電車にウンコが落ちていた。しかも踏んだかもしれない
をれっと
第1話
電車にウンコのようなものが落ちていた。しかも、踏んだかもしれない。
午後8時5分、私が友達二人と帰っていた時だった。ウンコのようなものに気がついたのは、友人Kであった。
そこにあったウンコのようなものは、誰かに踏まれたことがあるのか、靴の裏についたウンコを床になすりつけたような跡があった。私はその筆跡を踏んでいた。
Kに言われて気がつき、そっと靴の裏を確認してみると、そこにはすこーしだけ茶色いものがついていた。これはウンコだろうか。普段靴の裏なんぞ見ないので、これがウンコのようなものを踏んでついたものなのか、元からついていたものなのか判別がつかない。
私たちは足早にウンコの落ちている優先座席付近から遠ざかり、一つ隣のドアのすこし広いところに移動した。
私はもう一度足の裏を確認した。やはり茶色い塗料のようなものがついている。しかし、これがウンコだと断定はできない……いや、ここまで綺麗な茶色がつくことはなかなかない。少なくともウンコのようなものの筆跡を踏んでついたものだ。
いや、ウンコを踏んでしまったと断定するのはまだ早い。優先座席付近に落ちていたものがウンコでない可能性を考えよう。
他に茶色いものといえばチョコレート、カレー。その程度だろうか。しかし、あんな茶色でぶつぶつした円柱型を捻り出したようなチョコレートは存在しない。カレーならもっと固形か液体かであるはずだ。
やはりウンコである。あれはやはりウンコ・イン・ザ・トレインなのだ。
ウンコであるとして、犬のフンである可能性はないだろうか。人間のウンコを踏んだことさえ今まで一度もないが、犬のフンを踏んだことは一度ある。犬のフンであれば、まだ私は平静を保っていられる。
いや、今は午後8時だぞ?犬の散歩をしてから電車に乗るにはあまりにも時間が遅い。犬は電車に乗れない。やはり犬のフン説はありえないか…
やはりアレは人間のウンコである。私は今日初めて、人間のウンコを踏んでしまったのだ。
いや、まだ女性のウンコであれば許そうじゃないか。男性のウンコがあんなところに落ちているはずがないじゃないか。男は大抵ズボンを履いている。パンツも多少丈のあるものを履いている。
ショーツであれば、ウンコを漏らして横からこぼれ落ち、スカートを駆け抜け、綺麗なままの形で。いや、綺麗な形のままで優先座席付近に降り立つと言うことも可能である。
………いや、そんなブカブカのショーツ履いてる女性が存在しているのか?いや、むしろノーパンだった場合を考えようじゃないか。そうだ、あれはノーパン変態女子が羞恥のあまり漏らしたウンコだったのだ。
私はノーパン変態女子のウンコを踏んだのだ。
……やっぱり最悪じゃないか!
「お前運がいいはずなのにな」
ケタケタといつも通り腹の立つ顔で笑う友人Z。こいつ、一回殴ってやろうか。
その瞬間、Kが前に抱えたリュックを抱きしめ、必至に笑い声を我慢しながら笑い出した。
普段はフォッフォッやらフッフンやらアッハハみたいな短くてしょぼい笑い方しかしないKが、ここまで笑っている。
その珍しい光景に、私は釣られて笑っていた。いつまで経っても笑っているKが珍しくて、なかなか笑いが止まらなかった。
なんだか涙まで出てきた。
私はそれが笑いすぎてしまったからだったのか、はたまたお気に入りの靴が汚れて悲しかったからなのか分からなかった。
〜をれっとのあとがき〜
今は盲導犬のフンであったと考えています。
電車にウンコが落ちていた。しかも踏んだかもしれない をれっと @syosaki
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