わたしの幸せなこと
朝、目が覚めること。
あなたがキッチンで動く音が聞こえること。
顔を洗って、だいぶ伸びた髪を梳かすこと。あなたが磨いてくれた鏡に、自分の髪が映ること。
あなたがキッチンで料理をしていること。わたしが作ったエプロンをつけてくれていること。
あなたが炒めているのは卵で、作っているのはスクランブルエッグだと分かること。
わたしとあなたの大好きな卵料理を、朝から食べられること。
ほんの少しの間、あなたの姿を眺めること。
あなたに挨拶をすると、「おはよう」と返してくれること。
あなたの背中にくっつくこと。「危ないよ」と注意しながらも、あなたの顔は嬉しそうなこと。
パンを焼き始めること。焼けるまでをじっくり眺めること。
トーストの香ばしい匂いがすること。焼けたパンの耳は、あなたの髪色に良く似ていること。
卵とレタスを乗せて、あなたが朝ごはんにしてくれること。
「いただきます」と声を揃えること。卵は半熟でとろりとして、トーストに良く合っていること。
「美味しい」と感想を伝えると、あなたの顔が安心したように綻ぶこと。
食後のコーヒーを淹れること。わたしが淹れたコーヒーを飲んで、あなたの焦茶の瞳が細くなること。
「幸せだね」とあなたに笑うこと。後で少し恥ずかしくなってしまうこと。
「うん」と、あなたが短く――それでも、本当に幸せそうに言うこと。
――ああ、しあわせだ。
幸福 たちばな @tachibana-rituka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます