第29話 レニアーリス姫の華麗なる奴隷生活⑧
「はい、あーん。」
「あ…。」
「うん、上手に口を開けられてえらいね。さすが僕の小鳥ちゃんだ。」
よしよしと頭を撫でられるのが嬉しくて、レニアーリスはカッツの手のひらに擦り寄る。するとカッツは優しく微笑んで抱きしめてくれた。
「可愛いね。なんでもしてあげるよ。何か食べたいものはある?」
「…カッツのスープが一番美味しい。」
「っ~~~~~!可愛いーーー!」
「…僕のなのに。僕のなのに!僕のなのにぃ!!」
「…お前がちゃんと面倒みないからだろ。」
カッツとレニアーリスが食堂でイチャイチャしているのを、ルウィスとベルが向かい側のテーブルに座って眺めている。ベルは悔しそうにフォークを強く握りしめ、ルウィスは呆れたようにため息をついている。
結局、レニアーリスはカッツに世話をされるとこになった。ベルは強固に反対したが、食事を引き合いに出されて、何も文句が言えなくてなってしまったのだ。生活する部屋もカッツの部屋に移され、いつも同じベッドで眠っている。
「あ、そういえばあの女はどうなったの?」
レニアーリスの口に食事を運びながらカッツが2人に尋ねる。
「あー、あいつ?どっかの農夫に売り飛ばしたよ。なんでも村に女手が欲しいってな。」
「まぁ、何の女手が必要かまでは知らねーけど。」
ベルとルウィスが顔を見合わせてニヤニヤと笑う。それを見ながら、レニアーリスはおそらく碌でもないところに売り飛ばされたのだろうと考える。少しだけかわいそうな気もするが、自分もなかなかの嫌がらせをされたのを思い出し、自業自得だと思い直す。
「ねぇねぇ、お姫様。大事にするから僕の部屋に戻っておいでよ。僕、君が夜中に女神にお祈りする声がすごく好きだったんだ。」
「っな!聞いてたのか!」
「うん。すごく静かな声なのに、優しく響き渡ってて心が落ち着くんだ。あれがなくなってから、なんだかうまく眠れないんだよね。」
「あー、だから俺も最近寝不足なのか。なんか足りねーなぁとは思ってたんだよな。」
兄弟2人が頬杖をついてレニアーリスを見つめてくる。
「なーんか俺もお姫さんのこと気に入ってんのかも。なぁ。カッツより大事にしてやるから戻ってこいよ。」
「スープなんかよりもっと美味しいもの食べさせてあげるからさぁ。珍しいお菓子とかあるよ?」
2人が必死にレニアーリスの気を引こうとしてくる。出会った時とは全く違う態度に、レニアーリスがふふっと笑う。つい漏れ出てしまったような、彼女の素の表情に、兄弟はつい頬を赤らめてしまう。
「ダメダメ。この子は僕の。絶対に渡さないよ。小鳥ちゃん僕がいいよね?」
言葉とは裏腹に地震なさげに問いかけてくるカッツが大変可愛らしい。レニアーリスは優しくカッツの頭を撫でる。
「わらわは、そなたがいい。」
「僕もだよーーーーー!」
「なんでだよ!」
「僕の方がかっこいいのに!」
ギャーギャーと騒ぎ出す3人を部下たちがなだめようとしているが、全く収まる気配はない。
(思ったより随分と愉快で優雅な生活をしているのぉ。)
姫には戻れないけど、この男たちの小鳥として暮らすのも悪くはない。レニアーリスは少しだけそんなことを思ったのだった。
私の幼馴染の方がすごいんですが…。〜虐められた私を溺愛する3人の復讐劇〜 めろめろす @meronmeron96
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