運転練習
「で。半クラッチで3秒待つと、音。変わるだろ?そこでサイドブレーキを下げる。」
オミトが持っている車の1台を貸してもらい、運転練習をしている。
「えっと、半クラッチにしてから下げる?」
「うわっ!」
坂道から車がゆっくりと、後ろに下がった。
慌ててクラッチを踏んでブレーキをかける。
「音変わってからじゃないと……、今みたいに下がるよ?」
マニュアル車の坂道発進の難しさを感じていた。
「……何で私が練習してるの?」
「車、乗れるようになったほうが良いかなって。」
いきなり朝に『運転したことある?』と聞かれて首を横に振ったら、山奥に連れてこられた。
そしてそこから数時間、車の動かし方を教えてもらってる。
坂道を何とか登り切り、曲がろうとした。
「うわっ。」
車がガタッと揺れて、急停車する。
「エンストだね。」
私はため息をついてエンジンをかけ直して、また発進した。
「何でこんなことを……。」
どうやら私には運転は厳しいようだ。
「最近は色んな車があるけど、基本的なことはできたほうがいい。」
オミトにしては珍しく私の意見を聞かない。
『運転ができるようになるまで返さない』というプレッシャーを感じる。
自動車学校に行ったことがないから知らないけど、もしかして詰め込み教育されてる?
もっと時間をかけてゆっくりやるものじゃない?
「とりあえず、森の中をドライブしようか。」
オミトのいう通り、誰も歩かない道をゆっくり走る。
いつもはオミトが運転してくれるので気がつかなかったが、ここら辺はデコボコして走りにくい。
そして見通しも悪い。
「はぁ。」
軽自動車ならちょっとはやりやすかったのかな?
そうはいいつつもちょっとは慣れてきたのか、少しはスムーズに運転できるようになった。
「そういえば、シュノはこの夏やりたいことある?」
「えっ?夏……?」
最近は、旅行にも行ったし遊園地も行った。
「海水浴……とか?」
海は行ったことがない。
でも、水着持ってないな。
「あ、BBQ。私人生でやってみたいことの1つかも。ーー実家のときは呼んでもらえなかったし!」
実家のとき、BBQパーティーのようなことをしていた気がする。
私は呼ばれたことがないのでよくわからないが、高そうな牛肉や大きな海老を焼いていたと思う。
あと肉の塊をナイフで削いで食べていた。
憧れはある。
「まあ、やったことはないか。」
「乗り気じゃない?」
「んー。」
オミトは少し考えこんで。
「昔、BBQやったあとに和琴と伊緒奈が殺されかけたから俺と久遠トラウマかも。」
「……ごめん。」
和琴は多分、オミトにとっては今でも大事な人だ。久遠にとっての伊緒奈のように。
「じゃあ他のことする?」
「いや、いいよ。やろう。ーーたまにはいいだろ。」
力なく笑っていた。
「きっと、シュノとなら多分楽しいよ。」
ツナ缶のプルタブ 日奈久 @aishifrom
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