第129話 日が暮れて夜が明けちゃう話-最終回-

 当然、123話でキャラクターの話を、124話で神話、125話でAIの社会考察を、126話でフォークとニューミュージックを、127話で地元湘南の話を、128話で僕の物書きの意味を、そして129話は勿論、マッカートニーである。欠かせない僕の嗜好性だ。


 今のマッカートニーを好きな人とかつてのビートルズ世代では少しいろいろなことで温度差がある。僕らは必ずしも熱狂的に彼やレノンの曲を捉えているわけでもないのだ。各方面でそういった記事は目にしてきた。

 ところがNOW&THENのヒットで両世代の融合が見られたという。今やハリソンもレノンもいないわけだから、こんな新譜が発表されたこと自体が奇跡なのだ。しかもそれが大ヒットとか過去には想像も出来ないものだ。没後レノンの新譜は「ミルク・アンド・ハニー」という形でプレスされたが、今回のようなBIGヒットには至っていない。

 この新譜のヒットの裏にあるのは、やはり存命のマッカートニーとスターの存在が大きい。この存命コンビが生きていることで今を感じている、タイムリーな新譜になったとも言える。それを自分の手柄にせずに、ビートルズという形で世に送り出したこともあっぱれである。

 この下地にレノンの遺作という、マッカートニーの色を抑えてレノンを前面に出しているのも悪くない。なんたってあのグループ、リーダーはレノンである。


 さて本題。メロディメーカーとしてのマッカートニーは「イエスタディ」や「レット・イット・ビー」、「ミッシェル」、「ロング・アンド・ワインディング・ロード」などに見られる甘くて切ないバラードに人気が向けられることが多い。


 でも他人に提供した曲で、しかもユニークでかつ美しいモノを僕は二曲挙げる。ひとつはピーターアンドゴードンの「愛なき世界」、もうひとつはメリー・ホプキンの「Good-bye」である。


 前者は最初聴いたときギルバート・オサリバンの隠れた佳曲かと思ったくらい大人しい曲だ。でも良く聴いてみると、アルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』あたりの録音の風味とメロディラインはアルバム『ビートルズ・フォーセール』あたりのレノン=マッカートニーのハモりそのものである。そしてあのボンボン鳴っているベースギターは初期のマッカートニーそのものに僕は感じた。

 後者のメリー・ホプキンは「Good-bye」。「悲しき天使」や「ケセラセラ」も結構巷で良くかかるのだが、マッカートニー作曲のこれが好き。彼女はこの曲の後、レノンの「イン・マイ・ライフ」もカバーするのだが、「Good-bye」のほうが合っていると思う。ああいうレノンのノスタルジックな曲はカーペンターズのカレンのほうが似合う。

「Good-bye」におけるフォークソング調の音のシンプルさをそのままに、澄んだ美声を活かしたプロデュースはドンピシャだ。ちょうど彼のソロシングルの「アナザーデイ」のアコースティックな面と、アルバム『ロンドンタウン』に入っている「ガールフレンド」のコーラスワークも個人的にはこの曲から思い出される。


 また共作とか共演という部分で挙げられるのが、ワンダーとの「エボニー&アイボリー」、ジャクソンとの「セイ・セイ・セイ」と「ガール・イズ・マイン」かな。コステロともアルバムの『フラワーズ・イン・ザ・ダート』でセッションしている。

 でもウイングスに誰もいなくなった時にマッカートニーを支えたのがデニー・レインだった。二人の共作として名高いのが「夢の旅人」。これね、「Mull of Kintyre」がどうしてこのタイトルになっちゃうの? って首を傾げそう。キンタイア岬というのが原題。これスコットランドに実在するらしい。

 そのバグパイプとアコースティックギターの郷愁感がスコテッシュ・ソングとしての売り上げを記録している。英国での大ヒット。おもしろエピソードとしては、バグパイプと他の楽器の調が合わないため、転調した後半部分から入れることにしたのだとか。


 まあ最後なので、マッカートニー自身と言うよりも、その周辺と彼の楽曲で今回は集めてみた。また好事家のおじさんが世迷い言を書いてるなと思ってもらっていい。それぐらいいくつになってもマッカートニーの楽曲に惚れているのだ。

 次回はこのエッセイの本当に最後の最終回だ。ご愛読に感謝。次回は本当の最後だし、集大成と言うことで、訪問した皆さんは、ねぎらいの意味も込めて、気持ち程度「いいね」もつけてほしい(はじめておねだりしてみた・笑)。最終回は11月末日か12月1日の零時辺りに予約アップを考えている。ではその時また。


ご紹介した曲のビデオクリップ

Peter and Gordon A World Without Love

https://www.youtube.com/watch?v=Tdx6lLvvRyg


MARY HOPKIN Goodbye

https://www.youtube.com/watch?v=ee5NOHY9kXI


Michael Jackson,PaulMCcartney-The Girl is mine

https://www.youtube.com/watch?v=txedWZLKT0Q


Wings Mull Of Kintyre

https://www.youtube.com/watch?v=Plhtk_XJqhM


 

 

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2024年11月30日 23:59

湘南のひまつぶし-音楽・読書・旅- 南瀬匡躬 @MINAMISEMasami

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