第16話


 俺は弁護士と一緒に、刑務所長室に呼び出された。部屋に入ると、所長はすぐに立ち上がりながら、背筋をピンと伸ばした。さらに、俺の顔を真っ直ぐに見て、敬礼し「大友さん、あなたの申し立てが受理されました。刑務所内に、お引止めする理由がなくなりました。あなたは、晴れて自由の身となれます。入所時にお預かりした私物はすべてお返しできます」と、淡々とした口調で告げた。刑務所長の目は、涙ぐんで見えた。

 入所中に見かけた刑務所長は無表情で、仏陀のように落ち着き払い、物事に動じない人物に見えていた。目の前の所長の視線は、温かみに満ちていたが弱気にも映った。

 供されたコーヒーは、砂糖やミルクなしで飲むと苦く、消し炭の味がした。俺はコーヒーに渋々口をつけながらも、心の中は甘い香りで満たされていた。俺は、疑いを晴らした上で、努力次第で自己実現できる世界へ舞い戻れるのが何よりも嬉しかった。今まで受けたどんな栄誉よりも、幸福を感じていた。

 冤罪が証明され、刑務所を出所できる日が来た。刑務官たちは全員並んで俺を見送ってくれた。刑務所長は「あなたへの非礼を何とお詫びすればいいのか言葉が見当たりません」と声にすると、深々と頭を下げていた。刑務所の桜は、すべての葉を地面に落としていた。

 俺は左腕に、ハリー・ウインストンの腕時計をつけると、画家としての自信を再び取り戻せそうな気がしてきた。

 十一月一日は愛すべき亜美の誕生日でもあった。肌寒い日だったものの、俺の心の中は温かさで満たされていた。胸いっぱいに息を吸うと、冷たい空気が肺の中に入って来た。晴れた空に鱗雲が浮かんでいた。

 刑務所の門をくぐると、報道陣が押し寄せており、乱暴なまでにバシバシとフラッシュがたかれた。マイクを手にしたテレビ局の記者が「今の心境をお聞かせください」「誰に思いを伝えたいですか」と、月並みな質問を矢継ぎ早に重ねてきた。

 俺は報道陣に「適当に書いといてくれ」と告げると、荷物を抱えて足早に通り過ぎた。綾香がこちらに向かって手招きしていた。

「お兄ちゃんに、最高のプレゼントがあるの」と、綾香が手で合図を送ると、フェアレディ・Zのドアが開き、中から亜美が下りて、俺の方に近づいてきた。思わず、息を飲んだ。

 亜美は、途方もなく美しかった。モカ・ベージュ色のニットのセーターに、ツイードのスカートを穿き、髪は後ろに束ねている。身体のラインは、サラブレッドを思わせる優雅な曲線が見事だった。

 俺が顔をじっと見ると、亜美は冗談っぽく「おつとめ、ご苦労さん」と、言葉にして笑った。

「やっと囚人服を着なくて済むので、ほっとしている。でも、ちょっと残念かな? 有名モデルさんとしては、どう思う?」

「割と、あなたの顔立ちに似合っていた」

 二人の会話に割り込んで、綾香は「悪いけど、早く乗って……。また、あいつらに追いつかれると、発車できなくなる」と、振り返りながら報道陣の位置を顎で示した。

 綾香が随分と逞しくなったのに気づかされた。荷物をトランクに置き、亜美は助手席に綾香は気を利かせて後部座席に乗り込んだ。俺は、綾香と交代しフェアレディ・Zの運転席に座ると、アクセルをふかした。クルマはスピードを維持したまま横道を真っ直ぐに走っていたが、次の信号に着いた時に停止し、青が点灯したタイミングで右に曲がった。

 道端のすすきが風に吹かれて揺れているのが、俺の目には情趣ある光景に見えていた。雑草の生い茂る河川敷まで、絵心を呼び覚ます素晴らしい情景として、俺の目には映じていた。しばらく走行し、横浜・ベイ・ブリッジを渡るときに山下公園や、港の見える丘公園や、みなとみらい21のランドマーク・タワーが見えると、懐かしい感触が蘇って来た。山下公園の銀杏並木は色づき、歩道には落ち葉が広がっていた。

 クルマはやがて、ビルや商店の立ち並ぶ街の目抜き通りを進んでいった。レストラン、ハンバーガー・ショップ、DVD・レンタル店、焼肉屋、居酒屋、喫茶店、パチンコ店、ラブ・ホテル、ショッピング・モール等々……。どの建物の周辺にも、大勢の人たちが蠢き、今という時間の贈り物を満喫しているのが観察できた。俺の目の前には、素晴らしい視界が開け、地獄の呪縛は消え失せていた。

 街は豊かな色彩と、様々な匂いと、人が集う活気で溢れていた。至る所で年頃の女の子たちは、弾ける笑顔で歓談していた。クルマの窓を開けて見る世界は、以前と同様に柔らかな日差しと微風で輝かしくも心地良かった。

 オニヤンマは一万個の個眼を使って世界を見渡し、コウモリは口から発する超音波で距離をはかり飛行する。犬が観測する世界は、聴覚と嗅覚が主体の世界だ。俺は同様に、服役中は囚人のリアルを経験していたに過ぎなかった。

 人の目には、世界は三次元の空間に閉ざされて見えているが、膨大な多次元世界を切り取って眺めているに過ぎない。俺は、世界の広がりを実感し、可能性こそが芸術の創造の種子であり、それを芽吹かせて育てるのが使命だと考えていた。

 自宅に戻ると、家の前の花壇は荒らされ、玄関ポーチはひん曲がり、外壁のいたるところに「殺人犯の家」「この町から消え失せろ」「悪魔に魂を売り渡すな」などの落書きがされていた。刑務所の中だけではなく、外でも凄まじい戦いの痕跡が見て取れた。

「画家の家に、へたくそが落書きするとは思わなかったよ。バンクシーなら、もっと洗練された落書きを残してくれただろう」

「結構、たいへんだったのよ」

「金は十分にあった。修繕しなかったのか?」

「最初の内はそうしたけど……、同じ繰り返しになるから、無実が証明されて兄貴が家に戻るまで、このままにしておいた。引っ越しも考えたけど……、それは何も悪い事をしていない私たちの敗北になると思ったの」

 俺は、刑務所に入所している間に、綾香の周辺で凄まじい現実が展開しているのを知って愕然とした。妹がこの家を必死に守ろうとした証にも思えた。

 無実が証明された後も、落書きした連中からは詫びの言葉はなく、まして汚れを落とすのに協力を申し出るものなど、皆無だった。群衆は、熱狂を大義と勘違いし、水に落ちた犬を叩きのめす快感のために時間を費やすが、後には何一つまともなものが残らない。俺は、群集心理の愚かさと悲哀を嫌と言うほど、味わっていた。

 だが、俺は無実を証明されていたので、将来不安を感じなかった。多くの支援者のお陰で煉獄の中にいて、何とか正気を維持し生きながらえてきた。喜びで街中がばら色に見え、画家として声明を馳せていた時期と同じ歓喜が、胸の内に蘇っていた。

 久しぶりにアトリエに入ると、描きかけの油絵や、個展への出品を見送った水彩画、デッサンなどが、あちらこちらの壁に立てかけていたのが目についた。さながら、色紙をでたらめにばら撒いたかのような無秩序な空間がそこにあるかに思えた。お気に入りの空間が、俺には初めて俗悪なものに見えた。それでいて、思い出深いものばかりだった。

 アトリエに入る前は、蜘蛛が巣を張り巡らし、埃だらけの光景を思い浮かべていたが、綾香がマメに掃除をしてくれていたので、入所前と変化がなかった。

 奴隷の手かせ、足かせを解かれて、自由の身となった自分が、無敵の存在のごとく感じられた。刑務所暮らしで、四六時中監視されていたので、ストレスによる精神的ダメージが気になった。俺は、以前と変わらない天才画家なのか――と、自分に懐疑的になった。

 庭のハナミズキの樹上で、ムクドリが「キュルキュル」と鳴いていた。青空、綺麗な花、小鳥の歌声が生活にしっとりとした潤いを感じさせた。平穏な日常が戻ると、今まで当たり前に思えていた生活が天国に変化していた。刑務所を出て二週間が経過した日曜日に、意外な人物が訪ねてきた。その日は、綾香は朝からそわそわしていた。

 俺は、玄関に火野刑事が立っているのを見つけると――事件はまだ終わっていなかったのか――と、不快な感じがしていた。手にはデパートの紙袋を提げていた。

「今日は、別件でお伺いしました」火野刑事は紙袋から、菓子箱を取り出すと綾香に手渡した。

「まだ、何かあるのか? 俺は警察のせいでひどい目にあった。横暴は許せないからな」俺が語気を荒げると、火野刑事はみっともなく見えるほど、頭をぺこぺこと下げていた。

「あの事件で、私の上司の深沢刑事は左遷されました」

「火野さん、あなたはどうだったのですか?」

「私は、深沢刑事の強引な捜査手法に反発し、たびたび警察署長に相談していました。私には、大友さんが犯人だとは、思えませんでした。正直言って、深沢刑事の意見ばかり採用されていたので、私の首筋は寒くなっていました」

 綾香は三人分の紅茶と、火野刑事が持参したマカロンをテーブルに並べた。マカロンには、ガナッシュがたっぷり入っていて、食感も素晴らしかった。ティー・カップに口をつけると、ダージリンの香味が俺の鼻粘膜をくすぐった。紅茶を飲みながら、しばらく三人で歓談していた。俺が様子を見ていると、火野刑事が椅子から腰を浮かし、真剣な表情で身を乗り出した。

「大友さん、あなたに譲って欲しいものがあります」火野刑事は、俺の顔を真っ直ぐに見つめて懇願した。

「何でしょう?」

「妖精の姿をした彫刻を私にお譲りいただきたいのです。あれは、綾香さんがモデルだとお聞きしています。それと、アトリエの入り口にあった裸婦画も欲しいです」

「どういう魂胆だ?」

「私たちの新居に飾るのよ」横から綾香が割って入ると、言葉を付け足した。

「お前たち、そんな仲になっていたのか?」

「いったい誰が、兄貴の冤罪を晴らすのに、協力してくれたと思っているの?」

「火野刑事が……?」

「兄貴の無実を信じて、私たちに協力してくれていたの」

「私にとっては、クビを覚悟した大きな賭けでした」

「敵を欺くには、味方からって言うでしょ? 兄貴には、火野さんとの交際の件や、内部情報を教えてもらっていたのは、内緒にしていたの」

「大友さんの無罪が確定した日に、私は綾香さんにプロポーズしました」

「勿論、私は火野さんの申し出をお受けした。当たり前でしょ?」

「おいおい、俺は許可していないぞ」

 俺は親友二人を失い、裏切られたショックで人間不信に陥っても、不思議ではない状況だった。だが、妹や恋人の他にも大勢の人たちに支えられているのを実感していた。

 逮捕と同時に棚上げされていた『大友小六画集 Romanesque』が、芦原美術出版から初版一万部で発売する予定が決まると、早くも予約が殺到し、再版が決定した。マスコミは――悲劇の天才画家――と題して、特集を組んだ。週刊誌の人気記事になるとともに、テレビのお昼のワイド・ショーでは連日のごとく取り上げられ――大友小六――の氏名は、美術ファン以外の人間にも幅広く知られた。

 坊主頭だった俺の髪は、肩まで伸びていた。今なら芸術家の感性で、花一輪に内在する至福を――存分に感じた。さらに、芸術的価値に勝る美的価値をあらゆる所に見つけていた。風の香りや、光の色合い、街並みの素晴らしさ等々、すべてが輝きを宿していた。俺は安全な場所に居て、誰かに責め立てられたり、不自由を強要されたりしない生活を送っていた。

 毎日、ベッドの上で薄眼を開けて身体を横たえたまま、半開きのカーテンの隙間から入ってくる淡い日差しと温もりを心地良く感じながら、時間を過ごした。未来への期待感が心を震わせる衝動として蘇り、かつて味わっていた甘美な気持ちと陶酔が、身近なところにあった。

 目覚めると同時に、自分はいったいどこにいるのか――と、頭の中が混乱し、身体を起こしてカーテンを引いた。外の景色は、実に明るかった。ゆりかごに揺られて見守られているような静かな満足感が俺を満たしていた。

 俺は、顔を洗うのにも髭剃りにも、以前よりも入念になった。リビング・ルームにいてソファーに腰を下ろし、エア・コンから流れ出る空気感を味わうのが、気持ちを豊かにしてくれた。

――世間――という魔物は、敵にも味方にもなる不可思議な存在だった。それ故、二度と敵に回したくはなかった。しかしながら、方々で話題になったお陰で、定価三千円の画集は、かなりの売上伸長が見込めた。

       ※

 日曜日の午後、俺は亜美と一緒に、妹夫婦の新居を訪ねた。家屋からは、新築特有の建材の匂いが漂っていた。ビニール・クロス、床のワックス、合板から放つ揮発性有機化合物の匂いが、俺には新しい希望を象徴しているかに思えた。窓からは明るい日差しが入り、空調機器が静かな音を立てていた。

「お兄さん、どうぞ腰かけてください」義弟となった火野刑事が、俺に席をすすめた。

「三歳年上の火野刑事から、お兄さんと呼ばれる日が来るとは思いませんでした」

「どうお呼びすれば、良いのでしょう?」

「今まで通り、大友さん、火野さんとお互いを呼び合えば良いでしょう」

「じゃあ、大友さん、今後ともよろしくお願いします」

「火野さん、こちらこそ、よろしく……」

 俺は、他愛ない会話の中にくすぐったい感触と、幸福を感じていた。正直なところ、家に妹がいなくなってから、生活全般に不便を感じ始めていた。だが、二人の暮らしぶりは、俺の心を豊かにしてくれた。

 妹夫婦の仲睦まじい姿を見て、亜美にプロポーズする決心をした。自宅のアトリエには、イーゼルが立てられ、机の上には鉛筆、ペン、絵筆、消しゴム、スケッチブック、パレット、油壷、定規などの画材が置かれていた。かつては見慣れた光景が、今では数百倍の喜びになっていた。絵の具の付いたぼろきれ一つにも、愛着があった。

 隣室の書斎に移ると、ミケランジェロの『語録』を手に取り、アンダーラインが引いてある「真の芸術作品は神の賦与する完成の影にほかならない」の言葉に目を走らせた。今の自分には――神の賦与する完成の影――を描けるのを確信した。皮肉にも、苦悩の経験が神を身近に感じさせ、世界の美しさに気付かせてくれていた。

 画家にとって至福の時間とは、まったく対象と一つになってしまえる時間だった。対象と等しく思える感情を持つ構えで、絵や彫刻を描く時に、対象の持つ本質に鋭く迫る――と、俺は考えていた。精密に対象を観察しつつも、内面に脈打つ情熱を投影するのが画家の本業――と、言えた。

 絵筆を手に取ると、懐かしい感触が蘇って来た。刑務所で、西山大膳に教わった通りに実践してきた俺の才能は鈍ってはいなかった。絵を描き続け、画商や美術愛好家の信用を取り戻すと、確実に収入も増えてきた。

 画壇に返り咲き、再び注目された俺は――悲劇の天才画家――と呼ばれて、以前にも増して人気を博していた。もっとも本業の絵画や彫刻よりも、テレビ出演や体験記の原稿執筆、週刊誌の取材対応などが増えて、落ち着く時間がなくなっていた。

 気が付けば……、手段を考え、目標を見定めても――どんな目的で、何のためにするのか――という思いなしに、俺は生きられなくなっていた。やっと今になって、愛のため、幸福のため、遊ぶため、夢を実現するため等々……目的意識が重奏し、深層部分で響き合い、絶妙なハーモニーとなっていた。

 自由で愉快な生活が、俺の元に戻って来た。鼻歌を口ずさんだり、ショッピングに出かけたり、思索に耽ったり、一人で家の近所を散歩したりした。他人の視線が、恐怖すべきものではなくなっていた。

 黄金色に輝くよく晴れた朝、亜美を誘って海沿いの街をドライブした。太陽も青空も白い雲も俺の味方だった。俺は亜美にプロポーズするとしたら、どんな言葉が良いか考え続けてきた。

「私から、あなたにプロポーズしちゃっていいかな?」

「えっ?」亜美に先制パンチをまともに食らい驚いた。

「だって、あなたからは言いにくいでしょ?」

「ダメだよ。プロポーズは神代の昔から、男からするものと決まっている」

「古いのね」

「国生みの神話は、知っているかな?」

「伊弉諾、伊弉冉の話よね」

「古事記によると――天の浮橋から矛で大海をかきまわし、滴からできた於能碁呂島で夫婦の交りをし,大八洲国と万物および支配神を産んだ――と、書かれている」

「それと、どう関係があるの?」

「ようするに、男女が交わるときに、女神の伊弉冉が――しましょうよ――と呼びかけてもうまくいかず、男神の伊弉諾が――やろう――と呼びかけてうまく行った。夫唱婦随の語源にもなっている。だから、日本ではプロポーズも男からした方がうまく行く」

「こじつけじゃないの?」

「男と女は、神代の昔から凸凹コンビだった。凸凹のパズルを完成させると、新しいものを生み出す絶大なパワーになる」

「それが、言いたかったのね」亜美は、呆れたような顔をしていた。表情からは、諧謔を笑おうとする意図も読み取れた。

「……」最高の言葉で思いを伝えたかったので、考えるのに時間をかけた。

 俺は、愛や自由の価値を空気や水と同様に、望めば得られると思い続けていた。だが、皮肉にも塀の中に拘束され、愛も自由もない世界を経験したので、真価を思い知った。何不自由のない暮らしの中では、自分が幸福であるのにも気づかなかった。今、俺の前には自由があり、愛があった。

「じゃあ、あなたの言葉を待てばいいのね」亜美は、俺の瞳の奥に真実が内在しているかどうかを確認するふうな表情で、じっと見ていた。

「そうだ」

 フェアレディ・Zを駐車場に停車した。俺はクルマの中で震えていた。真っ直ぐな視線を向けている亜美の甘い笑顔に触れて、歓喜に震えていた。俺は、思いを伝えるために亜美の肩を力強く抱き寄せた。さらに、彼女の髪に手を添えると、自分の唇を亜美の唇に軽く押し当てた。

「君こそが俺の人生で最高の宝物だ。全部好きだから、亜美のすべてをまるごと俺の物にしたい」

「どう答えたら、良いの?」

「ずっと俺と暮らし、温かい家庭を築いても良ければYES、嫌ならNOだ」

「勿論、YESよ」

「それでこそ、俺たちの王国を築けるよ」

 俺は、不条理な苦労を経験したので人間が一回り大きくなった気がしていた。二人で宝石店に出向くと、三カラットのダイヤモンドの指輪を求めた。感謝の意を込めて、亜美の指にダイヤの指輪をそっと嵌めた。

 物語には始まりがあり、終わりがある。俺の人生には、まだまだ続きがある。俺は――死――という、究極のゴール地点を目指して歩き続けているのではなく、画家・大友小六の人生を全うしたいと念じている。そうすれば、俺が死んでも、自分が理想としてきたものを次世代に継承できると信じている。

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ダーク・ナイト 美池蘭十郎 @intel0120977121

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