第09話.プロポーズ【萌々華SIDE】

 記憶のもやが全て霧散むさんするまで、残りタイマー20分。カチ、カチ。



 気を失った私は、精神世界を力無く漂って。 ただよって 見下ろすと、丘をなだらかに辿るたどるに幾束も いくたば の青白い光の導線が見えるの。


 青白い光、凄くスゴく弱々しくて。











 全て霧散する迄、残り10分。カチ、カチ。



 その時、はっと気付いたの。そう、此れこれはたぶん私の身体の中。光の導線はきっと、私の魔力そのものなのよ。


 心が渇いかわいたり、身体が横に流されたり。味覚みかくや嗅覚が きゅうかく 変わる原因はただひとつ。それは、魔力が極端に少なくなったから。



 此処ここはそう、魔力が残り僅かわずかだから初めて来れた世界! でも、この光の弱々しさ……今の私って、相当ピンチなのでは!??



 彼処あそこ、ピカピカが転がってるわ。光の欠片カケラよね? 無意識で咄嗟にとっさに拾い上げ、ポッケの中へ。











 全て霧散する迄、残り5分。カチ、カチ。



 私が意識を覚醒す かくせい ると、案の定……広場中央の祭壇の さいだん 上でぐったり横たわってたの。旅人も私の事、見舞いに来てくれたのね!


 今なら、お触りし放題よ♪ 旅人は、一度手のひらでちょんと触って・・・・・・・から抱き上げ……遠慮がちに抱き締めてだきしめて……あれ?



 抱き締めるこの“クセ”、まさか……デジャヴ?











 カチ、カチンッ! ……。



 秒針が0を指す直前、音が止まったの。超至近チョーしき距離だんきょり ったから、くんくん匂いにおい嗅げてかげて。思い出したわ、この恋しい匂い……


 思わず、ぶるるっ!と身震いみぶるいしちゃったの。その時、何かが流れて来て。私の全身が光に包まれてる感触?


 まさか、輝く原因はこの光の欠片? いえ、只 ただの光の欠片じゃ無いわ……此れ、私の記憶の欠片じゃない!




 癖と匂いで全て思い出せたの! 旅人……いえ、柚人ゆずとくんの事も!!!




 旅人の正体が判明すると同時に、ちびドラゴンの身体にも変化が起きたの! ドラゴンの背中が割れ、そこから羽化うかしたのは……




 私が人間……「萌々華ももか」だった時の姿!!!




 儀式で逆に魔力が無くなるのは当然よね? だってレドナ族での私の大人の姿、魔力の無い人間・・だったんですもの。


 記憶の靄が稀にまれに起こす、レアケー 奇跡 スらしいわ。姿は人間でも背中に双翼そーよくが生えてるし、幼体のちびドラゴンをデイパックみたく背負ってるしょってるの。











 でも柚人くんは、それでも良いって言ってくれたわ。私を全て受け入れてくれた柚人くんから、夜月を見上げながらのプロポーズ。


 此処異界では結婚指輪けっこんゆびわとか、形有るアイなんて望めないからね。涙出る程、嬉しうれしかったよ。




 私が人間だった時ね、将来の夢はお嫁さんおヨメさん♡になる事だったの。柚人くん、私を妻に 伴侶 選んでくれて……ありがと♪

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