変な人だ。



「……だから、そこで言ってやったんだよ。『帰れ、馬鹿野郎!ここはテメェがくる場所じゃねぇ!!』ってな。そしたら、あんな様さ。ったく、最近は変な奴らが増えてきて物騒な国になっちまったよ…!」

「へぇ…そうなんですか。じゃあ、その人も区兵さんに?」

「あぁ、そうさ。でもその区兵も区兵だよ。この家ほったらかして、そいつ連れてくと二度と姿見せやがらねぇ!今度会ったら引っ張ったいてやる!!」

「あんま、やり過ぎたらオジサンが連れてかれちゃいますよ?」

「ふん!こう見えて昔はB級冒険者だったんだ、区兵の一人や二人追っ払ってやるよ!!」

「あはは…。」

 いつ帰れるだろ。

 そんな気持ちが俺の頭を過ぎる。

 俺は今、依頼の最後の民家の前で困っていた。


 これまでの四軒と目の前の家。その全ての修理依頼を出した原因が、ある事件によるものだった。


 突然、変な人が家を破壊していった。

 家に押し入ってきた女が最初はまともだったのに、急におかしくなった。

 そして、そんな人たちの最後も同じ。区兵が連れていったけど、家のことや自分達のことは放ったらかしで、その後も姿を見せない。


 そんなことがあったもんだから、これまでの家主は全員別れ際に俺に愚痴ってくる。

 最初はちゃんと聞いていたが、毎回毎回同じような話ばかりでうんざりしてきたのだ。


「…じゃあ、これで失礼します。また何あったらギルドの方へ。」

「あぁ。……ったく、あんな野郎…!」

 オジサンは怒りが収まらない様子で、家の中へと戻っていった。



「…ふぅ。なんか無駄に疲れた気がする。てか、もう夕方かよ!」

 修理の方はスキルで早くに終わったのだが、家主たちの愚痴が多すぎて予想以上に依頼が長引いてしまった。


 少しため息をつきながら、残りの依頼を確認する。

 ブルズビーの巣はここから少し遠いところにある村にあるらしい。

 夢見樹は夜にならないと取れないみたいだ。


「行くとしたら…夢見樹かな?ブルズビーはその後でいいか。」



 夢見樹を取りに行くため、前に潜った王都の門まで来た。

 門番さんに門を開けてもらい、外へ出る。

 そして、この先の森に夢見樹はあるようだ。



「ここって…、確か俺がいたとこ?へぇ、ここにあるんだ。…えっと【夜になると発光する】ね。いや、情報すくな…!」

 依頼書を見ると、夢見樹の情報が載っていた。

 夜にならないと見つけることができないため、時間を潰すことにする。

 とりあえず、俺は剣を抜いた。


「こう、振って…!こうの、こう!いや、こっちに流してもいいかな。……ん?」

 俺が剣の素振りをしていると、目線の先に気になるものを発見した。

 それは、フラフラと右に左に倒れそうになりながら森の奥に入っていく男の人だった。


「大丈夫かあの人?……後、尾けてみるか。」

 剣を鞘に収めて、男の人の後を追う。

 どんどん森の奥へと入っていくと、空き地に出た。そこにはなぜか祠が立っている。


「なんだ、あれ?…神様みたいなことか?」

 その人は祠の前に立つと、お金を投げ入れる。

 参拝のようなものだと思い、俺は落胆して来た道を戻った。


「ただのお参り…?なんだ、面白いこと起きると思ったんだけど…!?いや、え!」

「ヴァァァァァァアアアアアアア!!!!」

「ぇぐぅ!!?」

 突如男の人は振り返ると、俺の腹に突撃してきた。

 普通の人とは思えないような力に吹き飛ばされ、後ろの木に背中を打ち付けた。

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女神から広告ガチャのスキルを貰ったのに、当たりが出ないんですけど!!?? 何田鯉津 @rokorokoend

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