本文

※応募形式に従い、本文の一部のみを掲載







――――――

■プロローグ





 どこかの世界、どこかの時代。

 地球と近い環境を持つ【獣星ズーディア】は、十人十色な獣の耳と尻尾と能力を持つ種族【獣耳ケモミミ】たちが暮らす惑星。

 その星の片隅には、気が遠くなるほど何度も何度も、失敗と後悔ばかりを繰り返し続ける黒猫がいた。


 これは、ひょんなことから金獅子の皮を被ることとなった黒猫が、あがいて、もがいて、やがて世界を救うまでの物語である。







――――――――――――――

■1章「その猫は、獅子を被る」





 ――夜を、駆ける。


 漆黒にツヤめく髪と尻尾を、てつく空気にたなびかせ。

 不揃いにくすぶる石畳の細道を、自由なリズムで跳ね回り。

 ひび割れはじめた立看板を、ひょいっと軽く飛び越えて。

 変わらずたたずむ古い店舗の間と間を、縦横無尽に舞い踊る。


 十字路をと見せかけて――



「ざんねんっ、だっっ!」


 手前の壁を強蹴りキック

 くるっと華麗に左へ旋回ターン

 トップスピードは維持キープしたまま、真逆の路地へと駆け抜けていく。




 ……はは!

 追手のヤツら、まんまと引っかかってやんのー。

 大の大人が3人同時に転ぶとか情けないたらありゃしない。


 とっとと出直してきなっ。

 この私に追いつこうなんて100年、いや1000年はえぇ。


 なんたってこの私『メネア』は“猫耳族ネコミミぞく”である。

 しなやかに走り、軽やかに跳ぶなんて朝飯前。

 猪突猛進真っすぐ突進だけが取り柄な猪耳族イノミミぞくのキミらと、生まれ持った体の出来が違うのさ!




 ――私は風だ。誰も私に追いつけない。

 ――私は水だ。誰も私を掴めない。

 ――私は闇だ。誰も私を染められない。


 ほのぐらい路地裏は、まさに私の領域テリトリー

 街灯なんか無くたって、夜目さえ利けばやりたい放題。

 ずっと駆け回ってきたんだもの。

 “何処に何があるか”は知りすぎるほど知っている。

 目をつぶってたって、余裕で逃げ切れちゃうんだよねぇ~~これが!



「でもそろそろ、遊んであげるの飽きちゃったなぁ……よしっ。今日はこれぐらいにしといてやるかーっ」


 この先まっすぐの突き当たりには、10m位のブロック塀。

 あの高さなら、ヤツらが飛び越えられるわけないし。

 煙に巻くにはちょうどいいってわけ!





 タタッ……


 ――ん?



 得意の全力ハイジャンプを決めたところで。

 思いっきり踏み切ったはずのが、にグニャリと曲がった。





 …………バキャッ! ズル…………ドガラシャァアアァンッ!!



 気づいた時、すでに遅し。

 アクロバティックに宙を舞った私の体は、硬いブロック塀へ叩きつけられて、そのまま落下。

 受け身すらとれず、不法投棄粗大ゴミの山に背中から突っ込んだのだった。



 全身を襲う



 なんたる不覚。なんたる無様。

 あの高さのジャンプでミスるとかありえない。

 いくら余裕だからって、目をつぶって走るのは流石に調子に乗りすぎたかぁ……。



 ……それもこれも、道に転がってた酒瓶アレのせいだ。

 アレさえ無けりゃうっかり滑ってつまずくことも痛い思いもしなくてすんだのに。


 ってか誰だよっ。

 飲みかけワインを瓶ごとポイッと捨てたヤツ!

 街のど真ん中はなァ、キミの家のゴミ箱じゃねぇんだぞォッ⁉




「――おいこっちだ!!」

「ったく、メネアの奴ッ……今度こそ逃がしてたまるかよッ!」


 見知らぬポイ捨て魔に怒り心頭な私の耳に飛び込んできたのは、ドタドタという足音と、追手の奴らの怒鳴り声。


 やばっ!

 こうしちゃいられんっ!!

 

 チカチカする頭を押さえて逃げ出そうとするものの――





 ……あ、れ?


 手足が……うまく、うごかない……?





 ――――やっちまった。


 どうやら落下時、変なところをぶつけたらしい。

 そういやすっごく痛かったもんな――




「いいザマだねぇ、め!」

「年貢の納め時ってぇやつだぜ」

「ま、観念するンだなッ!」


 気付けばいつの間にか、猪耳族イノミミぞくの3人組がニヤニヤ笑って私を見つめていた。

 女が1人と男が2人。相変わらず揃いも揃って性格の悪さが顔に出てるよ……。



 それにしても。

 、か。


 事実は事実。

 それは認める……認めざるを得ない。

 今の私は紛れもなくそのものだ。


 でも、別に好きで“盗み”をはじめたわけじゃない。

 選べる道がこれしかなかっただけだもの……。



 ……もしもあの頃、他の道があったとしたら。


 私だって……私、だって……!




「おい、聞いてんのかっ」


 苛立った男の声が、私を現実へと引き戻す。


「お前の盗み食いでうちの店は散々迷惑こうむってんだ」

「毎度毎度手間かけさせやがって……さっき盗ったモン返しやがれ!」

「あ~それ無理。もう全部食べちゃった」

「なッ……!」


 3人組の顔色が変わった。

 手前の女が私の胸倉をつかんで怒鳴る。


「アレいくらすると思ってんの!? 小汚ねぇガキが食える代物じゃねぇのよ!?!?」

「んなの知らないって……盗られるキミが間抜けでしょ? あんな目立つ所に見張りもつけずに並べるとか『盗ってちょうだ~い!』って言ってるのと同じだし――」

「うるせェッ盗人ぬすっとがッ!」




 




 私の言葉を遮ったのは、ブチ切れた猪耳イノミミ女の殴打フルスイング

 鋭く振りぬく一撃がグワンと脳天を揺らしたことで、本能的にしまった。


 やばばばばばばッやばいッ!

 こ、これ! 遠慮とか冗談とか躊躇ためらいとか一切なしに、ま、本気マジ本気マジりにきてる時の掌底ヤツじゃんッッ……!!




 ほどなく始まったのは容赦ない怒涛の暴力の嵐ラッシュ


 痛くて怖くて耐えられなくて、叫びが止まらなかったのは最初だけ。

 ところかまわず殴られ蹴られ打ち付けられて、鉄の苦みが口いっぱいにジワァと広がっていくのが分かる。

 死に物狂いで頭を回転させても逃げ道なんて見当たらない。

 あったとしてもそもそも体が動かない――




 ――

 ――



 瞬間、全部がどうでもよくなった。

 まぶたが自然と重くなり、世界がふんわり離れていった。








 ***








 ――……メネア………………メネア!





 に名前を呼ばれたような気がした。


 不思議と懐かしさが込み上げてくる。

 あたたかくて、やさしくて、なんだかとっても安心する声。




 ……そうか。


 これ、だ。


 夢の中の私は、いつもと過ごしていた。

 1人ぼっちの現実とは、大違いだよねぇ。


 そういや“寝る時に見る夢は願望の表れ”って聞いたことあるぞ。

 自分でも気づかない深層心理、とかいうやつだっけ。


 てことは私、潜在的に「誰かと一緒にいたいよー」って思ってるわけ?

 んん~~……いまいち実感わかない。

 今のとこ、現実には割と満足してる気がするんだけどなぁ……。




 ……む?





 ……?









「⁈」


 不意なが、ぱちっと私を覚醒させた。





「あれ? 私、生きて……? る??」

 

 目に飛び込んできたのは見慣れた暗闇。

 周りを囲むは不法投棄粗大ゴミ。

 ってことは気を失う前と同じ場所か!


 猪耳族イノミミぞくの追手3人組はもういない。

 た、たすかったぁ~~――




「――大丈夫かい?」


「へ⁈ ……いってッ」


 急な呼び声に慌てたところで、全身の痛みを思い出す。

 ま、さっきに比べりゃだいぶましだけど。

 あまりに痛すぎてちょっと麻痺してきたーって感じ?

 かろうじて上半身だけ起こし、舐められないようポーカーフェイスを心掛けつつ、私は“相手”に向き合った。


「……で。キミ、いったい誰?」

「ふふ……誰、かなぁ?」


 さらっとはぐらかすのは先の声の主。

 質問に質問で答えるあたり、まともに答える気はないらしい。 

 声からして大人の女だろう。私よりもだいぶ年上で身長も高い。それ以外何も分からない。逆光の上、魔導士っぽい長いローブをきっちり羽織り、フードを目深にかぶっているせいで顔すら見えない状態だ。



 だけど不思議ながあった。


 ――私は



「……あのさ、私たち、どこかで会ったよね?」

「さあ? 会ったかもしれないし…………会ってないかもしれないねぇ」


 のらりくらりと交わしてばかりで、捉えどころがない女。

 妙に落ち着き払ったその様は、どこか達観しきっているようにも見える。

 顔も隠してるし、正直かな~り怪しすぎるんだよなぁ……。




「――さて、時間が無いから手短に言うよ」

「時間?? 何の?」

「まずは私の時間。でね、こうやって話せるのも今だけなんだ……それから君の時間もだね。なんたって君、このまま放っといたら出血多量でからさ」


「ひッ――」


 そ! そそそそういや私!

 死にかけてたよぉぉおォッッ!!!

 胴体も手足も血まみれだし出血量もえげつねぇッ!

 どんだけ多量なんだよ出血ッこれまじで死んじゃうやつゥッ!!


 おうォッ⁈ 服もすっかりボロ布じゃん!

 まじか、これけっこー気に入ってたのに……今は服どころじゃないけどさッ!!




 慌てふためくパニック状態の私へ、顔色変えず女は言った。


「――でもね。に乗るなら

「助けられる……し、死ななくてすむってこと?」

「そうだよ」

「!! やったぁッ……――」


 全力で喜びかけたところで――私は気づいた。

 この女がということに。


 いかんいかん。

 うっかり鵜呑みにするとこだった……!

 美味い話にゃ裏がある。

 正体不明なヤツの言葉を信用するほどバカじゃない。


 静かに気を引き締め直す。

 気を抜くと恐怖と痛みに持ってかれてしまいそう。

 だからこそ、ここで判断を誤るわけにはいかないってわけ。




「ねぇ! 何が目的? 私に何をさせたいの?」


 耳と尻尾の毛を「これでもかっ」と逆立てまくる。

 今の私にできる精一杯の威嚇にらみつけ

 必死に頭をクリアにしつつ、相手の出方を最大限に伺っていると。


「ふふふ、君は本当にぶれないねぇ。そうだなぁ……しいていうなら『』ってことだね」

「……は?」

「なんとなんと! 君は選ばれし特別な存在、つまり救世主になりうる素質を持った獣耳ケモミミなんだ! 私は君の命を助ける。かわりに君には世界の人々を助けてほしいんだよ……それが私の目的さ!」


 意味不明度、天元突破。

 ここまで来るとワケわかんない。

 ってかヤバい。


 この女、私が死にかけてるの知ってるクセに何でこんなふざけられるの?

 芝居がかった言いぐさがさ、無性~~に鼻につくよねッ!!


「ちょっと、ふざけないでよ。こっちはマジメに話してんだけど!」

「ふざけてなんかないさ、私はいたって大真面目」

「どこがよッ! 『時間が無いから手短に……』って言い出したのは自分でしょ? なのに“選ばれし救世主”とか“世界を救う”とか本の中の御伽話じゃあるまいし――」

「おや? 本の御伽話って、もしかしてかい?」


 ガバッとローブを脱ぐ女。

 きっちり着込んでいた魔導士ローブが剥がれた瞬間、私は思わず声を上げた。




「――――⁈⁈」



 獣耳ケモミミ最強種族といわれる獅子耳族シシミミぞく

 その中でも選ばれし存在、それが『金獅子』。

 金色の獣耳、金色の髪、金色の瞳、金色の尻尾……暗い路地裏にいるにも関わらず凛と光り輝く神々しいまでの姿に、私は目を奪われてしまった。


 なぜなら彼女の姿は、まさに『金獅子きんじしメネア』そのままだったからだ。




 金獅子メネアは、私の夢に出てきた絵本『金獅子の大冒険』の主人公であり、最強種族の獅子耳族シシミミぞく内でも別格に強力な『金獅子の心ハートオブレグルス』に選ばれた特別な存在だった。


 メネアと全く同じ名前を持ちながら、私とは全く違う容姿と能力を持つ金獅子メネア

 彼女が仲間と共に奮闘する冒険譚は、何度聞いても飽きなかった。

 だから私は夢の中で、何度も何度もおねだりしてはその物語を読み聞かせてもらっていたし、特に小さい頃は夢を見る時間を心待ちにしていたのだ。



「金獅子メネア……あれは夢じゃなかったの?」

「いいや。あれは夢だよ」

「へ? ……でもっ! キミはこうやって、私の前に現れたじゃない!」

「それ話し出すと長くなるんだよ……今そんな時間は無いから、どうかこれだけ信じてほしい。私は君に嘘をつかない。君に死んでほしくないし、本当に君を助けたい。これだけは本当の……心からの想いだ。だからお願い、提案を飲んでくれない?」



 普通に考えれば信じちゃいけない。

 どう考えたって怪しい、怪しすぎる。

 提案に乗ったら何されるかわかんないし、裏を疑うべきだよね!


 だけど私は……そんな風に割り切れそうにない。

 それだけ小さい頃の私にとって『金獅子メネア』は特別だったってこと。


 しかも現在進行形で死にそうなのだ!

 本音を言えば死にたくない!!

 藁をも掴みたいってのも紛れもない本心なわけでッ――





「…………分かった。乗るよ、キミの提案」


 迷いに迷って答えると、女は子どもみたいに無邪気に笑った。


「OK! じゃまずは――でよし!」


 私の指へ、女が金色の指輪リングをはめる。



 フワァ……キラキラキラ……――


 途端に金色に輝きだす私の体。

 あたたかくて、やさしくて、金獅子と同じ光。



 輝きはすぐにおさまった。

 と同時に私の体からスッと痛みが消え、あんなに酷かったケガが治りきっていた。



「――これで『金獅子の心ハートオブレグルス』は、君にも受け継がれた」

「え? で、でも『金獅子の心ハートオブレグルス』って獅子耳族シシミミぞくの中でも選ばれし者に受け継がれるんでしょ? 私は猫耳族ネコミミぞくだからそんな資格あるわけ――」

「見てごらん」


「あ……」




 女が指さした先にあったのは、粗大ゴミの山に捨てられた大きな姿見。

 少しひびが入った鏡面には、金色の獅子耳族シシミミぞくが映っていた。


 ただし、それは間違いなく“私”。

 耳と尻尾と瞳が金色の獅子になって、黒の直毛だった髪が金の巻き毛になったけど、それ以外は体型も身長も見慣れた自分の姿そのものだった。




「『金獅子の指輪リングオブレグルス』はね、選ばれし者の姿を『力を受け継ぐにふさわしい者の姿』へ変える効果を持つのさ。君の姿を金獅子に変えたのも、ケガが治ったのもその効果ってわけ」

「これが……私……」


 女の説明は信じがたいものだった。


 だけど目の前で起きた奇跡をふまえると、信じざるをえない。

 そうとしか……思えないのだ。


「これからへ行けばいいか分かる?」

「え? ――あ! 三番街の魔導具屋?」

「その通り!」


 三番街の魔導具屋。

 絵本で金獅子の力に目覚めたメネアが、直後に訪れた場所。


「ならは覚えてる?」

「当たり前じゃない。何度絵本を読んでもらったと思ってるの?」

「――そうだったね」


 一瞬だけ遠い目をする女。

 それから私のほうへと向き直った。


「1度しか言わないからよく聞いて。これから君は大変な道を歩むことになる。そのためには『金獅子の心ハートオブレグルス』を自分のものにしなくちゃならない」

「“金獅子は気高く気難しい存在で、認めた者にしか力を貸さない”……だよね?」


 絵本の内容を思い出してたずねると、女は「そう」とうなずいた。


「力を使うにはまず金獅子きんじし調伏ちょうぶくしなきゃならない。だけど認められさえすれば、絶大な力を得ることになる。そして真の意味で『金獅子の心ハートオブレグルス』を自分のものにした時、君は指輪リングが無くとも自在に能力を使えるようになるだろう……もし行き詰ったら、夢で聞いた御伽話を思い出すといい。きっと君の進むべき道が見えてくるはずだよ」

「確かに御伽話でも『金獅子の能力を手に入れなきゃ』ってがんばってたな……その過程で信頼できる仲間と出会って、いくつもの試練を超えたんだよね」

「君もきっと超えられるよ! 何たって、君は――」



 何かを言いかけたところで、女の姿がチカチカ点滅し始める。



「――おっと、そろそろ時間だね」

「行っちゃうの?」

「うん。最後にもうひとつ、餞別だ」


 女が渡してきたのは先程脱いだばかりのローブ。


「遠慮なく使ってくれ。姿は……ちっとばかりからさ」

「っ~~! ……あ、ありがとっ」


 言われて気づいたけど、私の服ってばボロボロじゃん!!

 このまま街歩いたら「うっわ変態w」とか指さされて捕まっちゃうって!!!


 慌ててローブを受け取って羽織り、真っ赤な顔はフードで隠す。

 ローブはほんのり暖かくて、お日様みたいないい匂いがした。




「――んじゃ、新たな若い金獅子ちゃん。世界のこと、よろしくたのむよ!」


 最後にそう言い残すと、女はすうっと消えていった。


 彼女の最後の顔は満面の笑みだった。

 だけどどこか寂しそうで……私の心をぎゅっとしめつけた。








 ***








 翌日の夕方。

 三番街の端にひっそりと佇む、寂れた小さな魔導具屋。


 建付けの悪い木製の入口扉を開け、おもむろに足を踏み入れる。




 キィ、カランカラン……――




 閑古鳥が鳴く静かな店内。

 唯一いるのは、カウンター前で作業中な目つきの悪い犬耳族イヌミミぞくの男店主のみ。


 店主は手を止め、眼鏡をくいっと直して私を見ると、溜息交じりに吐き捨てた。


「うちの魔導具は材料からこだわりにこだわった一品ばかりでねぇ。子どものお小遣いで買える玩具おもちゃは無いんだよ……冷やかしならとっとと帰んな」



 ……うん、知ってたよ。

 歓迎されないことぐらい。


 ふーっと軽く深呼吸。

 目深にかぶったフードを取る。



……!」


 一転、男が私に釘付けになったところで、私は“合言葉”を告げた。



 ――ふるき獅子より言伝ことづてだ。

 ――眠れる獅子が新たに目覚めた。

 ――いざ行かん。我らが旅路のの先へ。




 しばらく呆気にとられてから、犬耳イヌミミ男が立ち上がる。


「…………今日は、もう、店仕舞いだな」


 ニヤリと笑う彼の瞳には、うっすら涙が光っているように見えた。





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③シシカブリネコ ~Heart of Regulus~ 鳴海なのか @nano73

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