第16話 後悔

見覚えのない天井。


見覚えのない枕。


見覚えのない布団。 


見覚えのない壁。


見覚えのない床。 


気づけばこれほど気持ちよく眠れたのは久しぶりかもしれない……………王国では成績を下げないため毎日夜遅くまで復習し、寝るときには日が変わっていた事なんて珍しくはなかった。


リズム良く「タッタッタッタッタ」と言う音が聞き心地が良く。そして鼻につく味噌と炊き立てのご飯の匂いが食欲をそそりネフの意識を覚醒させる。


俺はどれぐらい眠っていただろうか……………わからん。わかるのは俺がでっかい布団で寝ていたことだけだ………………ん?なんで俺はこんなとこで寝てんだ?てかここどこ?



ネフの意識が完全に目覚めようとするそのときだった。



「あ!起きダカ!」


その声は「タッタッタッタッタ」と言う音が消えたと同時に聞こえた。


「ッ!?お、お前!?」


確かこいつは……………森でいた巨人!そして俺はこいつと戦ったはず……………いや、確かこいつは目を輝かせて…………そうだ!こいつは『魔眼』保持者だ!そしてその『魔眼』で俺を……………俺をどうしたんだ?なんで俺はこんなところで眠ってたんだ?


俺が考えていた間、無言の時間が続いた為、巨人が俺を「だ、大丈夫ブカ?」や「どこカ具合悪イガ?」と言って俺を心配する態度をとっている。


俺はすぐに構えをして相手を警戒する……………が、それは無意味に終わる。


何故なら俺が眠る直前、この巨人がオロオロしていたのを見たのを思い出し、ある言葉を思い出したからだ。



『何もしていない者を傷つけるのはいけない事だ。どんな種族であってもね…………レンはそんな人にはなっちゃダメだよ?』



それは自分が最も尊敬する兄、クトの言葉だ。



…………こいつは俺に何もしてなかったのに、俺はこいつを攻撃した…………もう手遅れか…………。


ネフは「はあ」とため息し、悲しそうな顔でどこか遠くを見ているようだった。そして構えをしたと思ったら何故か悲しそうにどこかを見ているネフを見て、初めて会った時のようにオロオロしている巨人。おそらくどうしたらいいのかわからないのだろう。ネフはそんな様子の巨人を見て自分がどれほど馬鹿な事をしていたのかを自覚し、後悔をしていた。


「今の俺を見たらクト兄は悲しむだろうな…………」


「ンダ?」


その巨人はネフの言ったことの意味がわからなかったのか頭を横に傾け頭に?が浮かんでいるようだった。だがネフは今の話についてこれ以上は言うつもりなかった。


「あの…………悪かっ…………いや、すいませんでした」


俺はそう言って目の前の巨人に深く頭を下げた。


そんな俺を見て目の前の巨人が「頭ヲ上ゲてグレ」と言ってオロオロしだす。


見ただけで分かる…………こいつは心優しい奴だ…………はあ…………俺はそんなこいつに攻撃を……………クソ野郎じゃねぇか…………馬鹿野郎。


自分を責め、後悔することしかネフには出来なかった。


そして、俺は満足するまで数分ぐらいして頭を上げ、目の前の巨人を見た。


すると巨人は急に悲しそうな顔をして喋りだす。


「し、心配したんダオ。キミ、3日寝たっキリダタから」


「………3日!?俺はそんなに寝てたのか!?」


「ンダンダ」


巨人はそう言って頭を縦に振る。


てか3日!?俺そんなに寝てたのかよ!?いや、確かにめっっっちゃ疲れてはいたけど……………まさか3日も寝ちまうなんて………………。


この巨人は何故か片言のせいで所々聞きづらい事が多いが全くわからない程ではない。だが内容を理解するのに多少時間が掛かってしまうが。 


そしてこいつがこんな悲しそうな顔をしてるってことは、それほど俺のことが心配だったのだろう。


……………ほんといい奴だな、こいつ。


すると、巨人は「あ、そうイエば言っデなかっタダ」と言って再び口を開く。



「オレはスカルだ」


「俺は……………ネフだ」


言われて気づいたが俺たちはまだ挨拶をしていなかった。


「スカルか…………えっと、すまなかったな………それに、ありがとな」


俺はそう言って右手をスカルの前に出す。


「ンダ?」


だがスカルはその意味が分からないのか、また頭を横に傾げ、頭に?を出している。


「え〜と、俺がこう手を出したらお前も手を出して握手するんだよ」


「アクシュ?」


「あ〜と、こうだ!これが握手だ!」


俺はそう言ってスカルの右手を俺の右手に触れさせ、握手する。


「握手はな、挨拶するときや友達と約束なんかをするときにやるんだ!」


「ヤクソク?」


どうやらスカルは挨拶は知っているようだが約束を知らない様子だ。


「約束ってのはお互いに言ったことを守るって意味なんだ」


「オ互いニ………守ル…………約束」


今のでわかったのか、スカルから?が消えた気がした。


そしてスカルがまた何かを思い出したのかあるいは忘れていたのか、「アッそういエバ!」と言って慌て始めた。


「悪かったダ!」


「…………え!?」


スカルはそう言っていきなり俺に頭を下げ、いや土下座をして謝ってきた。


俺は何が何だか分からず先ほどのスカルのようにオロオロしてしまう。


「いや、なんでいきなり土下座なんか……………頭あげてくれ!てか土下座するならお前じゃなくて俺の方で!」


「ネフくんを眠ラシタのはオレなんダ!」


…………ん?


「え?どう言うことだ?」


「ネフくんはオレの『魔眼』のセイで眠っチャッタんダ」



あ……………そういやあスカルは『魔眼』保持者だったな。





 













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覇皇なる道〜陽なる陰の者〜 スバルン @subarun727

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