両☆片思いの幼馴染の仲を取り持ってみた(慎太郎に彼女がいないIF世界)
「疾風から告白されたい。きちんと告白されたい。三度目の告白はきちんとOK出す」
ブツブツと幼馴染、兼悪友の楠瀬真琴が俺の前で呟いている。
真琴の想い人の倉敷疾風と真琴、俺、一ノ瀬慎太郎の三人は小学校時代からの幼馴染だった。今更、幼馴染を振り向かせたいから手伝いしろと言われても困る。困惑しかない。
そもそも二人とも両片思い状態でくっついていないのが不思議な状態だ。
既に倦怠期の夫婦よろしく、二人同じ部屋に籠ってゴロゴロしているのに何もないらしい。
何も起こらないだと?意味がわからない。俺たち健全な高校生だぞ?普段悶々としている癖に何も行動を起こさないとか意味不明だ。―――早くくっつけよ。
さらに自分でアクションを起こしたく無いから幼馴染の俺に手伝えというのも意味不明だ。
幼馴染って万能なのか?一家に一人幼馴染をってアホか。ボケてる場合では無い。
―――思えば真琴は不幸な女だ。ターゲットの疾風からの告白が二度とも不発だったのだから。
鼻くそほじってる最中、腹を掻いてる最中に告白されるなんて前代未聞で聞いたことすらない。
疾風の告白をサポートにする予定で同席していた俺も目が点になった。そのままフォローは諦めて笑い転げていた。
そんな天然疾風に惚れる真琴も天然入ってるからお似合いではある。
破れ鍋に綴じ蓋、二人でこじんまりと纏まれば被害も広がらずに世界も平和だ。
「仕方ない、一肌脱ぐか!」
俺は自分に喝を入れるかのように叫んだ。
***
疾風の部屋に押し掛けて真琴への告白をうながす。
「えっ?もう一回告白してみろって!」
「ああ、そうだ。真琴の事好きなんだろ?」
「うん」
「告白断られても諦めて切れないんだろ?」
「うん」
「だったら難しいこと考えずにもう一度告白しろよ。今度は上手くいくって。俺を信じろよ」
「信じる信じないじゃなくて、次も断られたらどうしよう?」
「絶対に断られないって!万が一、断られたとしてもして何が変わる?何も変わらないだろ?今までだって変わらなかった」
「確かにそうかもしれない。でも、そうじゃないかもしれない」
そんなわけねぇよ、思わず口に出しそうになった言葉を止める。
「男ならグズグズ泣き言を言うな!明日の放課後に屋上に来い。ちゃんと真琴に告白するんだぞ!俺は真琴を屋上まで連れて行くから、逃げるんじゃねえぞ、男だろ!」
俺は捨て台詞と共に疾風の部屋を出た。
***
翌日の放課後、俺と疾風と真琴の姿は屋上にあった。
「疾風、私に話したい事があるって、何かしら?期待してもいいのかな?」
天然の真琴が無意識に疾風にプレッシャーを与えに掛かる。
「ああ」
―――
沈黙が屋上を支配する。そこは一拍以上間を開けるんじゃねえよ。
「それで、何かな?」
さすが真琴、その調子だ。
「僕は真琴の事が好きです!」
―――
またしても沈黙が屋上を支配する。だから一拍以上間を開けるんじゃねえ!
「私も疾風の事が好きよ。大好きよ」
ナイスだぞ、真琴!女にここまで言わせて何グダグダしてるんだよ、腹くくれ、疾風!
「僕と付き合ってください。お願いします!」
発言と同時に疾風が頭を下げ右手を真琴の方に差し出した。
いつの時代の告白だよ。真琴の待ってたのは多分"壁ドン"だぞ!?
"壁ドン"して『僕と付き合ってくれ』で済んだ話だぞ?何やってるんだ?
下手したら三回目もNG出たらどうするんだよ?四度目は手伝わないぞ、マジで手伝わないぞ、本当だぞ、嘘じゃないぞ。
「嬉しい、すごく嬉しい。あれ?変だな、嬉しいのに涙が出てくる。これからは彼女としてよろしくね、疾風♡」
顔を上げた疾風に真琴が飛び付いて行った。
あれ?俺、何でここにいるんだろ?完全なお邪魔虫じゃね?
二人とも俺の事なんて眼中にないから気にしなくていいのか?
取り敢えず俺はコソッと屋上から退散するのであった。
「幼馴染なんてくそったれめ!」
俺も早く恋人作ろう。
他の男を懸想してる女の照れ笑いに惚れるなんて、不毛でしかなかった。時間の無駄だ。
誰か、俺の事を想ってくれる女の子を見つけよう。
大好きだった幼馴染と幼馴染が付き合い出した 青空のら @aozoranora
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