言の葉。

 部屋に滞在するのは男2人、女2人の四人組。

 男の1人はジョッキ片手に酒をあおり。

 女の1人は眼前の料理を切り分けて口に運び。

 男の1人は持病の薬を探して。

 女の1人は鏡片手に化粧を直す。

 部屋の雰囲気は険悪であり、1人が、自分以外の3人を睨みつけつつ怒鳴った。


「アンタ等、いいかげんにしろよ」

「それはこっちのセリフだろ」

「それならこっちだって言いたい。いい加減にして」

「ふん、そっちが言えた立場?」


 互いににらみ合い、罵り合う4人。


「とぼけるつもりか?」

「誰がとぼけてているって?」

「証拠もないのに言っているわけではない」

「そうだ、確かに見たからな、アンタがアイツと居るところを」

「それをいうなら、こっちだってアンタ等が一緒のところを見た」

「状況証拠と証言だけで言い争うつもり? こっちは証拠ももってる」


 罵り合いは加速する。


「アンタがさっさという事聞いてくれてればこんなことにならなかった」

「人のせいにするとか最低。自分のせいじゃない」

「自分のせい? アンタ等のせいだろ」

「立場をわきまえないのはいただけない」

「立場? よく言う」

「馬鹿は黙ってろ」

「言葉に気をつけた方がいい」

「偉そうにするな」

「馬鹿に馬鹿は当然」

「顔も見たくない」

「忠告してあげたのに」


 罵り合いは互いの憎悪を膨らませ、押し殺していた感情を吐き出させる。


「死ね!」

「死ねば!」

「死んでしまえ!」


 翌日。

 3つの遺体が発見された。

 1つはナイフが突き刺さり。

 1つは口から泡を吐き。

 1つは外傷無く苦悶の表情が張り付いて。


 部屋には薔薇香水の香りが漂っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

短編滔等 御手洗孝 @kohmitarashi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ