プレイしていたゲームの世界に召喚されて、世界を恐怖に陥れている魔王を倒しに旅へ出る――という王道的な内容の作品だが、世界観がかなり作り込まれているように感じた。
世界の情勢や、街の事情など、異世界作品に不足しがちな説明を補っている。熱いバトルものというよりは、異世界旅行日記的な感覚で読んでいた。じっくり読んでいけばこの世界のガイドブックが完成してしまいそうなほどだ。
主人公が最初から強くないタイプの異世界召喚ものである。そこそこ苦労しているので、「主人公の成長」を楽しみたい読者には向いているのではないだろうか。これからさらに強くなる、と予想している。
また、主人公の傍にこれといった女性がいないのも珍しい。ヒロインとの恋愛よりも、戦友との友情に重点を置いていると思う。
主人公・照原拓斗が剣と魔法のアクションRPG『Brave Rebirth』の100回目のクリアを達成した瞬間、ゲームの舞台である異世界リバースへ勇者として召喚されて始まる魔王討伐を目指す冒険に夢が広がる。
ゲームの世界を自分の足で立って歩けるなんてまさにゲーマー冥利に尽きる。
ましてや誰よりも遊び尽くしたゲームであればなおさらだ。
最初はそんな浮かれた気分でいたものの、現実になったことでゲームの頃とは勝手が違って、
NPCとの人間関係に悩んだり、魔法やスキルを使うのに戸惑ったり、モンスターが大幅強化されていたりと、
さまざまな障害にぶつかりながらも現代社会では味わえない体験に一喜一憂する姿が微笑ましい。
まだ物語はほんの序盤だが、すでに独自ルートに入ってきて、どこまでゲームの攻略情報が通じるのか、拓斗がどんな人々と出会って何を成していくのか、勇者としての今後の活躍が楽しみだ。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=愛咲優詩)