ヒモ・ボクサーと聞くと、あっち(どっち?)のヒモが浮かんじゃったんですが、違います。紐です。電灯にぶらーんと垂れ下がっているアレです。うちなんかは寝室は長い紐を垂らしていて寝たまま消せるようになっていた、あの電灯紐です。
その紐にパンチして遊んでいるうちに主人公はボクサーの才能が育っていくんです。そしてプロになり、大一番の試合を迎える。
それまでの半生が流暢な文体で淡々と語られていきます。見事な短編ドラマ。
トレーニングの最中、公園で出会った女性との間に芽生える恋心とその結末。
がははと爆笑する笑いではないんですが、ハートフルコメディといいますか、熱くて爽やかで全体にユーモアがあります。最高ですね。堪能しました。
ヒモ・ボクサーというタイトルを見て、勝手に想像しました。
プロボクサーというのは食べられないと聞く。きっと恋人に依存した生活を送るボクサー(=ヒモ)が、ついに恋人に別れを告げられ、奮起。
優勝(というのだろうか。なんか、そんな頂点的な感じのもの)して、別れた恋人に、「おれともう一度やり直してくれ!」。拍手!! 感動!! 涙!!
そんなストーリーなんだ、と思っていたら。
全然違いました。
このヒモは、「紐」だったんです。
紐・ボクサー。
ほら、昔は家の電気って、ぷらん、って紐がぶら下がっていたじゃないですか。
あの紐をサンドバッグに見立てて、パンチしたこと、ないですか?
あれ。
あれを極めた男の話。
主人公の拓馬君の家は訳あり家庭のため、小さなころはおもちゃなどろくに与えられない生活でした。
そんな彼の唯一の娯楽が、紐をパンチすること。
その後、彼はボクシングに出会い、プロボクサーになります。
そして、車いすの女の子との運命の出会い。
拓馬は彼女のためにチャンピオンになることを誓い、恋心も自覚するのですが……。
さて、拓馬こと、ヒモ・ボクサーの恋の行方と勝敗の行方はいかに!?
短編ですし、コメディなので短い時間で楽しめます。
アオハル要素多めの、お勧め作品です。