いつも手間?

狐照

水筒を熱心に洗浄しているカップルのお話

最近購入した水筒を洗っていた。

紅茶を好んでいれるからか、すぐ黒い汚れがこびりつく。

昨日使ってすぐ洗わなかったのがいけなかったのか、ゴムや底に口に含む液体と接して欲しくない黒が沈着していた。


丁寧に洗わなければならない。


水筒の底を洗うため、水筒洗い用のスポンジを中に押し込んだ。

奥の側面と底を洗う為である。

洗剤をつけてぐるぐる回し引っこ抜く。


ああ、黒い。

まだ、黒い。


あんなに美味しいのにどうしてなのか。

不快な黒い汚れが、真っ白だったスポンジを汚していた。

二度三度、スポンジぐいぐい、濯いでじょばーを繰り返し、よし、綺麗になった。

口を下にし布巾の上に置く。

さてここからが問題だ。

飲み口にある小さな空気穴だ。

ゴムや溝の汚れはすぐ取れる。

けれどこの小さな穴にはいつも苦戦させられる。

ティッシュを濡らし細くし洗剤を付けてねじ込む。

これがなんともまあ気の遠くなる作業なのだ。


「なんとかならないかな…」


口にしてから、何か細いものをと思案する。

思案しつつ作業を進める。

小さな固い穴に、滑りをよくするため洗剤を注ぎ込む。

水分を含ませたティッシュをこより、良い感じの太さにして入り口へ。

奥へ侵入させるためにゆっくり、ぐりぐりねじ込む。


「…」


「なにしてるんだ?」


白いそれをぐりぐり入れていると、動画鑑賞に飽きたのか、同居人が手元を見下ろし聞いてくる。

答えない俺をどう思ったのか、後ろから抱き締めてくる。

甘い香水、みたいな体臭がする同居人。

ぐっとくる匂いにほどよい胸筋に、ちょっと身を任せてしまう。


「そんなとこ洗ってんのか」


同居人は小さな穴をティッシュで責め立てる様子を眺め、


「細くて固いのがいいんじゃないか?」


ご苦労様だなと頭を撫で撫で言ってくる。

ついでに側頭部にキスされる。

俺は思わず顔を上げ催促する。

もちろん気付いてくれて、俺はしばらくキスを楽しんだ。


「…太くて入りづらい方が、断然いいだろ」


キスの合間にさっきの問いに答える。


「なんで、手間だろ」


くちゅくちゅ、口の中吸われてかき回され腰が砕ける。


「…いつも、手間なのか?」


舌で歯を舐めながら問うと、


「……」


同居人はなんとも言えない表情を浮かべた後、水筒洗いながらなに想像してんだよ、と俺を強く抱き締めた。

そして優しく、深い、キスをしてくれた。


洗い物を早々に済ませベッドに行きたくなったので、俺は手元急がせる。

小さくて狭くて扱いにくい、けれどとても重要な大事な穴を一生懸命洗う手元を見つめながら彼がポツっと呟いた。


「…そーゆのってさ、確かキッチン〇イターとかに浸ければいいんじゃなかったか?」


「…早く言ってくれよ、そーゆことは」

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