第21話 魔法少女

「勇斗の説明だとウィザードは遠距離専門。いくつものスペルカードがある……今適切なカードは……コレね!」 


 私は一枚のカードを引き出すとベルトのバックルと一体となったデッキにスキャンさせる。


【ファイアーブラスター】


 スペルカードを読み込ませると、不思議とその使い方が頭に思い描かれる。


 私は片手を前に突き出し、手のひらを開いて勇斗を苦しめるムチ野郎を睨みつけた!


 瞬間


 コオ──ッ!という激しい熱光線がムチ野郎を撃つ!


「なっ!?うおおおおおお!」


 ムチ野郎は熱光線に弾き飛ばされ、空高く打ち上げられると、ドドン!とその身を地面に打ち据えた!


「一体何が……」


 防御姿勢でムチの猛攻に何とか耐えていた勇斗が私へと視線を向ける。

 ボロボロで今にも倒れそうな勇斗に私の怒りは天を穿った。


【スペルブースト】

【スペルブースト】

【スペルブースト】


 デッキから立て続けに引き出したカードを読み込ませると私の周囲でバチン!バチン!と空気が弾ける。

 まるで途轍もないエネルギーが今にも暴走寸前かのように──


「ぐぅ……横槍とは卑怯な!」

「お前が言うな!」


 苦しげに顔を歪ませ膝立ちで私を見るムチ野郎が明らかな言葉のブーメランを放つが、それは私の逆鱗。


 一枚のカードをデッキにスキャンし、両手を開いて前に突きだす!


【ホーミングレーザー】


 十指の指、その先端から放たれた閃光がムチ野郎に向かって空を奔る!


「ぬお!」


 向かい来る閃光をムチ野郎は転がり、飛び、建物の影へと隠れてやり過ごそうしているけれど


「その全てが無駄なのよ!」


 十本の閃光は回避行動を取るムチ野郎の横を、後ろを、そして正面、さらには空からと、ムチ野郎がどれだけ逃れようとしても追い続ける!


「ぐがっ!」


 ついに逃げ切れずに一本の閃光がムチ野郎を穿つ。

 着弾と同時に炸裂するエネルギーが穿った箇所を爆発させる。


「お……おおおおお───」


 両腕が、両脚が、両太腿が、腹に両胸、そして頭部、最後に全身を灼き尽くすように閃光は束となってムチ野郎をこの世から消滅させたのだった。


「ふぅ……」


 ムチ野郎が断末魔の悲鳴すら残せず塵となったのを確認した私は深い息を吐いて地面に座り込む。


 どうやら腰が抜けたらしい。

 怒りに任せて勇斗の敵を倒したけれど、人を一人殺してしまったという事実が心に重く伸し掛かった気がした。


「そうだ。勇斗」


 私はキョロキョロと辺りを見ると勇斗は呆然としたまま座り込んでいた。

 ダメージが抜けていないのかもしれない。

 私は立ち上がると勇斗に向かって歩き出す。


「大丈夫?」

「あ、えっと……君はウィザード?」

「うん!」

「めっちゃ強い!アホ強い!馬鹿強い!ズルい!何なん俺最弱なん!?棒切れ振り回すだけの俺との圧倒的格差に全オレが泣く!」

「いや、そんなことないよ!」

「しかも可愛いい!スタイル抜群の魔女っ子!しかもスカートが短くてスパッツはみ出してる!パンツが見えないとか関係ないくらいドエロいぐへぇ!」

「勇斗ッッッ!」

「いってぇ……そんな感想くらいで頭蹴り飛ばさなくても……って今なんて?えッ?身バレッ?」

「私よ!あ・お・い!」

「うええええ!?嘘だ!俺の葵はおっぱいそんなに大きくない!」

「見てるのはおっぱいだけなの?ねぇ?」

「え、いや……お尻もいいよ……ね?」

「勇斗おおおおおお!」


【ライトニング】


 キレた私は一枚のカードをスキャン。

 指先を勇斗に向けて力を解き放つ!


「おあああああああ!」


 バリバリバリバリ!と強烈な電撃が勇斗の身体を打ち据えると、私会心の焦げオーガの出来上がり。


「葵って……怒ると怖いのね……ガクッ……」

 

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変身ヒーローになったら彼女が出来たのでイチャラブするついでに世界を救います! @GARUD

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