第10話.エピローグ

 面積の大半を巨大な台地が占める海沿都市かいえんとし心桃市しんとうし。そしてこの市が誇る、日本の【奇跡の絶きせきのぜっ景1けい 00選】のひとつ……心桃湖しんとうこ


 恋のパワースポットとして人気が根強いこのピンクラグーンの畔に、ひと際目を惹くひく大きな建造物が建ってます。




 それは慰霊碑いれいひと云い、10年程前に発生したハロウィン事故の被害者の霊を慰める為 なぐさめる に建立さ こんりゅう れた石碑だそうです。


 被害者の殆どが ほとんど 「立ったまま圧死」と云う、近年稀に まれ 見る観光スポットに於けるおける将棋倒しの危険を風化させない為に……










 それ以降、慰霊碑には沢山の人が参列に訪れます。今回注目するのは、慰霊碑の前のネームプレートに手を合わせる……或るある2組の家族。


 毎年決まって、この時期に姿を見せるんです。2組とも、プレートに彫られたその・・名前を、手のひらでそっと擦り なぞ ます。




 ……海野 柚人うんのゆずと、そして……久保 萌々華 くぼももか 




 そうなんです、亡くなった柚人と萌々華の家族の皆さんだったんです。両家とも、新たなお子さんを連れて来てる様ですね。


 両家揃ってそろって、プレートに手を当てて涙ぐむお母さん。その背中に寄り添って、哀しみかなしみを分かち合うお父さん。


 お兄ちゃんの結末を、何と無く察してさっしてしまった妹ちゃん。お姉ちゃんに何が起こったのか分からず、走り回り怒られる弟くん。


 そう、柚人の妹ちゃんと、萌々華の弟くん。2人とも見た目は、たぶん小学生に上がったばかりの年齢な ねんれい のでしょうか?


 あの事故から10年経ってる事実を、この子達を通して思い知らされます。それにしても、亡くなっても相思相愛そうしそうあいだったんですね。




 まさか、ネームプレートに彫られたほられた名前も隣同士・・・だったとは……




 そして、10年経った今でも両家が仲良く墓参りに来るなんて……実は柚人と萌々華、双家公認そうけこうにんのカップルだったんですね!











 その時、子供達が何やら指差して驚いてます。どうやら、ピンクラグーンの湖面こめんで何かが舞ってるのを見たらしいんです!


 聞くと、湖面の底の方から桜の花弁が はなびら 舞い上がったそうですね。両家共に見に行くと、確かにピンクラグーンから桜の花弁が!


 不思議な事に、その花弁が見えてるのは海野家と久保家だけ。他の人には穏やかおだやかな湖面しか見えないみたいなんです。


 両家族とも、よく目を凝らすこらすと……


 湖面で踊ってたのは、噂の ウワサ 様な天女でも、座敷わらしでも無くて。幸せそうな顔した、柚人と萌々華に見えたんです!



 10年越しに届いた、プレゼント。それは残された両家族への、2人の最期さいご親孝行おやこうこうだったのかも……知れません……











                    Fin?

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転移カレシと転生カノジョ ❀アカリ❀ @ueponAkarin

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