転【オトナって大変だ】

第06話.安住ノ地【柚人SIDE】

 魂が抜 たましいが けた様に生気の無い僕は、ふらふらっと吸寄せすいよせられる様に竜人達の隠れ里へと足を踏み入れたんだ。


 ひゅ〜と風が吹き荒び、かららんとさくに打ち付けられてた板が剥がれはがれ落ちる。


 この里には、生活の匂いにおいが感じられない……いや、居ない訳じゃ無いな。伺う視 うかがう 線を感じる、あちこちの住居の奥から。











 でも正直、見張られてたとしても……今の僕にはこれ以上どうする事も出来ないよなー。正直、立ってるのも辛いツラいんだよな。



 うん、もう倒れちゃお。 ……バタン。



 うーん、何でこんな僻地へきちまで来たんだっけ? まぁ良いや、このまま異界の地で骨を埋めるうめるのもアリかもな。



 …………。 つんつん、つんつん。



 うん? 何かが僕を突っ付いて。あ、ドラゴンの子だ。誰も居ないのかと思ったよ、興味本位で寄って来たんだな。


 敵意は無さそうだ、食べられはしないだろう。いや寧ろむしろ襲われておそわれてた方が良かったかも……死に場所を探し、此処ここまで来たのだから。











 でも何故だろう、この子と一緒に居ると……魂の抜けかけた、くたくたの身体に生気が甦って来 よみがえって る。元気をチャージして貰えもらえてる。



 確か、昔……遥かはるか昔に、似た光景を見掛けたみかけた様な気が……



 そう思い出してみると、目の前のドラゴンの子が無性に愛おしく感じられて。頭を撫で撫でナデナデしてあげよう……すかっ。


 頭に背中に、手を翳そうかざそうとすると、すぃーっと逃げる逃げる。フットワーク軽いなぁ、この異界にもツンデレって居たのかよ?



 でも、それが戯れてる様 たわむれてる に見えたのだろうか? 住居からぞろぞろと、里民達が出て来たんだ。客人として、認められたみたいだな。











 夜、狩りから帰って来た男達が僕の為に宴会えんかいを開いてくれて。例のドラゴンの子は、他の子達と一緒にスヤスヤ夢の中。


 実は彼ら、ドラゴンでは無い。正式名称はレドナ族、変身一族なんだそうだ。



 幼体は闘う事が出来ないその身を少しでも強そうに見せる為、姿をドラゴンにする。あの子がそうだったよな。


 成体になると大人の証として、ドラゴン以外の姿に変身する。但しただし、何に変身出来るかは本人ですら分からないんだそうだ。











 暫く僕 しばらく 、療養を りょうよう 目的としてその身を竜人の隠れ里に寄せる事にした。運命の河は高い所から低きへ流れ着くものさ。


 ぽっかりと空いた僕の心の穴が、この僻地で初めて繋がりつながりを欲したんだ。こんな僕に、懐いてなついてくれる子が居たからかな?



 その子も、もうすぐ10歳。大人の儀式ぎしきを迎えるそうだ。僕に居場所を与えてくれたこの里の為にも、一緒に祝福し しゅくふく てあげたいな。

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