第20話 山城葵
勇斗がサムズアップして鏡の中のへと飛び込んで行った。
一人勇斗の部屋に残された私はウィザードのカードを一通りデッキへと入れる。
「勇斗……大丈夫かな」
私は鏡の向こうへと意識を向けてみるけれど、特に何か変わる事はなかった。
「私も勇斗の力になれたら良かったのにな」
勇斗の帰りを待っていると突然、カードデッキが光を放ち始めた。
その光は一筋の線となって鏡の向こうへと伸びる。
「なに?」
私は恐る恐る鏡を覗き込むと、そこには勇斗がバッタの怪物と戦う姿が映し出されていた。
「あ、そこ!」
鏡の中でオーガとなった勇斗が手にした鉄の棍棒みたいな物を手に、怪物をボコボコにしている。
ついには赤く光る蹴りが怪物を打ち爆発した!
「やったあ!」
勇斗がバッタ怪物を倒したのを喜んだ私だけれど、その喜びは直ぐ驚愕へと変わる。
バッタ怪物を倒して油断していた勇斗の背中が突然切り裂かれたのだから。
「隠れて攻撃するなんて卑怯よ!」
私は鏡の向こう、勇斗の背後から現れたムチを手にした男を睨みつける。
そして勇斗は否応なしにニ戦目に突入することに。
「勇斗頑張って!」
しかし、応援むなしく勇斗は中距離で戦うムチの男相手に大苦戦。
「このままじゃ……」
勇斗が負けてしまう!
私はこのまま眺めているだけなの!?
このままじゃ勇斗が死んじゃう!
『キィィィィィン』
突然黒板に爪を立てたような耳鳴りが聞こえてくる。そして
『変身してください……』
「なに!?」
『変身してください……』
「これは!」
耳鳴りで痛む頭の中に響く女の声。
これが勇斗が言っていた謎の声ね!
「変身すれば勇斗を助けられるかもしれない!」
『あなたを映し出す何かに向かってデッキをかざしてアクテベイトカードを読み込ませてください』
「ッ……こうね!」
私は指示に従うように鏡に向け、手に持ったデッキをかざしてカードをスライドさせる。
【アクティベイト】
突然カードデッキから渋い男の声が聞こえてきた。
室内に響いたイケボ。
『続けてシンボルカードを読み込ませるのです』
「こう!」
【チェンジ・ウィザード】
私の身体を青い光が球状に包み込む。
私の髪が黒から薄く透き通るような空色へ
ググッと胸が膨らみ重みが増す
引き締まった腰にベルトが回り
薄いスパッツがお尻をキュッと締め上げる
私を包む青い球体が弾けると、鏡に映し出されたのは新たな私。
大きくて可愛らしい三角帽子に襟が立ったマントが膝裏まで伸び、ふわりとした上着にスパッツを穿いていなければ明らかにパンツが丸見えになるレベルの短いスカートを纏った……アニメで見るような魔法少女がそこに映っていた。
「これが私……」
『鏡に手を伸ばすのです』
変身に感動している私に次の指示が来る
「こうね」
鏡に腕を伸ばすとトプンと水面に波紋が起こるような音を立て、私の腕は鏡に吸い込まれていく。
『次はそのまま鏡に飛び込むのです』
「そうすれば勇斗のところに行ける?」
『あなたはこの世界と鏡合わせの世界、今あなたが見ているアナザー・ワールドへ転移されます』
その言葉は私が望んだ言葉だった。
「今度は私が勇斗を助ける!」
拳を握り私は鏡の中へと飛び込んだ!
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