◆またまた怪しいバイト

 冷静を失い、感情のままに剣を打ちつけてくる入江。

 これでは、ただの暴力だ。


「てやッ!!」


 俺は剣で応戦する。

 入江もそれなりの動きで防御した。

 一応、口だけではない。


 レベルもステータスもそれなりに高い。


 だけど、俺には及ばない。



「くそ、くそ、くそがッ!!」



 ガンガン打ちつけてくるが、それだけだ。


 けれど、油断していると剣が弾かれた。



「……!」


「先輩さぁん!! これで武器が無くなったな。おしまいだァ!!」



 ニヤッと笑う入江だが、俺は直ぐに『祝福のダガーナイフ』に持ち替えた。


 レベルアップしている今の俺になら、これを扱える。



「これでも食らえ!!」



 思いっきり振りかぶると、二回攻撃の斬撃が入江のボディに命中。



「がはあああああああああッ」



 思いっきり吹き飛んで柵に背中を打ちつけていた。

 これにより――。



【Winner:Maxwellマクスウェル



 マクスウェルというのは、俺のキャラネームだ。

 ということは勝利だな。



「お疲れ様です、兄様」

「おう。なんとか勝った」

「もう祝福のダガーナイフを扱えるレベルに到達していたとは……さすがです」


「いけるか微妙だったけど、ギリギリ足りたらしい」



 入江の方は……うん、気絶しているだけらしい。

 ケガとかはないようだし、あのまま放置しておくか。


 もう昼休みも終わるしな。



「戻りましょうか」

「そうだな。ヤツは気づいたら勝手に戻るだろ」



 * * *



 途中で知花と別れ、教室へ戻った。

 代り映えのしない普通の授業が続く。



 そうして放課後。



 チャイムが鳴ると共に通知が入った。

 知花からだ。



【知花:そちらへ向かいます】

【大:俺の方から迎えに行くのに】

【知花:いえいえ、これくらいはさせて下さい」

【大:分かった。待ってる】



 俺はずっと知花と遠ざけていたのにな。

 それなのに、今は知花が俺に近づいてくれている。申し訳ない気持ちも湧き出た。だけど、これからが肝心だ。


 もっと親密になって、よりよい生活を続けていきたい。



 しばらくして知花がやってきた。

 俺も廊下へ出て合流。



「帰りましょう、兄様」

「あぁ、そうだな」



 微笑み合って、廊下を歩きだす。


 学校を出れば夕焼け空が広がる。



「今日はご飯、何にしましょうか」

「知花の好きな料理にするよ。なにがいい?」

「ん~、そうですね。カレーですかね」



 そういえば、知花はカレーが好きだったな。

 よし、スーパーへ寄って食材を買っていくか。


 しかし、その前に東雲さんのところへ寄らないとな。



「それじゃ、まずはビルへ行こうか」

「あ、そうでしたね、分かりました」



 静内駅の方面へ向かい、例のビルへ。

 相変わらずビルっていうか寂れた探偵事務所みたいな場所だ。


 呼び鈴を鳴らし、しばらくするとロック解除の反応があった。



「いつもカギ掛けてるんだな」

「SFOの情報漏洩を避けたいらしいです」

「それもそうか。まだ正式サービスすら始まっていないしな」



 中へ入ると、椅子に座ってキセルを吹かす東雲さんの姿があった。

 俺たちに築くと眼鏡を外し、鋭い目つきを向けた。



「ようこそ、佐藤くん。それに知花」



「言われた通りに来ましたよ、東雲さん。で、用件とは?」

「うむ。もちろん、SFOのことさ」

「クエストです?」


「いいや、バイト・・・。今夜出現するボスモンスターに挑んでみて欲しくてね」

「ボスモンスターですか?」


「ああ、まだプロトタイプ……試作モンスターでね。運営の『PROMPTプロンプト』が私に頼んで来たんだ。だが、そんな暇がなくてね、二人にお願いしたい」



 そういうことか。

 つまり、俺たちに実験台になって欲しいと。



「でも、そのボスモンスターに負けてデスペナルティとか嫌ですよ」



 知花が本当に嫌そう言う。



「大丈夫だ、試作モンスターに関しては敗北しようともデスペナルティはない。ただのテストだからね。

 テストを受けてくれたら、特別報酬として膨大な経験値とベル、アイテムを出す」



「どうします、兄様」



 選択権は俺に委ねられた。

 報酬も出るならいいか。


 俺は承諾した。



「受けますよ。どこへ行けばいいんです?」

「ありがとう。出現ポイントは『古川両岸緑地公園』だ」


「昨日と一緒のところか。分かりました。では行ってきます」


「出現時間は二十時ジャストだぞ」

「時間指定があるんですね」

「当然だ。レイドボスだから、そういうことになる」



 レイドなのかよ。

 嫌な予感しかしないぞ。



 俺と知花は、東雲さんのビルを後にする。時間があるからスーパーへ寄っていった。


 それから、アパートへ。


 残り時間は二時間ほど。


 先に飯を食うか。



「兄様……あの」

「どうした、知花」


「今日はありがとうございました。屋上で」

「ああ……あれくらい、たいしたことないさ」

「とても嬉しかったです。わたし、兄様と一緒にいたいから……」


「お、おう」


 あまりに可愛い笑みを向けられ、俺は照れた。

 そうだな、俺も知花と一緒にいたい。


 他の男になんて取られたくない。


 もっともっと俺は強くなりたい。

 知花を守れるような男に。



【あとがき】

 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 ARMMORPGという、あまりないジャンルで試行錯誤して書いておりましたが、ここまでとさせて戴きます。


 今後また新たにリメイク・リブートを考えております。その時はまた寄っていただけたら幸いです。

 気が向いて続きを書く場合もあります。


 ★や♡が励みになりました。

 ここまで本当にありがとうございました。


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Soul Force Online -ソウル・フォース・オンライン- 桜井正宗 @hana6hana

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