第2話 誕生からのさようなら
どこ?ここ?
気づいた時には私は何者かに背負われて森の中にいた。周りに意識を向けてみると私を背負っている男とその隣を歩く女の姿が見えた。その二人の会話に耳をすますと現在私がどこにいてどういう状況なのか理解出来た。
簡単にまとめた感じ子供が出来たはいいけどお金が無くて育てれない。しかし子供を自らの手で殺すのは躊躇している。なら誰かに拾われるのを信じて森の中に置いてこようという事らしい。
次に私は自分の現在の姿を確認する。
短くてぷにぷにとした柔らかそうな手足、髪は少なくまだ歯も生えていないか弱い赤ちゃんの姿………
私にどうしろと?話すことも出来ないし、まともに体を動かすことすらできないのに森に捨てられました?
普通に考えたら死ぬよね?
どうやって生き残るんだろ?私が22歳まで生きるって言ってたしアルマがこんな直ぐに死ぬような運命にするとは思えない。
捨てられた後に誰かが本当にこの両親の願った通り拾ってくれるのだろうか?
そんなこんな考えてるうちに森の奥地に辿り着いたみたいで私はカゴと一緒にそっとその場に置かれた。
両親は私の方を振り返ることなく存在を忘れ去るようにその場を走り去った。
姿が見えなくなり1人になると私はこの世界について気づいたことをまとめてみることにした。
まず第一に驚いたことがこの世界の住人が話してる言語は前世では存在していない言語で初めて聞いたにもかかわらず何故か理解できるということ。
いくら赤ん坊の学習能力が早いとはいえ最初からわかってるなんてことありえない。それこそ神が予め私に何らかの施しをしない限りは。
そしてもう1つ、今まで体になかった感覚が新しくできている。これがアルマの言っていた魔力というものなのだろう。私が想像さえすれば魔法を使えるとのことらしいので後で試してみることにする。
あとは……まだ分からないかな。
そんなこんなしているとガサガサと草むらから音がしてそちらに顔を向けると3mほどの大型の熊がいた。
熊は私に気づいたのか猛然とこちらに向かってくる。対するこちらは丸腰でその場から動けない、武器もないし抵抗もできない。
普通なら死を覚悟するのだろうけどもう1つなにか動く影に気づいていたので私が恐怖することは無かった。
熊の爪が届く瞬間とんでもない速度で飛んできた矢が熊の頭を貫く。次の瞬間熊は後ろに倒れて動かなくなった。多分死んだのだろう。
「こんな所に子供を捨てるなんて何考えてるの!?」
矢の飛んで来て方角には尖った耳が特徴金髪の女性がいた。
多分これがエルフと呼ばれる種族なのだろう。
女性は辺りを見渡して危険が無いことを確認すると私のことを抱き上げた。
「もう大丈夫だよ。私がいるからね」
にっこりと笑いかけてくるのは私を安心させようとしているのだろうか?
正直微塵も恐怖してなかったしそんな事をしてもらう必要は全くないのだが、ここでなんの反応も返さないでいると女性が困った感じの様子を見せていたのでニコリと笑っておく。
「かっ、可愛い!?」
私の笑みを見た女性はそんな事を言い、先程よりも強く私を抱きしめた。
そこから少しのスキンシップを取ると女性は私を自分の里に連れて帰ることにしたらしい。少し不安そうな顔をしているのが目に入ったが私が不思議そうな表情をしていることに気づいたのかまたすぐに先程までの笑顔に戻った。
女性が動き始めると私は考え事をしていたこともあり疲れが溜まっていたので腕に抱かれてすぐに眠ってしまった。
次に私が目を覚ますと何やらたくさんのエルフに囲まれていて武器を向けられていた。
終末世界で君は笑う ☆猫より柴犬派☆ @astellious
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