて 0:12
ペッカー:(位置情報) 0:12
キーロ:どうかした? 0:18 既読2
キーロ:ペッカーさん? 0:26 既読2
サニー:まさかペッカーさんも襲われたんじゃ 2:16
そこでグループLIMEは止まっていた。
「この位置情報がさっき行った腕のあった場所だよね」
「そう。このメッセがあった後、『でりあ』さんと『サニー』さんに電話したの。『でりあ』さんはお母さんが出て、『でりあ』さんがいなくなって探してるって聞いた。『サニー』さんとはアップされた腕はやっぱり『くまにゃん』さんので、キモオフメンバーが狙われてるんじゃないかって話してた」
キーロさんのLIME画面を写メって保存する。
ペッカーさんのメッセはとても短くて、妙に生々しい。『よっち』さんの言うようにナンパだとしたら、もうちょっとこう、ライトな気がする。これを見ちゃったらサニーさんじゃなくても心配するよと思う。キーロさんはナナオさんを頼ったけれど、サニーさんには頼れる人は誰もいないのかもしれない。こんな話、なかなか他人に信じてもらうことって難しい。だから同じオフに行った『よっち』さんを頼ろうとしたのかもしれない。
次の場所を早く調べてサニーさんとも合流しようということになって、逆城に急いだ。
昨日と同じく展望台行きのバスにのって二東山のふもとのバス停で降りる。そのコンビニは街道沿いにぽつんとあって、車が10台くらい停まれる広い駐車場があった。奇しくもそこは、ちょうどオフのために待ち合わせたコンビニだった。
夏の初めの今日は妙に気温が高く、地面から熱が上がっている。ここもアスファルト敷きだ。所々舗装が痛んで、陥没したところに水たまりができていた。ここも湿っている。神津の路地と同じように怪異の気配はあった。けれども場所が開けているせいか、だいぶん薄らいでいた。
コンビニでジュースを買って駐車場の車止めに腰掛ける。
「共通点はなんだろう」
キーロさんはどんな場所を避ければ安全なんだろう。
「最初の2箇所はなんか似てたけどさ、ここは全然似てないよ」
「キーロさんは?」
「私には……わかりません」
3箇所とも似谷坂の怪異と関係があるのは間違いない。この気配はキーロさんのストラップにも共通していた。それならキーロさんも襲われる可能性が高い、のかもしれない。どうにかして襲われない方法は何かないかな。
神津の2箇所は狭いところだったけどコンビニは広い。人の気配が乏しいくらいしか、共通点は見出せない。
「ねぇ、そうすると人気のないところには立ち寄らなければいいのかな」
「いや人気がないとこっていわれてもさ、キーちゃんち住宅街だろ? どこにも出れなくなっちゃうぜ」
「それとも場所にあまり共通点はないのかな」
結局答えは見つからなかった。3人で少し途方にくれた。
「なぁ、藤友なら何かわかんないかな」
「メールしてみる」
昨日からの『よっち』さんとのやりとりや今日わかったこと、たくさんの写真をさっきのLIMEと一緒に藤友君にメールした。
10分たたずに藤友君から返信と答えが送られた。
◇
夜半、妹から電話がかかってきたんだ。
不自然に呂律も、そして頭も回っていなかった。
「助けて、どうしたら」
「どこにいる!」
「わかんないよう」
妹は今、どこかに隠れているらしい。車に飛び込みアクセルを踏み抜く。場所は神津アリーナ近くの廃墟のはずだ。
スピーカーをオンにしてもどかしく状況を聞き出す。ピクルスと名乗った男に渡された飲み物を飲むと、意識が朦朧としたそうだ。うかつすぎる。
「ピクルスさん以外いなくなっちゃって」
ピクルスは介抱すると他の参加者に伝えてオフは解散となり、ピクルスと何人か残った。そのあとアリーナまで連れて行かれて、ふいをついて逃げた。
もうすぐアリーナだ。
「いたぞ、あそこだ」
「いやだ! やめて!」
電話口から、複数の声が聞こえた。そしてそのやめて、という妹の声を最後に、ぽちゃりという水音とともに通信は途絶えた。
静かになった車内で、私は大声で叫び続けていたことに気がついた。
新谷坂町怪異譚 〜君と歩いた、ぼくらの怪談 Tempp @ぷかぷか @Tempp
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