第07話.成人儀式【萌々華SIDE】

 日々、竜人の隠れ里で りゅうじんのかくれさと 明るく楽しく繰り広げてるレドナ族の日常。それは朝、パパ達を見送る事から始まるの。




 パパはね、害魔がいま駆除してくじょして ギルドから報奨金を ほーしょーきん 貰って生計を立ててるんだって! そう、皆の生活を脅かすおびやかすを為す悪い獣なの。


 でも害魔も、そんなには狩らないそうよ。最低限、日々の食肉に足る分だけ。


 そしてママは朝一斉に飛び立つパパ達の帰りを待ちながら、子供と一緒に里の皆で協力して留守を守るのよ。











 そんな或る日、通常の いつも通りパパ達を送り出した竜人の隠れ里にひとり旅人が現れたの。満身創痍まんしんそーいなのか、ふらふら蛇行して歩いて。



 里の中央でばたり、行き倒れてしまったの。



 そんな旅人を見たママ達は怖がって、不審ふしんがって窓から外の様子を伺うだ うかがう け。そうそう、これが里に於けるおけるリアルな反応なのよね。


 レドナ族って、決して野蛮ヤバンな種族じゃ無いの。寧ろむしろ臆病おくびょーな方かも知れないわ。












 でも私、その時何故か気持ちより身体の方が先に動いちゃって。里民の中で、私だけが倒れてる旅人に駆け寄かけよってたのよ。



あうー、あう? ……ぺちぺち、ペチペチ。



 皆、その様子を窓越しに隠れながら固唾かたずを呑んで見守って。ゴクッ……って音が、ここまで聞こえて来そうなの。


 あ。倒れてた旅人、目を醒ましてさまして むくっと上半身を起こしたみたい。私、ほっと一安心したわ。

旅人は周りきょろきょろ見回して。






 この旅人、私達にぺこぺこ頭を下げてるわ。どうやら、感謝されてるみたいよ。でも、気軽に頭なでなでされるのはちょっと……


 細胞レベルで触れられるの、拒否るキョひるのよね。ぱたぱたホバリングしながら、ひらりひらり。レドナ族の血の所為せいね、きっと。


 私と旅人が打ち解けてるのを見て、安心だ、危険は無いって判断したのかしら? 気付くと、皆そろ……そろ……と住居から出て来たのよ。






 でも、ぼやっとした忘却の彼方で……何かが・・・私に語りかけるの。もう二度と手放さないで、忘れちゃダメよって……











 それはそうと、今朝から身体が重たくて。何か、調子が悪いのかしら? 近頃、目に見えて分かる身体の変化が増えたの。


 以前から感じてた心の渇きかわきの他に、空を真っ直ぐ飛べなくて横に流されたり。味覚みかくか嗅覚が きゅうかく 、少し変わって感じられたり。



 この異界ならではの流行感冒な りゅーこーかんぼー の? それとも未知のウイルスとか?



 いいえ、違うと思うわ。子供の時ドラゴンに姿を似せるの、そう云う病原菌に びょーげんきん 強いからってママから聞いてるもの。




 力が抜けて……は? 頭上にタイマー、見えるんデスけ DEATH どー???

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