第四十三話『』


『さてトーナメント第一回戦が終了し、準決勝進出した学校が出揃いました!』


『まずウチの『ホフリ学園』。次に初登場にして優勝候補の『シンク高校』』


『そして激戦を繰り広げた『アラカ高校』と、『イカリガ高校』が準決勝進出となりました!さてどう見ます?』


『そうですね。この言い方は悪いんですけど、正直下の二つの高校が勝てる見込みがありません』


『いやひどくないですか?その言い方は』


『これは事実なんで。今ボロボロになっているアラカとイカリガの二校が、勝てるとは思えないんですよね。つまり事実上、ほぼ第三位決定戦って感じなんですよ。今』


『偏見報道か何かか?まぁ確かに、ほぼ一人しか疲労……。疲労してるのかも怪しい二校と、ほぼギリギリの勝ちだった二校を比べれば……。それは、そうなんですが』


『まぁまだ他に人がいるかもしれないが、少なくとも圧倒しなけりゃダメだ。つまり勝ち目は薄いって事よ。よっぽど運がよくなけりゃ……。無理でしょうねぇ』


『かなりボロクソに言ってますけど、正直見ていても厳しいと言うのが本音ですね……。ですが勝負と言うのは何があるか分からないモノです!祈りましょう!』


「かなり偏見報道じゃない?」


ヤノカ達は、待機室で解説を聞いていたのだが、だいぶボロクソに言ってるなと思った。しかしこのシャードと言う男、とにかく実力主義者なので、強ければ強いと言う、だが弱ければもう目も当てられないくらいにボロクソに言って来るのだ。


「まぁ、見てた時点で強い奴はいなかったし……。正直どうなんだ?って感じではある」


「私も同意見ですわー。見ていられませんわ」


スターが、相手が平民ではない奴にこの言い草、よっぽど見限っている様子である。とは言え、それ以上の罵倒は無いが。そして準決勝戦が始まる。


「決勝戦は明日、一回戦と二回戦は今日やるって結構ハードスケジュールだよな?」


「だな」


まぁ特に文句がある訳でも無いので、とりあえず選手入場入り口へ向かう三人。張り切っているヤノカに対し、スターが話しかけてくる。


「……。約束ですから、今回と次回の戦いでは言う事を聞いてあげますわ」


「あっそう言えばそうだね……。じゃあよろしくね!」


「しかし勘違いしないでくださいまし!私はあなたがまだマシな平民だから評価しているだけで、他の平民生まれの言う事など聞く気もありませんからね!」


そう言って、一人先にグラウンドに向かう。フィルはそれを見て、やや感慨深い感じに頷いた後、ヤノカの背中を叩く。


「ま、なんだ!張り切って行くぞ!」


「うん!」


そして早速戦闘が行われる場所に転送される。さてホフリ学園とシンク高校の戦果だが、まぁ勝った。特に見どころもなく、淡々と倒されるだけの光景は、流石に若干ブーイングが出る始末であった。


「な、なんか凄いアッサリだったな……」


「ん。弱い」


今日の試合も終わったので、残った選手達は近くのホテルに泊まる。割と他の奴らも泊っている。その中には、リンとガルの二人も存在していた。


「あら?お前らもここに泊まるの?」


「チケット取れなかった……」


「決勝戦はさらに倍率が高くてな。仕方ないんでこのホテルの一室を買い取った」


「うわぁ金持ち……。と言うか出来るんだそういうの」


そんな訳で、一人一室。皆同じ部屋であるが、寮の部屋とは比べ物にならない位、いい部屋であった。とりあえず部屋に荷物を置き、フィルはヤノカの部屋に向かう。


「おーい」


話しかけるが返事がない。なんだとドアを開けようとすると、鍵は開いていた。誰が入っているのかと見てみると、そこにはランゲイジの姿が。


「あっお前!」


「よぉ。まぁ落ち着けよ。別に今殺しあおうって気はない」


のんきにお茶を啜っているランゲイジに対し、自分で入れたお茶を飲んでいるヤノカ。なぜやって来たのかと問い詰めようとするが、のらりくらりとかわされる。


「さてと……。ヤノカって、お前?」


「僕だね。それでどうしたの?」


「単純に言えば……。どうやら俺の学校ではお前の命を狙おうって魂胆らしい」


「はぁ?!」


「えっそうなの?」


当然の反応を返す二人。そりゃ、命を狙われていると言うのを言われれば、誰だってそんな反応になるに決まっている。だがランゲイジは淡々と言い続ける。


「色々言いたくなるところはあるだろうが、事実だ。それ以上は言えないが、気を付けた方がいい」


「な、なんで言うんだ……?なんかの作戦か何かか?」


「そうだな?……。俺は、あくまで公平に戦って勝ちたいんだ。分かるな?その状況で、邪魔が入るのは嫌だからな」


そう言って出ていくランゲイジ。割と正々堂々と戦いたいのだろうか。まぁそれはそうと、それさえ知っていれば作戦を組み立てることは、簡単に出来る。早速スターの部屋に向かうと、手紙をドアの下から入れる。


「これでよし!」


「いいのか?」


「相手が僕一人なら、僕があのランゲイジと戦えばいい!」


「そうか。なら俺は他の奴を抑える。……やられるなよ?」


「勿論!」


そして休養する為、今日はもう寝ることにしたのであった。

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『クロク・オリジン』 常闇の霊夜 @kakinatireiya

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