こひねがふ

 今日、とある高校3年生の女の子に尋ねられた。なんのために生きているのですか、と。その子は最近生きるのがしんどいのだという。


 なんのために生きているのか、という問いに対しては人の数と同じ答えが存在するにちがいない。


 私は、幸せを感じる瞬間があるから、生きている。

 というより、その瞬間のおかげで、生きたくないとは思わない。


 20歳になって、たくさんの人と出会って、いろいろな考え方に触れ、心地のよい人たちにめぐり合い、幸せと感じる瞬間が増えた。言い方を変えれば、小さな幸せをたくさん見つけられるようになった。


 たとえば、朝に温かいココアを飲んだとき。お気に入りの音楽を聴いているとき。おいしいごはんを食べられたとき。いつもより綺麗な文字を書けたとき。ちょっと夜更かしできたとき。


 しかし、どうしても気分が沈むときはある。さみしくて切なくて、誰かの腕に抱かれたいと思うこともある。つらくて悲しくて、枕に顔をうずめて涙することもある。

 

 辛い日もあるけれど、幸せな日もある。


 どうして生きているのか、その問いに答えることはできない自分がとても不甲斐ない。

 

 ただ、その子にとって「あ、なんだ、生きることも悪いことじゃないじゃん」と思える瞬間が少しでも増えたらいい。


 どうか、どうか、日々を乗り越えていけますように。

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こころのまにまに 紡木きよ @bunnei1614

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