令嬢スウミは愛人の子、しかもスウミが生まれたことで父公爵は離婚、財産を失ってしまった。その借金を返さなければこんどはスウミが借金取りの「愛人」にされるという運命が待っている。
スウミの弱みにつけ込んだ第二王子はモンスターにスウミを襲わせる。絶体絶命のスウミはなんとか救われたものの、こんどは「第一王子派になれ」と強要され…。
どうしようもない苛酷な世界のように見えますが。
でも。
この世界の人たち(人以外も)、みんな優しいのです!
ひどいことをする人たちも、優しいのです。
そして、令嬢スウミも、超のつく逆境にいながら、優しい。
スウミは、身の上に理不尽なことが起こっても自分で何とかしようとがんばります。
作者のゴオルドさんは、勤め先の社長が逮捕されたり(『弊社の社長が逮捕されまして』)、カタギとは思えない男たちの熱いドラマが展開する横でどら焼きを食べざるを得なくなったり、夏山でいきなり襲う気まんまんのイノシシに遭遇したり(『光るウミウシのように生きたい』)と、さまざまな経験をエッセイに綴っておられる方です。
この物語を支える「優しさ」への確信は、その作者の体験に裏打ちされたものなのだと思います。
世界の優しさを信じて、この物語をお読みください!
はい、物語の途中で失礼します。
レビュー致します。
まずこの作品、異世界ファンタジーの長編であります。
作者のゴォルド様は
「長編は初めてだから背伸びせずに、自分の身近なところからアイデアを出してます」
と、おっしゃいました。
なるほど、確かに、スウミちゃんの会社の経営だとか、トラブルだとか、そういう部分はかなりリアルです。
ですが、それ以外はどうでしょう?
例えばエルド王子が馬で遠出する時、軽装で出かけました。
重装備で馬に乗ったならば馬に負担がかかる。
だから移動が遅くなる。
王子は軽装で乗っていた。
つまり王子は「急いでいる」。
僕は鎧を着て馬に乗るような環境に生きていませんし、それを調べてもいないので、果たしてそれは本当なのか、わかりません。
ゴォルド様も同じだと思います。
しかし「そういうさりげない部分」までしっかり想像して「さりげなく」描写しており、その他の部分も含めて
「ああ、この世界での常識はそうなんだな」
と僕にわからせてくれるのです。
更に貧乏貴族が生活していく為に清掃員のバイトをする。
みたいな物語、ゴォルド様にしか描けませんよね。
ファンタジーならではの要素も違和感なく調和して、とても、面白いです。
このレビューを読んだ方々はぜひ、最新話まで読む事をお勧めします。
登場人物一人一人にも独特なクセがあり、それによって紡がれるストーリーは、読む人達を退屈させませんから。