第24話 未来の敵
*異世界6日目:昼
「マスターの仰る通りスパイは必要ですが、それは潜入隠密に向いた魔物でも代用出来るのでは?ハイドスネークやシャドウスネークは狭い場所にも入れて優秀なスパイになれます。」
それはそうだ。人間では入れない隙間に入れる魔物ならスパイとして最強だろう。
「あぁ、それは分かってる。そういう場所に潜入するのは魔物達に任せるつもりだよ。」
「人間にはそういう潜入調査じゃなくて、その国の情報とか噂を流させたりとかさせればいいんじゃないかと思ったんだ。スパイと言うよりは工作員?みたいな感じ。」
「なるほど、工作員としてなら確かにそうですね。魔物は喋れませんし、受動的な諜報活動しか出来ませんから。」
「人間もSPで作れるようになったけど、国としては他国の中枢にスパイを送り込むだろ?そういうところにコストを回したい。市場調査とか噂話を集めるくらいのことは現地の人間を使いたい。」
危険度が高い仕事をする場所にコストを掛けてやらないと、バレたら全部台無しになるし。
「…そうですね、確かにSPはまだ貴重ですしコストの削減は理解出来ますが、孤児の養育にそれ以上のコストが掛かるのでは?」
やっぱりそこだよな。俺もそう思う。
「そう!だからそこで働かせます!場所はこっちで整備する必要があるけど、水田と坑道で働いてもらう。食料は自分達で作らせて、鉱石分で面倒を見る形だ。」
「国を運営するにも政治医療教育はこっちが独占するけど、他は民間に任せるし、教育なら俺達に恩を感じてる奴らの方がいいかもしれないし。」
「孤児の生活基盤を整えて、将来こちらの味方にするんだ。教育者になるも良し、民間で働くも良し、恩を忘れて敵対するなら処分してSPにするも良し。優秀な奴なら孤児でも成り上がらせて、他の人間に夢を見せるのも良し。」
「俺達の味方になるのなら生きていく上で必要な物は用意する。金と軍事力は求めてないから、名声、名誉、栄光、そういうモノを高めてくれる人材が欲しい。」
「と言うのは敵を作らないためだよ。別に敵と言っても戦争なら負けないけど、こっちには女神の宗教があるだろ?聖戦とか言って仕掛けられたら面倒だし。地球じゃ宗教対立で1000年以上ドンパチやってんだ、そんなの付き合ってられねぇし。」
「俺は出来れば敵を作りたくないんだ。ただでさえ女神が敵なのに他の奴に手間を掛けたくない。未来の敵が減らせるなら多少のコストを払ってでも、手を出しにくい国を作りたい。」
「…マスターのお考えは分かりました。では優先順位はどうされますか?」
(どうするか…。孤児を拾ってくるにも置いておく場所が無いし、水田の整備も国の近くの方が良い。坑道も国の近くの山中が自然だし…。)
「まず第一優先は国の発見、調査だな。今MAPはどうなってる?」
「西に飛んでいるスピードファルコン達は未だ何も見つけていません。西は1800km先まで何もありません。」
「東のクロウ達は海に辿り着きましたので、海岸線を北に向かわせてあります。東は約300kmで海ですね。」
「東は300kmか…。南は?南も海に着いたでしょ?」
「南も約300kmです。今はクロウ30体が偵察しています。」
「東西に何も無いなら南北どっちかだけど、縦が680kmだっけ?あと380kmの間に固まってんのかな?」
「それは分かりませんが、大陸東部にはまだ入植していない可能性もあります。何しろ横に4200kmありますから、周辺国というのも比較的近いとかそういう場合も考えられます。」
…それは考えていなかった。地球基準で考えていたけど、ここは異世界。魔物が居るからどこでも開拓出来るわけじゃない。
「マジか…。…もう地図買っちゃうか?2万SPなら払っても良いんじゃ…?」
「地図があった方が偵察も集中出来ますし、マスターがよろしいのでしたら。」
「じゃあ買うわ、先行投資も必要だし。」
邪神ショップの情報から、
イステルシア大陸・全土地図:20000
の購入ボタンを押した。
:MAP機能が強化されました。
コアウィンドウでMAPを開く。
MAPには今までの歪な形の表示ではなくて、長方形に形成された大陸が表示されていた。
今まで偵察されていた部分はハッキリと、それ以外の場所は山と森と川、地域の名前が表示されている。魔物の光点は無くて、地形的な情報で確かに「地図」だった。
「あぁー、本当に地図だな。まぁこれでも平地とか名前が付いてる場所の近くに人間がいるはず。」
「そうですね。やはり北に国はありそうですよ。ここがパーシリカ教区になっています。この円が都市国家パーシリカだと思います。」
「お?…本当だ、よく見つけたな。」
ダンジョンから北に約360kmの地点、海岸から少し内陸に小さな円のパーシリカ教区を見つけた。
「じゃあこの辺りに他の国もありそうだな。西に飛ばしてるスピードファルコン達をこっちに向かわせてくれ。西はとりあえずは引き上げよう。」
「はい、伝令を飛ばします。それとマスター、そろそろ昼食のお時間です。少し休憩なさって下さい。」
「…分かった。食べたら戻ってくる。」
昼食を持ってコアから離れた。
***
昼食を食べ終えてコア前ソファーに戻ると、
「マスター、川に沿って北上していたスピードファルコンが集落を見つけました。人間を見つけた時の飛び方をしています。人口は約70ですね。」
「おぉ!マジか!どの辺り⁉︎」
「盆地から約120km北の川沿いです。まだどの国の村かは分かりません。」
「そうか…。まぁそれは後々分かるからいいよ。いやー結構長かったなぁ、ほぼ1週間だもんな。」
異世界に来てからやっと人間を見つけた報告に少し興奮してしまった。
この人間達を増やして、滅びないように間引きながら繁栄させていく、計画が始まる。
トラックドライバー、女神を殺す 佐島トム @tom_sazima
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