第二章:今、このままがいい
(1)
翌朝、社長も「ぼくのかんがえたさいあくのサイコパス」を演じてた例の若造も真っ青な顔になっていた。
「えっ? 居なくなったって、どう云う事?」
映画やドラマだったら、こんな風に相手に言われた事を鸚鵡返しに聞き返す奴なんて現実に居ねえよ、と言いたくなるような状況だ。
しかし……社長も事態を把握出来てないのだろう……。もしくは、社長の脳が事態を把握する事を拒んでいるか。
「そ……その……朝になったら、宿から消えてました」
ピンク・ホラー(リングネーム)は「サイコパス」と云う自分の設定を忘れ去ったかのように……おどおどとした
何かマズい事になった時に、こう云う
想定外の重大なハプニングが起きた場合、人によって2種類の状態のどちらかに陥る。
絵に描いたようにパニクる奴と、感情が麻痺して何も出来なくなる奴と。
この若造は後者らしい。
そして、事態を打開出来ない可能性が高いのも後者だ。
そりゃ、そうだ、完全に固まってるんだから。
ヤクザがバックに付いたと聞いて、早速、逃げ出した奴が出た。
社長が集めた「魔法使い」の中で、(多分)最強だったミッドガルド・サーペント(リングネーム)だ。
社長は、あわててミッドガルド・サーペント(リングネーム)に電話……。
1分経過……。片手の指で机をコツコツコツコツ叩き続けている。
1分半経過……。コツコツコツコツのペースが上がる。
2分経過……。コツコツコツコツのリズムが大きく乱れる。
3分経過……。泣き出しそうな
「あ……あの……」
社長は……完全に涙目になっていた。
「み……みなさんは……逃げたりしませんよね?」
いや、逃げてえよ……。
そう言いたくなった時、社長の
「あ……どうも……え? 本当ですか? ありがとうございます。はい、もちろん、喜んで」
社長が喜ぶと、悪い予感しかしねえ。
もっとも、社長が青い顔になってても、悪い予感しかしねえが。
「社長、誰からだ?」
「スポンサーからです」
マズい。
「スポンサー」ってのは、ヤクザの事だ。
ただのヤクザじゃない。「獣化能力者としては日本最強。東アジアでもトップ3入りは確実」な、あの銀色の狼男が所属してる組だ。
「スポンサーが紹介する『魔法使い』をウチで使えないか、って事なんですが……」
ヤクザお抱えの魔法使いか……多分、その中でも使えねえ奴か問題が有る奴を押し付けられたな、こりゃ。
魔導兇犬録:哀しき獣 @HasumiChouji
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