グルマンとチェリーパイ2(0:0:2)

【諸注意等】


生配信等での使用は可。その際、リンクの明記をお願い致します。

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アドリブ、細部の改変、性別の変更などは可能です。



【本作の読み方】


・ダークな作品ですので、苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

・「」外は状況の説明ですので読まなくて結構です。演技のプランニングやSE等の参考にお使い下さい。

片仮名の名前ばかりです。

・台詞の偏りがあります。

・台本中では各役を以下のように表します。


ビスケット→ビスケ


ティラミス→ティラ





【登場人物】

役表

ビスケット 不問:

ティラミス 不問:



ビスケット 不問

教師であった。産まれはこの村。ブラウニーとして生活している。

実は素は赤髪で、毎度街まで行って黒く染めている。



ティラミス 不問

村を囲む森の中に住んでいる。容姿は歳の割に幼く見える。ビスケットにブラウニーを重ねている。

赤い色を見るとブラウニーが死んだ日と、守れなかった約束を思い出す。



(ブラウニー 男)

ティラミスの弟。作中台詞はない。




【本文】



ティラミスの家。数年前は綺麗に飾り付けれられていたリビングとそこに一体となっているキッチン。割れた窓から雨が吹き込んでいる。



ティラ「雨だね。ブラウニー。」


ビスケ「うん。そうだね。」


ティラ「最近怖い夢を見るんだ。」


ビスケ「怖い夢?」


ティラ「ブラウニーの頭が割れて、中から赤い汁が出てきて……」


ビスケ「……そうですか。」


ティラ「ブラウニー?どうして敬語を使うの。」


ビスケ「ああ、いや。そうなんだ。それは怖いね。」


ティラ「ああ、ブラウニー。なんだかすっごく不安なんだ。お前がまるで他人のように見えるときがある。本当に戻ってきてくれたんだよね?ブラウニー?」


ビスケ「そう……そうだよ。私……僕は戻ってきたよ。ティラミスの為に。」


ティラ「もう、どこにも行かないね?」


ビスケ「うん。もうどこにも行かないよ。ティラミス、君が私を見てくれなくても。私はずっと君を殺させやしない。」


ティラ「ブラウニー、やっぱり変だ。」


ビスケ「あ、ああ。ごめんね。僕、ちゃんとブラウニーだから。」




雨音。




ティラ「あ……あ、あ、」


ビスケ「どうしたの?」


ティラ「やっぱりお前は幽霊なの?ごめん、ごめんね、許して……!」


ビスケ「え?」


ティラ「だって頭が赤いんだ。」


ビスケ「ああ……大丈夫だよ、ティラミス。」


ティラ「ごめんね、ごめんね。」


ビスケ「……。僕、ちょっと出かけてくるよ。」


ティラ「どこへ?だめ、行かないで。それか、ついていくよ。」


ビスケ「それは困るよ。」


ティラ「どうして?」


ビスケ「どうしてって……」


ティラ「隠し事?」


ビスケ「ち、ちがう。髪を切りに行くんだ。」


ティラ「じゃあついていくよ。」


ビスケ「それは駄目です!」


ティラ「どうして!」


ビスケ「もしティラミスがグルマンだってバレたら殺される!」


ティラ「何を言っているの?」


ビスケ「……本当は解っているんでしょう?自分に潜む凶暴性も、自分がシュクレを殺したことも。」


ティラ「何を言っているのかよくわからない!」


ビスケ「わかっているから声が大きくなるんです!覚えているんでしょう?私がブラウニーじゃないことも、私を殺そうとしたことも!」


ティラ「ああああ!わかんないったらわかんない!なんでそんなこと言うの!」


ビスケ「少なくとも、今の貴方は解っている。昨日までとは違う。昨日までは私をブラウニーだと信じていた。だが今日は、ちがう。」


ティラ「意地悪言わないで。」


ビスケ「私をビスケットだと解っていて、繋ぎ止めようとしている。」





雨が強くなる。





ティラ「ビスケット……。」


ビスケ「なんでしょう。」


ティラ「時々こういう時が来るんだ。とても冷静なとき。全部が見えるとき。自分が弟との思い出に縋りついていて、弟を取り返したくて何人も人を襲ったのがわかる時。そんなことしても駄目なのにってわかる時が。」


ビスケ「やはり、そうでしたか。」


ティラ「ごめんね、酷いことしたよね。昔。ビスケットがこの村に戻ってきてすぐに、殺そうとした。」


ビスケ「ええ。もういいんですよ。思い出すだけで辛いですけれど、貴方はそれで弟を取り戻せると信じていたんですから。」


ティラ「許してくれるの?」


ビスケ「そうですね……許すとは違うかもしれません。諦めています、あなたを憎むことを。」


ティラ「そう……」


ビスケ「ええ。私は貴方と、村の人々を守るためにここに居るんです。安心して過ごしていていいんですよ。」


ティラ「シュクレの事も。ごめんね。ビスケットがシュクレのお墓を作ってくれたんでしょ?自分の教え子の真っ二つになった死体を埋めるのは、すっごく嫌だっただろうに。」


ビスケ「ええ。この手が彼女の血に触れたとき、力が入らなくなりました。涙も出ました。けれどもういいのです。次の犠牲者は出させやしませんから。」


ティラ「ビスケット。頭が赤いのは幻覚なんかじゃないんだよね?きっと。」


ビスケ「ええ、これは私の本来の髪の色です。」


ティラ「そう……。もし、またビスケットを襲っちゃったら、殺してくれる?」


ビスケ「嫌です。」


ティラ「そっか……」


ビスケ「はい。」


ティラ「でも明日襲っちゃうかも。わけわかんなくなるんだ、赤を見ると。これでブラウニーに会えるって思って……ビスケットをブラウニーにしたのにね。おっかしい。あはは……。」


ビスケ「髪や眉は染めればいいのです。」


ティラ「でも街まで行かないと染められないでしょう?そしたら丸一日以上ビスケットがいない事になる。その間、怖いんだ。また人を殺すかも。」


ビスケ「なる程……。」


ティラ「だからさ、目を、潰してほしいんだ。」


ビスケ「え?」


ティラ「そうすれば一生赤を見なくてすむでしょう?ただの能天気で頭の弱い人でいられる。そうすればこんな森の中に住まなくてもいいんだ。」


ビスケ「急に何を言い出すんです?」


ティラ「ビスケットは先生なんでしょ?自分が普通になれば、ビスケットは先生に戻れるんでしょ?」


ビスケ「え、ええ……。そうかもしれませんが。私にはそんな事……私は貴方が大事なんです、ティラミス。目を潰すなんてそんな酷いことできません。」


ティラ「どっちが酷いかな?」


ビスケ「え?」


ティラ「人殺しの罪を重ねさせることと、目を潰すこと。人を殺すとね、死にたくなるほど嫌な気持ちになるんだよ。」


ビスケ「……解りました。貴方がそこまで言うならやりましょう。本当にいいんですね?」


ティラ「うん。」


ビスケ「貴方が怖くないように、寝ている間にやりましょう。貴方が痛くないように、できるだけ速やかに。」


ティラ「ありがとう、ビスケット。大好きだよ。」


ビスケ「私も貴方が大切です。ティラミス。」




日が沈む。雨は延々降り続いている。




ビスケ「嗚呼、神なんていないのかもしれませんが。もし居るならお許しください。友人の目を潰すことを。どうか、痛み無く視力を奪えますように。」


ビスケ「ごめんね、ティラミス。私の知恵がないばっかりに。もっといい方法が思い浮かばなくて。」


ティラ「ぎゃっ!」


ビスケ「っ、もう片方……」


ティラ「ああ"っ!!」




日が昇ったか視認できないほど曇っている。

薄暗い朝、目に包帯を巻いたティラミスは手探りでビスケットに寄っていく。




ティラ「痛いよ、ブラウニー。怖い、暗いよ。」


ビスケ「おはようございます。ティラミス。」


ティラ「どうして敬語なの?ブラウニー。」


ビスケ「やはり今日はそっちでしたか……。ごめんね、ティラミス。ちょっとふざけただけだよ。」


ティラ「怖い夢を見たんだ。」


ビスケ「どうしたの?」


ティラ「頭から血を流した人が、ごめんねって謝りながら目にナイフを刺してきて、そしたら本当に目が見えなくなっちゃったんだ。」


ビスケ「それは怖かったね。でも大丈夫。ずっと僕がついているから。」


ティラ「もうずっと何も見えないのかな?」


ビスケ「見えないままでいいんだよ。生きてさえいてくれれば。」


ティラ「どうしてそんなに普通なの?どうしてびっくりしないの?どうして?」


ビスケ「僕まで慌てちゃったらティラミスも不安になるでしょ?」


ティラ「もしかして、ブラウニー。許してくれてないの?チェリーパイを作らなかったこと。」


ビスケ「チェリーパイなら一緒に作ったでしょ。大きなチェリーを真っ二つにして。」


ティラ「じゃあ、どうして?」


ビスケ「痛い思いをさせたのは僕じゃないよ。だって僕はティラミスの事大好きだもん。そんなことするはずないでしょ。」


ティラ「じゃあ誰が……」


ビスケ「きっと神様が、僕達がもう二度と離れないようにしてくれたんだよ。ティラミスの目は僕が補うよ。」


ティラ「そんな話、信じると思う?」


ビスケ「……思わないけど。憎むなら、僕じゃなくて違う人にしてほしいな。例えば……」


ティラ「ビスケット、とか?あはは、騙された!」


ビスケ「え、え?」


ティラ「本当は全部覚えてるよ、昨日のこと。」


ビスケ「なんだ、どうしようかと思いましたよ。」


ティラ「ずっと昔から目が見えない事にしよう。」


ビスケ「え?」


ティラ「もし明日、本当にこうなっちゃったら。何を言っているの?ティラミス。昔から目は見えないでしょ?って。そうすれば納得するかも。」


ビスケ「納得しますかね?」


ティラ「するする、もう一人のティラミスは馬鹿だから。」


ビスケ「そう、かもしれませんね。」


ティラ「さ、村に降りよう。シュクレはグルマンに襲われた。ビスケットはそれが認められなくてなかなか森から出られなかった。」


ビスケ「けどやっと正気に戻ってそれを伝えに村に?そんなこと言ったってみんな信じてくれますかね?」


ティラ「ようやくビスケットはグルマンを見つけて倒した。そしてグルマンに捕まってたティラミスを助けた。」


ビスケ「本当にそれで済みますか?」


ティラ「全部本当の事だもの。ビスケットが自分をティラミスから解き放ってくれたんだ。それに、だめなら一緒に逃げよう!だって目になってくれるんでしょ?二人で一つ。二人でいればなんとかなるよ。」


ビスケ「ティラミスは昔から変わりませんね。」


ティラ「えへへ、そうでしょ?ビスケも、自分のことが大好きな所、本当に変わらないね。」


ビスケ「あはは、なんだか照れくさいですね。」






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【6人台本】【2人台本】グルマンとチェリーパイ(1:3:2)(0:0:2) しんえん君 @shinokunn

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