第47話最後の洗礼始まるよ! 特別ゲストもいるよ! その三

「【性癖開示ババ抜き】の時間だよ!」

「良い子のみんなはちゃんとイヤホンするんだぞ!」

「良い子は今頃低評価押してブラウザバックしてるよ……」


『わーい性癖開示ババ抜きの時間だー!』

『俺はリビングで音量MAXで見るぜ』

『どうしよう。俺のカイリチャソがとんでもねえ性癖持ってたら』

『持ってた方が興奮するだろ』


 リスナーのコメントは見て見ぬふりだ、うん。気にするな。


「ここで軽く【性癖開示ババ抜き】のルール確認をしておくよ!」

「ルールは簡単! ババ抜きで最初に勝ち上がった人以外はカードに書かれた性癖を開示! 性癖カードは一人最大十枚持ってるよ!」

「一位はセーフ! 二・三位は一枚、四・五位は二枚、ビリの六位は三枚の開示が必要になるよ! グッバイ尊厳!」


 ここで軽くルール確認が入る。今来た人向けのやつだな。


「そしてそして〜! 四戦が終わった後に性癖開示数が多いチームが勝利!」

「しかーし! 一発逆転ルールもあり! 負けたチームにはチャンスが与えられます! それは〜?」

「負けたチームは勝ったチームが持っている【どちゃくそ性癖カード】に書かれてる内容を当てる事です! 当てる事が出来れば問答無用で勝利!」

「【どちゃくそ性癖カード】っていうのはそれぞれのチームのリーダーが書いたどちゃくそ性癖なカードね!」


 相変わらず意味わかんねえな。このルール。


『どうしよう。カイリチャソが石化とか性癖だったら』

『そうなったら俺らが石化してカイリチャソを興奮させるしかねえだろ』

『カイリチャソの為なら俺……石にでも車にでもなるぜ』

『じゃあ俺はドラゴンになる』



「お願いだから人の性癖を勝手に石化にしないで」


 あとなんでドラゴンと車になってんだよ。なんか怖えよ。


 ちなみに俺は変わらず女装をしている。女声だけでも良い気はしたが、ルムに合わせた感じだ。まあ、折角瑠花が準備してくれたし。わざわざ戻す必要もないかなって。


「あ、それと人数的な問題で私と冬は後半戦に参加するよー」

「それまではみっちゃんとカナちゃんと特別ゲストのルムちゃんがやるからねー」


 さて、ルール確認も終わったし。



「それじゃあ!【性癖開示ババ抜き】」

「開始〜!」


 ◆◆◆


 俺達は円形の机に並んでいた。

 俺から見て左にルム、瑠花、天井、桃華、芦沢である。俺のすぐ右に芦沢が居る感じだな。


「カナちゃん。私このババ抜きで全勝したら焼肉行くんだ」

「死亡フラグがしょぼすぎる。ちゃんと結婚しろ」

「お? 喧嘩か? 彼氏出来たことない歴=年齢の私に喧嘩売ってるのか? やるか?」

「はっ! この前従姉妹の三歳児に腕相撲で負けたみっちゃんのパンチなんか軽い軽い」

「なんだとこら!」

「なんで仲間割れしてるのこの二人……」


 とはいえ、やる事は普通のババ抜きだ。雑談を交えつつといった感じである。なんかトップ二人が煽りあってるけど。


 ちなみに俺達の手札は配信に映ってるらしい。もちろん画面は俺達からは見えないようにしてから。


 しかし、ただの雑談だけというのもあれだな……。


 そう思いながらルムを見る。


「そういえばルムってどんな活動してるの?」

「お、いいよカイリちゃん。流れるようにゲストの宣伝挟むの上手だよ」

「そういうの裏で言ってくれません?」


 あけすけに話す天井。あ、瑠花が一組揃ったらしいな。このままだと瑠花が一抜けするかもしれない。



「えっと、主にシチュエーションボイスとかを支援サイトとか色んなところで販売してる」

「え、まじ?」

「うん。最初は……知り合いが個人的に欲しいって言ってきて、仕方なく渋々嫌々やってたんだけど」

「凄く嫌そう」

「それである日、幼馴染がある日いきなり万札を渡してきて『売ってみたら凄いお金になった』って言われてね。あ、その幼馴染が魔王って言われてる子」

「なにそのアイドルになった理由レベル百みたいなやつ。とんでもない幼馴染持ってるね?」


 しかし凄いな。それでフォロワー十万まで行ったのか。めちゃくちゃクオリティ高いんだろうな。


「ちなみに一番伸びてるのってどれなの?」

「確か【俺の幼馴染が全裸でベッドの中に潜り込んでます〜〜】だったかな」

「えっ。……それって大人向けな?」

「ううん。多分ギリセーフ」

「多分ギリセーフ」



 コメント欄(あきふゆコンビ以外には見えていない)

『あれ凄かった……』

『まるで実体験でもしたかのような臨場感でした。ルムちゃんのちょっとヤンデレというか好きすぎて頭がおかしくなってる感が特に』

『次のシチュボ上がるまで頭おかしい子かと思ってた』

『まだ買ってない人は買って損ないから買ってくれ頼む』



 大人向けというか、そういうのにも需要はあるからなぁ。最近はそういうので生計を立てる人も居るらしいし。


「その次だと【日本トップのアイドルが君の事を全肯定して甘やかしてくれる〜〜】かな」

「おお、なんかそれっぽい」



『あれ四十連勤の時に聞いてガチで泣いた』

『四十連勤ニキは会社じゃなくて労基に行ってもろて』

『あれって【nectar】の彩夏ちゃんっぽさあったよな。好きなのかな』

『全裸幼馴染の次に聞いたからびびってちょっとちびったよ。切り替え凄いよなルムちゃん。あれまじ天使だった』



 こういうのも参考にしておかないといけないな。これからシチュエーションボイスなんかが流行るかもしれないし。


「意識してる事とかある? 録る時とか」

「うーん……棒読みにならないように、って言いたいんだけど。幼馴染が鼻血出しながらNG出すから怖くて怖くて。早く終わらせる為に頑張ってたから、嫌でも感情込める事になってたんだ。別に嫌ではないんだけど」

「何それ怖い」


『草』

『何してんの魔王ちゃん……』

『あの裏では血と汗と涙が流れてたって事か』

『あれ? 瑠花チャソ上がりそうじゃね?』


 と、その時。瑠花の手札が揃ったようだった。


「おーっと!? ここで上がり!? 早いね!?」

「まだみんな五〜六枚持ってるぞ!?」

「そういえば瑠花、こういうのめちゃくちゃ強かったよね」

「まあ私の場合、性癖の開示ってそんなに罰ゲームにならないし。負ける意味あんまりないかなって」

「溢れ出る強者感」


 俺もそんな事言ってみたい。


「という事でまさかまさかの一抜けは瑠花ちゃん!」

「さあさあ! ここからは性癖開示だぞ!【混沌】頑張れ、頑張れ!」


『ふゆちゃんの頑張れボイス助かる』

『カイリチャソにも頑張れ♡頑張れ♡って言って欲しい。言え』

『逆に頑張るなボイスもくれ』



 何にせよ、瑠花の性癖開示が免れたのは良い事だ。後は俺と桃華が抜けるだけ。カードの枚数的には……まだ掛かりそうだが。


「負けたくない……」

「私も……」

「性癖開示っていう事が性癖っていうのはどう思う? カイリちゃん」

「やばいこのゲームドMが無敵だ」


 むしろ興奮材料になってしまうのやばいな。桃華、性癖開示した方が負けって分かってるかな。分かってるよな? お願いだから試合に負けて勝負に勝たないで欲しい。


「……ちょっと話戻すけど、次はどんなやつ録るとか決まってるの?」

「色々考えてる……けど、まだ決めきれてないのが現状かな。みんなどんなのが聞きたいんだろうって思ってて」

「お? 聞いちゃう?」

「折角だし聞いちゃおっか! 私達がコメントで多そうなやつ言うよ!」


 お、アンケート取るのか。配信だとこういう事が出来るのが良いんだよな。

 どういうのが求められてるのか俺も気になるし丁度いい。



『男声ボイス欲しい』

『魔王ちゃんがこの前リアル男声ASMRやってもらって死んだって言ってたから聞きたい』

『あと特に下心はないんだけどカウントダウンボイス欲しい。男声女声どちらでも可』

『なんならカウントダウンするごとにどんどん男声になっていって性癖が破壊されたい』



「えっ……と」

「司会者が絶句してる。……コメント欄に何が書かれてたの?」

「その。男声聞きたいなっていうコメントがたくさん」

「あー。いつもの」

「いつものなんだって思ったけどそういえば私も言われてた……」

「カイリ君の男声絶頂我慢カウントダウンASMR早く出して」

「出さないからね?」


『俺らって桃華ちゃんと同じ思考だったのか……ちょっと複雑だな』

『複雑だけど出して欲しい』

『カイリチャソとルムチャソ二人で交互に男声女声切り替えながらカウントダウンされて脳バグらされたい』


 でも、意外と男声って需要あるのか……? いや、きっと視聴者の悪ふざけだろう。


 と、その時である。


「お、そろそろ私上がりそう」

「お、まじやん」

「……桃華ももうちょっと?」

「残念だけどそうだね」

「残念がらないで」

「私はまだっぽいかな」


 どうやら天井と桃華が上がりそうだ……と思った次の巡の事。


「上がりぃ!」

「……私も上がっちゃった」


 二人が上がった。……上がったが、二番三番なので性癖を一つ開示する事となっている。


「ねえ、これって書けなかったの十個くらい言って良いかな? その方が興奮するから」

「言わないで、絶対。二人に検閲されて通ったの何個だと思ってるの?」

「えっと。十個中ゼロ個」

「そうだよ全部書き直しになったんだよ。そのせいで時間押してるんだよ。という事で開示する性癖は一つ。カードに書かれてるやつだけだからね」

「カイリ君に性癖開示命令をされるという性癖……」


 もうダメだこいつは。放っておこう。

 と目であきふゆコンビに訴えかけるとうんうんと頷かれた。本当にごめん。うちのドMが。


「という事で〜! みっちゃんと桃華ちゃんの〜?」

「せーへきはっぴょー!」

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幼馴染とVtuberを始めたんですが、初手配信で大バズしてしまいました。――わあ。登録者が鰻登りだ(白目) 皐月陽龍 「氷姫」電撃文庫 5月発売! @HIRYU05281

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