邪竜ギャゴーが世界を荒らしまわってみんなを困らせている。じゃあ、わたし達が平穏を取り戻します!

!~よたみてい書

邪竜ギャゴーを追って

 チャロメは赤髪を揺らしながら腰に携えていた鞘から剣を引き抜きながら、


「ギャゴー! とうとう追いついたぞ!」


 剣先を眼前のギャゴーと呼ばれた黒い竜に向けた。


 ロベリカは眉尻を上げながら鋭いまなざしをギャゴーに向けて、


「犯した大罪をここで償いなさい!」


 小さな丘程ある体をしたギャゴーは体をうずくませながら、顔だけを二人に向け、


「……むぅ、フェロットを落とした後だというのに、騒がしい奴らめ」


 チャロメとロベリカ、ギャゴーは草木が少ない荒野で見つめあい続ける。


 チャロメは語気を強めながら、


「やはりフェロットをあそこまでひどい状態にしたのは、貴様だったのか!」


 ロベリカも続けて、


「なんて邪悪な心の持ち主なの……」


 ギャゴーは口角を上げて、口内の数々の白い歯を見せつけた。


「なにをそんなに怒っている? 町が一つ……いや、もっとか? まぁよい。死者は出ておらんだろう?」


「だとしても、人間をもてあそんでいる事実は変わらないわ!」


 チャロメはギャゴーを睨みつけ、


「そこに住んでる人たちが困るだろう! それに、痛みや悲しみだって感じるんだ! これから辛い思いをしながら過ごせというのか!」


 ギャゴーは体を起こし、チェロメ達に体を向けながら見据えた。


「そうか、お前たちは町の者を思ってここまで来たのだな。ふむ。だがその心配はいらん。なぜなら……」


 不敵な笑みを浮かべながら右前足を少し上げる。


【ポフワンリー 効果:自身を中心とした周囲に10分、魔法陣の床を展開し、上昇させる 再使用時間:12時間】


「ギャゴーの久しぶりの戦果としていけにえになるのだからな!」


 ギャゴーを中心として、地面に魔法陣が瞬時に浮かび上がり、徐々に範囲を広げていく。

 そして魔法陣はチャロメとロベリカの足を飲み込んでいき、三者は魔法陣の大地に乗せられた。


 魔法陣は円を少しずつ面積を広げながら青い天空に昇っていき、三者は天空に向かっていく。


 チャロメを周囲を見渡しながら、


「うわぁっ!? なんだ!?」


 ロベリカも青髪を揺らめかせながら戸惑いを漏らす。


「えっ、これはいったい!?」


 ギャゴーは口角を上げながら、


「小さな者達の妨害を受けたくはないからな。じっくりと相手をしてあげなければわざわざ身を捧げに来た者に失礼だろう? くっくっく」


 右前足を宙で突き出しながら、両翼を小さく揺らしていった。


【ギャドゴン:三すくみ、パー 効果:大きな爆発を発生させる 再使用時間:12時間】


 すると、チャロメとロベリカの間の宙に突如爆発が起きる。


 チャロメ@7とロベリカ@4は爆音を浴びながら後方に3メートル吹き飛ばされていく。


「うわぁっ!?」

「あぐぁっ!?」


 そして宙で体を一回転させながら緩やかに魔法陣に着地した。


 二人の着衣は爆発によって少し焼け焦げ、随所が黒く染まっていく。


 また、露出している肌の所々に火傷を負っていた。


 だけど、すぐに傷がえていき、肌だけは元の健康の姿に戻っていく。


 一方ギャゴーも後方に3メートル吹き飛んでいき、体勢を立て直しながら魔法陣に四脚を静かに乗せる。


 チャロメは剣と一緒に右腕を左に持っていきながらギャゴーに向かって走っていき、


「はあぁぁぁ!!!」


周囲に叫び声を響かせる。


 また、ロベリカは顔の近くで祈るように両手を組み、チャロメの後姿を見届けた。


【立ち向かうための衣 効果が発動してから10分の間、ブレス攻撃の被ダメージを一回だけ0にする 再使用時間:12時間】


 そして、チャロメとロベリカの体に透き通っていてきらびやかな衣がまとわれていく。


 ギャゴーの目の前に移動し終えたチャロメは、左からやや右斜め上に向けて剣を振るっていった。


【斬りつけ:チョキ】


 ギャゴーは体を鈍く回転させて、長い尻尾を振り回し、チャロメの横腹にぶつけていく。


【尻尾薙ぎ払い:グー】


 それからチェメロ@6は苦痛の表情を浮かべながら後方に吹き飛んでいった。


「はぐぁっ!!!」


 ギャゴーも後方に吹き飛んでいき、不敵な笑みを浮かべながら、


「くっくっくっ」


【チャロメ 体力6/8 状態:被ブレス一回0

 ロベリカ 体力4/5 状態:被ブレス一回0

 ギャゴー 体力9/15 状態:通常    】


 ロベリカは人差し指を立てた右手を口元に近づけ、髪を揺らがせながらギャゴーを睨み続ける。


 そして、右腕を左腕にくっつけたあと、勢いよくギャゴーに向けて指を向けた。


【ボルファグン:パー 炎に包まれ、焼かれる 2ダメージ わずかに集中時間が必要 再使用時間:12時間】


 すると、ギャゴーの体が赤く燃えたぎる炎に包まれていき、瞬時に炎の鎧を身にまとっていきながら後方に吹き飛んでいく。


「うぐぉあぁぁ!!!」


 ロベリカも宙で体を一回転させながら緩やかに着地した。


 一方、チャロメは左手を強く握りしめながらギャゴーに向かって突撃していく。


【殴り:グー】


 ギャゴーは前足を浮かし、先端から伸びている鋭い爪でチャロメの前方の宙を切り裂こうとする。


【爪切り裂き:チョキ】


 そして、ギャゴーの爪がチャロメの左胸部に当たった瞬間、弾かれてしまい、体を硬直させた。


 チャロメはギャゴーの恐ろしい顔面に拳をお見舞いする。


 ギャゴー@6は鳴き声を上げながら、


「うぎゃごぉぉ!!!」


 後方に吹き飛んでいった。


 一方、ロベリカは両手で胸の前で三角形の空間を作っていく。


 チャロメは剣を鞘に納め、左手を胸の前に持っていき、指を上に向けながら手の平を広げる。

 そして右手でこぶしを作り、左手の平とこぶしを中心に向かわせ、勢いよく合わせた。


【賭けの闘志 効果が発動してから10分以内に、次の三すくみが発生したとき、自身と相手は通常の二倍のダメージを貰う 再使用時間:12時間】


 ギャゴーは正面を見据えながら笑い声を漏らす。


「くっくっくっ」


 ロベリカは胸の前で作っていた手囲んだ三角形を、ギャゴーに向けて突きだす。


【ブリースキーン:パー 体が冷気に包まれ、凍る 3ダメージ 少し集中時間が必要 再使用時間:12時間】


 すると、ロベリカの体が僅かに浮かび上がり、硬直したままギャゴーに引き寄せられていく。


「うっ!?」


 一方、ギャゴーは得意げな笑いを作りながら、加速させられながらロベリカに接近していく。


 そして、ロベリカを目の前にした途端、左前脚を持ち上げ、ロベリカの胸部に数本の鋭利な爪を突き刺していった。


【爪突き刺し:チョキ】


 ロベリカ@3は苦しそうな顔を作りながら、


「あぁぁっ!!!」


 悲鳴を上げる。


 それからロベリカとギャゴーは互いに反発するように後方に吹き飛んでいった。


【チャロメ 体力6/8 状態:被ブレス一回0 三すくみ二倍

 ロベリカ 体力3/5 状態:被ブレス一回0

 ギャゴー 体力6/15 状態:通常            】


 ギャゴーは魔法陣に足を着けながら不敵な笑みを浮かべ、


「貴様の技の特徴を見切ってやったぞ、くっくっくっ」


 チャロメは剣を鞘から引き抜きながらギャゴーに向かって駆けていく。


 そして剣先を天に向け、口を開けながら立ち上がろうとしているギャゴーの頭頂部から口に向けて振り下ろしていった。


「はあぁぁぁっ!!!」


【斬りつけ:チョキ】


【火炎放射の息:パー 火の息が前方に放射される】


「うぎゃごおおぉ!!!」


 チャロメとギャゴー@4は互いに後方に吹き飛ばされていく。


 ギャゴーは魔法陣に足を着け体勢を立て直したら、すぐさま再び後ろ脚で立ち上がり、チャロメとロベリカに顔を向ける。


 チャロメは雄たけびを上げながらギャゴーに向かっていき、


「うあぁぁぁ!!!」


【殴り:グー】


 ロベリカも二つの握りこぶしを胸部付近でつき合わせる。


【ロッヒューガ:グー 小さな岩を放出する 再使用時間:12時間】


 一方、勢いよく口を上下に裂けさせていくギャゴー。


【火炎放射の息:パー 火の息が前方に放射される】


 顔を左から右に動かしながら口の奥から橙色だいだいいろの炎を前方に放出させていった。


 放射された火炎は緩やかに曲線を描きながらチャロメとロベリカの体を包み込むように襲う。

 さらに、激しい炎が二人の衣服を黒く染め上げていく。


 そしてチャロメとロベリカ、ギャゴーは後方3メートル吹き飛んでいった。


【チャロメ 体力6/8 状態:通常

 ロベリカ 体力3/5 状態:通常

 ギャゴー 体力4/15 状態:通常】


 ロベリカは転ばないように足を細かく動かして地面を蹴っていく。


 それから右手を左腕に持っていき、手の甲で前方の宙を叩くように右に払いのける。


「チャロメ、わたし行くよ!」


【ドローネ 自身の姿を透明にし、音を出さず、匂いが消される 再使用時間:12時間】


 すると、ロベリカの姿が瞬時に消え去り、魔法陣の上にチャロメとギャゴーが残った。


 ギャゴーは笑い声を周囲に響かせながら、


「くっくっくっ、あの女はどうした? まさか恐れをなして隠れたか? これは滑稽滑稽こっけいこっけい。まぁよい。あとでじっくりとおもてなしをほどこしてやるから、安心するがいい、くっくっくっ」


 チャロメは焦った表情を浮かべながら周囲を見渡していった。


「俺一人で戦えってのか!?」


 そして、鋭いまなざしをギャゴーに向けながら突っ走っていくチャロメ。


 ギャゴーの顔前まで移動し終えたら、右手の剣を下から上に振り上げ、ギャゴーの顎から斬り上げる。


【斬撃:チョキ】


 しかし、剣をギャゴーに当てても弾かれてしまい、更にチャロメは体を硬直させ隙を見せてしまう。


 そこにギャゴーが振り上げた右前足首でチャロメの頭上を上から叩きつける。


【竜パンチ:グー】


 チャロメ@5は小さな鈍い音を鳴らしながら後方に飛ばされていく。


 そしてギャゴーはチャロメに向かっていき、右翼みぎよくを大きく左に振っていった。


【翼で殴打:グー】


 チャロメも応戦し、剣を左から右に斬り込んでいく。


【斬撃:チョキ】


 しかし、チャロメ@4は再び後方に吹き飛んでいった。


 体勢を立て直したギャゴーは後ろ足で立ち上がり、恐ろしい口を上下に開こうとする。


 一方、荒げた声を響かせながらギャゴーに突撃していくチャロメ。


「うあああぁぁぁ!!!」


【殴り:グー】


【火炎放射の息:パー 火の息が前方に放射される】


 橙色だいだいいろに染まったギャゴーの口から、炎の川が前方に流れ落ちていき、チャロメは橙色の波に飲まれてしまう。


 来ている着衣を黒く焦がしながら後方に向かって宙を舞っていくチャロメ@3。


「うわあああぁぁぁ!!!」


 魔法陣に着地し終えたギャゴーは不気味に笑いながら、


「くっくっくっ、威勢はいいが、状況は好ましくないようだな?」


 ギャゴーがチャロメに向かって脚を一歩、また一歩踏み出していく。


 そしてもう一歩踏み出した時、ギャゴーの足元から体に電流が青白い光を放ちながら伝っていった。

 電流は体から口先へ、または両翼の先端や尻尾の先まで伝播でんぱしていく。


 ギャゴー@0は大きな悲鳴を上げながら強制的に宙を後方に飛ばされていった。


「ぎゃぐぁあああっ!!!」



 透明になったロベリカは、すぐさま駆け足で反時計回りでギャゴーの左側面に移動していく。


 そして、ロベリカは握った手を静かに胸部に添え続けた。


 前方ではチャロメとギャゴーが激しい攻防を繰り広げている。


 十数秒ほど髪をなびかせながら静止し続けたら、右の握りこぶしを頭上高く掲げ、ギャゴーに向けて右人差し指を向けた。


【ビルリルン:パー はげしい稲妻が襲い掛かる 4ダメージ 長い集中時間が必要 再使用時間:12時間】



 ギャゴーは静かに魔法陣の上に脚を着けた瞬間、うなだれるように前方に倒れこんだ。


「うぐおおお……おのれ……フェロットを攻めてない時であれば、貴様らに負ける事などなかったのに……」


 ゆっくりと眠るようにまぶたを閉じていくギャゴー。


 チャロメは細めた目でギャゴーを見つめながら、


「やったか……?」


 ロベリカも不安そうに動かなくなったギャゴーを眺める。


「何度も攻撃を与え続けたから、さすがに倒したよね?」


――新しい技を得ました――


【ギャドゴン:パー 大きな爆発を発生させる 再使用時間:一回のみ】

【火炎放射の息:パー 火の息が前方に放射される 再使用時間:一回のみ】


 チャロメは口角を上げた顔をロベリカに向け、


「いや、何か新しい技が突然ひらめいてきたから、これはきっと倒したぞ!」


 ロベリカも嬉しそうに首を縦に振った。


「やった! わたしたち、ギャゴーを倒せたのね!」


 すると、二人を支えていた魔法陣の大地が突然消失し、チャロメとロベリカ、大きな塊は地表に勢いよく落下していく。


 チャロメは目を見張りながら手足をばたつかせ、


「うわああぁぁぁ!?」


「きゃあああぁぁぁ!?」


 ロベリカは目を見開きながら空を悲鳴で響かせていく。


 しかし、二人と一個が地表から5メートルほどの高さまで落下した途端、落下速度が徐々に緩やかになっていった。


 そして最後には地面と衝突することなく、足を土の上につけさせられる。


 チャロメとロベリカは戸惑いの表情を浮かべながら顔を向かい合わせた。


「あれ!? 衝突しなかった!?」


「これは一体……?」


 すると、天空から純白の装束を身にまとった30歳ほどの女性が降りてきて、二人の前に穏やかに着地する。


「見事、邪竜ギャゴーを打ち倒しましたね」


 チャロメは首をかしげながら、


「お姉さんは、だれですか?」


 ロベリカも眉をひそめながら疑問をぶつける。


「天使さま?」


 優しそうな雰囲気を漂わせた女性は首をゆっくり横に振った。


「私はセリーニャ。二人の活躍はずっと見ていましたよ。よく頑張りました」


 セリーニャと名乗った女性は、チャロメの前に移動していき、優しく抱きしめていく。

 それから頭を穏やかに撫でていった。


 チャロメは体をその場で硬直させ続ける。


(うっ! ……温かい)


 数秒後、セリーニャはチャロメを解放したのち、すぐにロベリカの眼前に近づいていく。


 そして、両手を広げてロベリカの体を包み込んでいき、頭をさすっていった。


 ロベリカは微笑みながら瞳を閉じ、セリーニャに身をゆだねる。


(優しい温もり……)


 セリーニャはロベリカから離れ、数歩下がった後少し眉尻を下げた。


「しかし、残念な知らせがあります。邪竜ギャゴーがこの世界から去ったのに、別の脅威が遠い地に現われたようです。……世界は再びその脅威によって暗い生活をいられることでしょう。でも、今回もそれを阻止し、皆を救ってくれる者も現れます。……そうですよね?」


 チャロメは眉尻を上げながら語気を強め、


「もちろんです!」


 ロベリカも眉尻を上げて強く頷く。


「はい、まかせてください!」


 セリーニャは優しく微笑み、


「なんと頼もしい! ……では引き続き、この世界の行く末を頼みましたよ」


 そして、ゆっくりと天に向かって昇っていった。


 チャロメはセリーニャの姿を見上げながら眺め続ける。


「女神様のような存在だったな……」


 ロベリカも遠ざかっていくセリーニャを目で追い続けた。


「いえ、きっと本物の女神様よ」


「そっか。それなら女神様に新たな脅威の事をお願いされたなら、さっそく向かわないとな!」


「うん! 女神様にお願いされてなくても脅威を止めるけどね!」


 チャロメとロベリカは互いに顔を見合わせ、大きく首を縦に振っていく。


 それからきびすを返し、直前の脅威が眠り続ける荒野から徐々に遠ざかっていき姿を小さくしていった。

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