命を返す、そして──




 退位してアドリアに王の座を渡してから、たまにヘルプが来るがエリアも含む伴侶が「お前は今まで父であるダンテの何を見てきたのか」と説教が飛び、自分なりに四苦八苦しながらやっているそうだ。

 わたしが80年も王やってたんだから、分からないのも当然だと言うと、皆は否定し、親の背中を見てきたはずだと言ってのけた。


「私の時は、父母が手伝ったりしてたのですが?」

「それは、お前が無茶する癖を持っていたからだ、アドリアは持っていない」


 と、言われてしまえばお終い。

 我が子は私に似ず育ったようだと納得せざるを得ない。


「それにしても厳しすぎやしませんかね」

「いいや、厳しくない。これからはアドリアが国を支えていかなければならないのだからな!」

 エドガルドはきっぱりと言い切った。

「そ、そうです。アドリアをあまり、甘やかしては、いけないです」

 生みの親であるエリアでさえ、そう言った。

「皆さん……本当にそうですか?」

 と問い詰めると、わずかにエリアが顔をそらした。

「皆さん、80年も王様やってた私に苦労をかけないためと、久々の六人の時間を満喫したいという思惑がありますね?」

 じっと見つめて言えば皆目をそらした。


 正解か。


「フェルモ、アドリアと連絡を取ってください、なにで躓いているか聞きたいので」

「既に用意済みです」

 連絡装置を用意しているフェルモに拍手を送ってから、通話する箇所に耳と口を当てる。



「アドリア、聞こえていますか?」

『ち、父上?!』

「今困っているのでしょう、遠慮せず、この父に相談しなさい」

『はい、実は──』





 まーた出たよ、人身売買は違法だっつってんのに、手を染めてるの。

 しかも広範囲別国でも。





「ならば、他国の王達と協力して問題解決にあたりなさい、貴方一人が負うべき内容ではないのですから」

『ありがとうございます、父上』

「何か困ったことがあったら、連絡をなさい」

『はい』

 通話を着ると、顔で笑って、心は叱りモードになる。

「皆さん、正座」

 めったにならないが、これは叱らないといけない案件なので心を鬼にして叱ります。



「──以上、わかりましたか?」

「「「「「はい……」」」」」

 全員しょげていた。

「私も皆さんとの時間は大事にしたいですが、退位しても元王。国は心配なのですよ、我が子も」

「「「「「はい……」」」」」

「……これからはゆっくり過ごしましょう、アドリアの件の時以外は貴方達との時間に私の時間を割きますので」

「そ、そんな、ダンテ様」

「ダンテ、それはいけない、お前は無理をする」

「そうです、ダンテ、貴方は無茶をする」

「そうだぞ、ダンテお前は無理をする」

「そうだ、ダンテ無理をするのがお前だ」


──あるぇー?──


「……わかりました、自分の時間を作りつつも、みなさんと過ごします」

 そう言うと漸く皆は納得してくれた。



 それから、夢のような毎日が始まった。

 いや、もっと正しく言えば、学生時代のような毎日が始まった。



 私は小説を書き、合間があれば、それを一人で読んだ。

 そしてエドガルド、エリア、クレメンテ、アルバート、カルミネといちゃこらしながら時にはベッドの上で抱き合い、体を抱き、皆で眠った。



 それをしていて、どれくらい時間がたったのかは、私は分からなかったが、気がつけば私は死への恐怖が無くなっていた。


 もう、いつ終わってもいいと感じるようになったのだ。


「皆に話したい事がある」

 伴侶達を呼ぶ。

「そろそろ命を返そうと思う」

「そうか……決めたんだな」

「はい、エドガルド」

 不思議と、皆不安な表情は無かった。


「いつ命を返すかなーと思ったが大分時間がたったな」


 カルミネがそういうとアルバートが笑った。

「だが、楽しい時間がたくさん過ごせたじゃ無いか」

「ああ、そうだな」

「はい、そうです……」

「ええ、そうですね」

「そうだな」

 フェルモが近寄ってきた。

「フェルモ、お前には長いこと迷惑をかけてしまったね」

「いいえ、ダンテ陛下。命の方を看取らせていただきます、いつ頃?」

「明日」

「分かりました、アドリア様達にもお伝えします」

「わかった」

 私はそう返した。


 そしてその夜、皆で眠ることにした、並ぶ順番はエドガルドが私の左隣、エリアが右隣、で、エドガルドの隣がアルバートで、エリアの隣がクレメンテで、カルミネが端っこだった。


 たくさん、話をした。

 今までの人生どうだったのか。

 来世でも、また伴侶になりたいとか。

 そういう話をした。



──まぁ、来世があるならトラブルがない平和な時代がいいなぁ──



 と思いつつ語り合った。





 そして、翌日。

 朝一でアドリアが駆けつけてきた。

「父上……」

「アドリア、あまりよい父で無かったかもしれないな、すまなかった」

「いいえ、父上、貴方は最高の父です」

 アドリアは泣きながら私の手を掴み、エリアの手も掴んだ。

「母上……」

「アドリア……立派な王様になったのですね……僕は嬉しいです……」

「母上、貴方にそう言って貰えて、私は誇らしいです……」

 そういう最後の会話をしていると、残りの子等も全員入ってきて、会話が続いた。


 泣かない子もいれば、泣きじゃくる子も居た。


 我が子とお別れか、と内心寂しくなった。


 が、決意は変わらない。


 皆とベットの上に寝る、全員が私の手を掴むような体勢を取る。

「──女神インヴェルノ、主神アンノよ。この命、お返し致します──……」

 眠気がやってきた、そのまま眠りに私は落ちた。


 二度と目覚めることの無い眠りに──……





『よく生きたな』

「はい、生きましたよ」

『お疲れ様』

「これから私はどうなるんですか?」

『まぁ、ここまでやっちまったから私の手伝いをしばらくしてもらうぞ』

「はぁ」

 それもそうだな、と思ってると──

『彼らと共に』

「へ?」


「「「「「ダンテ(様)!!」」」」」


 皆が駆け寄ってくる。

 私は抱きつかれ倒れてしまう。


「ど、どういうことですか神様!?」

『いやぁ、来世でもダンテと一緒に居たいとこの者達が言うから、それまでダンテと私の仕事の手伝いをしてくれたら約束しようと言ってしまってな』

「はぁ?!」

「ダンテ様、このフィレンツォ何処までも貴方様と共に」

 フィレンツォが膝をつく。

「死後も、そして永遠にお前と共にある、ダンテ」

 エドガルドがそういい、うっとりとした笑みを浮かべる。

「僕は永遠に貴方のものです」

 エリアははっきりといった。

「一生どころか、永遠に離さないぞ、ダンテ」

 クレメンテが腕を掴む。

「これからもいっしょだな!」

 と、アルバート。

「何か色々すまないな」

 申し訳なさそうなカルミネ。

「──ええ、いいですよ。魂が朽ち果てるまで、私は貴方達と共に」

 そう言って皆と笑い合った。





 美鶴の人生はあっけなく終わった。

 ダンテの人生は長く、そして誇りをもって終わることができた。


 でも。


 私の道はまだまだこれかららしい。

 愛しい伴侶達と執事と共に、これからも歩いて行こうと思う。


 山があろうが、谷があろうが、今の私は笑って歩ける。


 だって。

 最愛の人達がいるから──






















End...

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ハッピーエンド=ハーレムエンド?!~アフターストーリー~ ことはゆう(元藤咲一弥) @scarlet02

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