第64話 新たな一歩
ゴブリン博士は俺に頭を下げて首を差し出してくる。
ここでスパッと切って終わらせろということだろう。裏切り者として責任を取るつもりはあるようだ。
他の魔物たちはみんな黙って俺たちのことを見守っている。
「確認したいことがある。お前は俺の配下になってから、敵国と通じてたりはしてなかったよな?」
「クックック、もちろんでございます。そんなことをする意味も理由もありません。足を引っ張りたいわけではありませんでしたから」
ゴブリン博士は満足したような笑みで答えてくる。
これまでの下卑た笑みとは違って、心の底から愉快だと笑い飛ばすように。
「獣王が無能すぎて肩透かしをくらったから裏切った。その言葉にも偽りはないな?」
「もちろんでございます。悪魔王と獣王の立場が逆ならば、私は特に翻意もなく働いていたでしょう」
獣王は俺からしても本当に弱すぎた。相手にならなすぎて肩透かしをくらったのだから。仮にもこの島の土地の半分を持つ魔王が、これまでで最弱の戦力とは思えなかった。
対して前座であるはずの悪魔王は本命のように強かった。ゴブリン博士は常に俺を愉快そうに見ていたのだから、これほど面白くなかったことはないだろう。
コース料理の前菜でステーキを出されて、メインディッシュで質の悪いサラダが出てきたようなものだ。物足りないにもほどがあった、だから怒ってちゃぶ台を返したのだ。
そして先ほどの裏切りをもってしても変えられない事実がある。それは……。
「はぁ。頭を上げろ。ドクターゴブ」
「む? 私はゴブリン博士ですが?」
「お前に将来的に渡す名前だ。本当なら獣王に勝った時点で渡す予定だったが、これまでの活躍への褒美は暇でチャラだからな。次に活躍したらだ。この島以外にも大陸があるなら、まだまだ手腕を振るって欲しいしな」
ゴブリン博士は間違いなく俺の右腕なことだ。彼がいなければ俺はここまで来れていない。
「クックック……それはなりません。裏切り者を処断しなければ、配下から不満を持たれますぞ」
「それくらいは何とかする。俺を舐めるなよ? 巨人の口に近づいたくらいだぞ。今思い出しても鳥肌立ってくる」
巨人の口にEP貨幣投げ込んだのはしばらく夢に出そう。歯とかえぐかったからなあいつ……。
「しかしそれでは」
なおも断ろうとするゴブリン博士。
さっさと折れて欲しいので俺は殺し文句を告げることにした。
「それに……このままだと俺はあの獣王と同じレベルに落ちるぞ? 最も信用している始まりの魔物に裏切られた、な。それをお前が望むのか?」
「………………」
ゴブリン博士はしばらく黙り込んだ後、歯茎を見せびらかして笑った。その笑顔は醜悪でいかにも愉悦、いつもの悪い笑顔だった。
「クックック! それはダメですなぁ! 我が敬愛する主様が、あんなゴミと同一視されてはたまりませぬ! よいでしょう、このゴブリン博士再び配下に復帰させて頂きます!」
とうとう折れた! ゴブリン博士は俺の下に戻って来ると宣言したのだ!
「全員に告ぐ! ゴブリン博士は俺の配下に戻った! この件に関しての異議があるならば俺に言え!」
俺は集まった配下の魔物全員に宣言する。
ミアなどの主要な魔物たちはともかく、ハーピーや元悪魔王の魔物は文句もあるだろう。裏切り者が自分達の上に立つなど嫌など考えるはずだ。
だがそれは飲み込んでもらう。肉国は大所帯となった、全ての魔物が全員不満を抱かないなんてのは不可能だ。不満を抱かせた上で裏切らせない、忠誠を誓わせる。それが今後の俺の役目なのだから。
「ボクは賛成! というかボクもちょっと危なかったし……」
「異論はないでござる。この剣の恩義もあるゆえ」
「美味しい肥料をくださいですわ!」
「新参の私としては特に異論はありません」
ミアやマサムネ、アイーネやマーメイドは俺の言葉を肯定する。
主要の魔物である彼らはきっと反対しないと思っていた。何故なら皆、ゴブリン博士に何らかの形で世話になっている。
それに何より……。
「正直ボクとしては怪しすぎて、どこで裏切るのかなーって思ったよ。敵につかなかったからいいんじゃない?」
「梟雄と裏切りは付き物でござる。有能だからこそ裏切る、ならばそれを飲み込めればこれほど大きなものはなし」
「全部片付いた後に裏切るあたり、これほど気を使った裏切りもなかなかないですわ」
「肉国に影響が出ないタイミングを見計らっての裏切りですからね」
ゴブリン博士が怪しすぎて、裏切るのが予想内過ぎたことが大きい。日頃の行いって大事だよね! 普段からやらかすけど憎めない馬鹿とかいるし!
「クックック、皆様ありがとうございます。これよりは更に怪しく、隙あらば裏切る形を狙って行きます」
「「「「それはやめて」」」」
こうして俺達は一致団結した。島の全土を掌握して農地改革を進めて、大量のEPや魔物を増やしていく。そして……四年の月日が経った。
以前の砦の造りを参考に造り上げた城――肉城――その玉座の間にて、俺は玉座に座っていた。隣の椅子にはミアが座っている。
「クックック、ミア様ご懐妊でございます」
俺達の前で跪くゴブリン博士が下卑た笑みで告げてくる。
俺とミアは結婚することになった。魔王と配下の魔物の関係でありながら、夫と妻の関係にもなったのだ。彼女の猛烈なアタック(物理)に負けて、年貢の納め時となったのだ。俺は王なのに。
「おめでとうブモー」
「お祭りして欲しいブモー」
「豊作収穫祈願祭ブモー」
「出産を収穫と言わないでよ!?」
そして王城であろうが当然の権利のように出没しているブーモが、いつものように楽しそうに笑っていた。ミアは真っ赤になって怒っているいつもの光景であった。
この幸せがいつまでも続けば……。
「大変でござる。外大陸から敵が攻めて来たでござる」
「空と海からの進撃ですわ! いかがいたしましょうか?」
「ご指示を」
マサムネやアイーネ、マーメイドが玉座の間に入ってきた。
やはり来たか。獣王はこの島の数年以内の統一を狙っていた。それはセコイ手を使ってはいたものの、外の大陸に対抗するという点は嘘ではなかった。
この島は狙われているのだ。だがまあ……やることはこれまでと変わらない。
「そうか。なら新生肉国の力を見せてやれ! マーメイド、海を割れ! 空は対空機銃にて撃滅しろ!」
「承知!」
「外の魔王に見せてやれ! 肉国の力を!」
俺達は今後も強敵と戦うことになるのだろう。だがきっと負けないはずだ、雨降って地固まった後の俺達ならば……。
「あ、ちなみに言い忘れておりましたが。他大陸の土地はこの島の百倍以上ありまして、隣の大陸も二十倍はあります。当然戦力もそれに応じた数ですので」
「ふざけんな!? 結局また俺達が小国の立場じゃないか!?」
「クックック、まだまだジャイアントキリングは続ける必要がありますな」
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これにて完結です!
続きを書こうと思えば全然続けられる形ですが、結構綺麗に終われたのではと思っております。
元々この作品はカクヨムコン8用に投稿しているので、まだまだ話も広げられる感じで終わりました。ワンチャン賞をとって書籍化来ないものか……ブーモをマスコットキャラにすれば受けるはず(?)。
最後なのでふたつほどお願いがございます。
この作品はひとまず完結ですが、私は他作品も投稿しておりますので見て頂けると嬉しいです!
それと新作を投稿しているのでよろしければ。
『吸血鬼に転生しましたが、元人間なので固有の弱点消えました。贅沢したいので攻めてくる敵軍に無双しつつ領地経営します! ~にんにく? ガーリックステーキ美味しいですが何か?~』
https://kakuyomu.jp/works/16817330652228877397
二つ目。完結しましたこの作品に★やフォローを頂けると嬉しいです!
完結まで見て頂きありがとうございました!
異世界転移したら魔王にされたので、人の頭脳を持った魔物を召喚して無双する ~人間の知能高すぎるだろ、内政に武芸にチートじゃん~ 純クロン@『努力家な転生第六王子』発売中 @clon
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