結【探し求めてたもの】

第08話.届いた想い【柚人SIDE】

 竜人の隠れ里りゅうじんのかくれさとの里民、レドナ族の皆に呼ばれ里の中央へ急ぐ僕。例のドラゴンの子が、目の前で意識も無く横たわってる。


 普段、大人の儀式ぎしきを行ってる祭壇さいだんの……魔力感まりょくかん知魔法陣ちほういじんの上で。


 聞いた話では、大人の儀式に挑む子は暴走する魔力を抑えるおさえる事が出来て初めて変身する方法を身体で覚えて大人になるんだそうだ。


 でもこのドラゴンの子はその逆で、大人の儀式に挑むとみるみる魔力が無くなった・・・・・・・・んだそうだ。初めてのケースで、皆手を出せなくて。




 この異界では……魔力を失うと云う事は、即ち すなわち死を意味するから。











 そこで、この子が親以外で一番懐いてたなついてたのは僕だから、せめて最期まで寄り添ってあげて欲しいと依頼を受けたんだ。


 でも、幾らいくら懐いてたとは云え……結局一度も身体に触れる事の出来なかった僕が、本当にこの子の力になれるんだろうか?


 てふ、てふと触ってみる。あ、意識を失ってる今なら触れるんだぁ。本当は、意識の有無では無いんだけど。


 僕は優しく、愛情を篭めてこめて抱っこしてみる。よーし、良い子だ良い子だー。するとこの子、ぶるるっと腕の中で身震いみぶるいをして……




 鼻がひくひく動いて。好きな人の匂いに満足したのか、にゃん・・・♪とひと言。




 驚いたのは、里民全員! レドナ族、にゃん♪って言葉は発しないから。変身するにも、そう鳴く害魔がいまが異界に存在しないし。


 驚いたのは、僕もだよ! 転移して10年間、片時も忘れなかった大切な人……萌々華ももかの“くせ”に瓜二つうりふたつなんだから!




 見た目は明らかにドラゴンの子、でも触れて分かったこの直感・・! だって萌々華へ繋がる、最初で最後の手掛かりてがかりなんだから。


 僕は剥き出しむきだしの心を、素直に曝けさらけ出して……直感を確信に変え、愛情を篭める。ただ伝えたかったのさ、このひと言を。




 愛してるよ……萌々華。




 目と目を合わせて、想いを乗せて。やっと探し出せたこの子、ちびドラゴンの口にそっとキスをしたんだ。




 有難う… ありがとう 柚人ゆずとくん。その言葉、ずっと待ってたよ。




 僕とドラゴンの子は、サン・ピラーに包まれて居て。光の中でドラゴンから、人の姿へ変わったんだ。


 サン・ピラー、魔力感知魔法陣から出てるな。でも魔力の無いこの子と僕に何故、 どうして 魔力感知魔法陣が作動したか謎なんだ。




 広大な宇宙の中を舞う桜の花弁はなびらの様に、些細ささいな事なのよ、きっと。ね、もう一度キスして……




 今迄の苦労、全て報われたんだな。再びキスする2人を祝う様に、魔力感知魔法陣は花弁を何度も螺旋らせんに巻き上げたのさ。






 その後、花弁は隠れ里を飛び出して……

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